1995年の『トイ・ストーリー』の成功以来、革新的な3DCGアニメーション作品を数多く世に送り出しているディズニー/ピクサー。
今回はピクサー作品としては初めて遠い未来の地球および宇宙を舞台とし、荒れ果てた地球に取り残された1台のゴミ収集ロボットを主人公とした『ウォーリー』についてのあらすじとネタバレ、感想を大特集しますので最後までお付き合いください。
Contents
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『ウォーリー』の作品情報
タイトル:ウォーリー
原題:WALL-E
監督:アンドリュー・スタントン
脚本:アンドリュー・スタントン、ジム・リードン
製作:ジム・モリス、ジョン・ラセター(製作総指揮)、ピート・ドクター(製作総指揮)
公開:2008年6月27日(アメリカ)、2008年12月5日(日本)
声の出演:ベン・バート、エリサ・ナイト、ジェフ・ガーリン、マッキントーク、ジョン・ラッツェンバーガー、キャシー・ナジミー、シガニー・ウィーバー、テディ・ニュートン、ローリ・リチャードソン、トレス・マクニール、アンガス・マクレーン など
出演(実写パート):フレッド・ウィラード など
監督と脚本を務めるのは、数多くのピクサー作品に監督・脚本・製作などで携わり、本作を含めて2度のアカデミー長編アニメ映画賞に輝くアンドリュー・スタントン。
主人公ウォーリー役のベン・バートはサウンドデザイナーも兼任しています。また、本作はピクサー作品としては初めて一部分ながら3GCGアニメーションと実写パートとの融合が試みられており、実写パートには『スター・ウォーズ』シリーズを初め数多くのヒット作に携わってきたインダストリアル・ライト&マジックが担当しています。
『ウォーリー』のキャスト
主人公ウォーリーの声を担当するのは、『スター・ウォーズ』シリーズで“ライトセーバー”の音など革新的なサウンドを手掛けてきた大物音響技師のベン・バート。
本作の悪役ポジションともいえるコンピューター“オート”の声はアップル・マッキントッシュの音声合成プログラム“マッキントーク”を採用、実写パートで登場する、本作で起こる事件の遠因となった人物役にはベテランコメディアンのフレッド・ウィラードが起用されています。
『ウォーリー』のあらすじ・ネタバレ
地球に取り残されたゴミ収集ロボット
遠い未来、人類の誰もいなくなった地球。
大地は荒れ果て、空気は汚染され、無人と化した大都会には超高層ビルよりも高く積まれたゴミの山が乱立していた。
地球に取り残された、現存する唯一のゴミ収集ロボット“WALL-E(ウォーリー)”(ベン・バート)はこの日もいつものように散乱したゴミをかき集め、体内で四角いブロック状に圧縮してはビルのように高く山積みしていったのだ。
ウォーリーはたまにゴミの中から気に入った物があれば拾って持ち帰り、唯一の友だちであるゴキブリのハルと共に帰路につくのである。
帰り道にはウォーリーと同型のロボットが故障して打ち捨てられており、数百年前の新聞が散乱、街の巨大ビジョンには数百年前のものと思われる超巨大宇宙船で宇宙へと旅立っていった人類の姿(実写)、そして人類を宇宙に送り出した大企業“BNL”の会長シェルビー・フォースライト(フレッド・ウィラード)の挨拶(実写)などが映し出されていたのだった。
ウォーリーは寝床の壊れた高速道路跡にある基地に戻り、キャタピラーを靴を脱ぐかのように脱ぎ、iPodとビデオデッキを繋げた手作りの機械で古いミュージカル映画『ハロー・ドーリー! 』(1969年に実際に公開された映画)を観ながら、ゴミ収集の合間に集めた物をコレクションに加えるのが日課なのだ。
コレクションにはルービックキューブやボーリングのピン、ジッポーのライターなとが所狭しと飾られていたのである。
長い年月の中でいつしか感情の芽生えていたウォーリーは、映画のワンシーンに胸をときめかせ、人類が飛び立った果てしない夜空を見上げていたのだった。
やがて砂嵐が吹き荒れ、ウォーリーは基地のハッチを閉めるとハルにエサのお菓子を与え、自らは四角いキューブ型に縮こまって眠りにつくのだ。
植物の苗
翌朝、動力源のバッテリーが切れかけたウォーリーは砂嵐の過ぎ去り太陽が上った外に出ると、太陽電池パネルを開いて充電を始めたのである。
充電が終わると、ウォーリーは道具箱を背負って仕事に向かおうとしたが、誤ってハルを踏み潰しそうになってしまったのだった。
ウォーリーは無事だったハルに留守番を頼んで出発したが、ハルはそれでもノコノコとついていったのだ。
いつものようにゴミを拾い集め、ブラジャーや犬の人形、トロフィーなど興味を示した物を道具箱に入れ、卓球のピンポン球で遊び、興味のない指輪を投げ捨てて箱だけ拾い、消火器の噴射に吹き飛ばされそうになったウォーリーは来る日も来る日もゴミの塔を築き始めたのである。
そんなある日、壊れた冷蔵庫をレーザーで切断して解体したウォーリーは、そこに小さくも力強く芽生えた緑色の植物の苗を発見したのだった。
ウォーリーは早速苗を拾い上げ、拾った片方だけの革靴に移し替えて持ち帰ったのだ。
未知との遭遇
基地に戻ったウォーリーは、何者かが赤い光のレーザーポインターで基地周辺をマーキングしていることに気付いたのである。
ウォーリーは赤い光を追いかけて荒野まで走ると、それを追いかけるように無数の赤い光が群れをなしてきたのだった。
やがて光はひとつに集まり、上空からけたたましい噴射音と共に1機の宇宙船が降り立ってきたのだ。
中から出てきたのは、流線形の滑らかなボディを持つ白い1体のロボットである。
白いロボットを降ろした宇宙船は再び上空に飛び去り、ウォーリーは身を隠してやり過ごそうとしたが、白いロボットは周辺をスキャンしつつ素早い速さで飛び回ったかと思えば、いきなりウォーリーをレーザービームで攻撃してきたのだった。
物陰に隠れて難を逃れたウォーリーはこっそりと白いロボットの後をつけてみたところ、興味を示したハルが飛び出してしまったのだ。
白いロボットはハルにまで攻撃を仕掛けたが、攻撃をかわしたハルを上手く手懐け、じゃれ合って戯れ始めたのである。
白いロボットは再びウォーリーに銃口を向けたがハルのおかげで命拾いし、その後は廃墟などをスキャンして回る白いロボットの後を無視されながらも追いかけていったのだった。
夜になり、白いロボットはカプセル型になってスリープ状態に入り、ウォーリーはその間にガラクタで人形を作ったのだが、翌朝目覚めた白いロボットは興味を示してくれなかったのだ。
その後も白いロボットは引き続きあちこちをスキャンして回り、貨物船の電磁石に引き寄せられそうになり、貨物船を攻撃して爆破炎上させてしまったのである。
ウォーリーは意を決して白いロボットに自らの名と仕事を明かし、白いロボットは自らの名を“EVE(イヴ)”(エリサ・ナイト)と名乗ったのだった。
しかし、イヴは地球に来た目的を明かそうとしなかったのだ。
初めてウォーリーに微笑みの表情を見せたイヴだったが、その背後には巨大な砂嵐が迫ってきたのである。
ウォーリーは嵐に巻き込まれそうになったイヴを助け、ひとまず自分の基地に案内したのだった。
ウォーリーの恋
イヴはウォーリーのコレクションに興味を示し、一つひとつ使い方を教えてもらい、映画を見せてもらってはダンスを教えてもらったのだ。
イヴは踊っているうちに勢い余ってウォーリーを突き飛ばしてしまい、目の壊れたウォーリーは予備パーツをつけて修復したのである。
映像の中の男女が手を取り合うなか、イヴはジッポーのライターの火をつけ、ウォーリーは思わずイヴの手を握ろうとしたのだった。
いつしかウォーリーの中には、イヴへの淡い恋心が芽生えつつあったのだ。
ウォーリーはイヴに先日拾った植物の苗を見せたところ、突然イヴは興奮したかと思うと苗を体内に取り込んでしまい、カプセル状態になると全く動かなくなってしまったのである。
イヴの胸には、緑の葉を模したマークが点滅していたのだった。
嵐が過ぎ去り、ウォーリーはイヴを基地の外に出したのだが、イヴは全く目を覚ます気配はなかったのだ。
ウォーリーはイヴの傍を離れず、雨の日には傘をさしてあげ、イヴの体に電流を通して目覚めさせようとしたが、それでもイヴは目を覚まさなかったのである。
ウォーリーはイヴを街を一望できる場所に連れて行き、レーザーでゴミにハートマークを描き、動かぬイヴと一緒に沈みゆく夕陽を眺めていたのだった。
ウォーリー、大宇宙へ
ウォーリーはイヴのことが気がかりながらも基地に残し、久しぶりにゴミ収集を始めたのだ。
ウォーリーはハルと共にゴミを積み重ねていき、ジッポーライターに火をつけてイヴのことを想っていたその時、空が突然眩しく光り、轟音が鳴り響いたのである。
ウォーリーはハルと共に基地へ急いだが、何と基地には既にあの宇宙船が着陸しており、長いアームでイヴを回収しようとしていたのだった。
ウォーリーはハルにその場に残るよう命じ、イヴを取り戻すため宇宙船の外壁をよじ登っていったが、宇宙船はそのまま発射して大宇宙へと飛び立ってしまったのだ。
ハルはその光景を黙って見ているしかなかったのである。
超巨大宇宙船アクシオム
人工衛星の残骸で埋め尽くされた空を飛び越え、大気圏の外へ出た宇宙船は、ウォーリーがしがみついていることにも気づかぬまま飛び続けたのだった。
月を超え、太陽を超え、果てしない銀河を往く宇宙船は、数百年前に地球を飛び立ったあの超巨大宇宙船“AXIOM(アクシオム)”に回収されたのだ。
イヴはアクシオム内に運び出され、清掃ロボット“M・O(モー)”(ベン・バート)の細かいチェックを受けたのである。
ウォーリーもイヴを追ってアクシオム内に潜入したところ、モーから“外来汚染物質100%”と判断され、危うく警備ロボットに捕らえられそうになったが抜け出してイヴの後を追ったのだった。
しかし、ウォーリーはロボットたちの渋滞、そしてアクシオムに居住する人類たちの渋滞に巻き込まれ、イヴを見失ってしまったのだ。
人類はテレビ付きの浮遊するチェアに乗って移動し、衣食住や娯楽など生活の全てをロボット任せにしていたため、誰もが自力で歩くことができない超肥満体形になってしまっていたのである。
ウォーリーは人々の流れに乗って船内の巨大な都市空間へ迷い込み、チェアから転がり落ちて身動きが取れなくなった男を助けつつ、イヴが移送される電車に乗り込むことに成功、リゾートエリアを通って艦長室まで辿り着いたのだが、ウォーリーは操舵輪のような形をしたアクシオムのメインコンピューター“AUTO(オート)”(マッキントーク)に排除対象とみなされて階下に突き落とされてしまったのだった。
イヴの真の目的
ウォーリーが落とされた場所は、アクシオム艦長キャプテン・B・マックリー(ジェフ・ガーリン)の就寝スペースであった。
そこには歴代艦長の写真が飾られており、医療技術の進歩で長寿となったものの代を重ねるごとにメタボ体形になっていき、西暦2775年に就任したマックリー艦長は6代目なのだ。
目を覚ましたマックリー艦長はロボットに歯磨きや身支度をしてもらい、上階のブリッジへ移動すると艦長としての唯一の仕事であるアクシオムの人々へのアナウンスを始めたのである。
この日はアクシオムが地球を飛び立ってから25万5642日、すなわち700周年記念日だった。
マックリー艦長は記念として高齢者にカップケーキを無料で配布すると発表したのだ。
オートはイヴを分析にかけた結果、イヴが“目的”を果たしたと判断したのである。
イヴの正体は植物探査機であり、地球が人類が再び居住できる環境にあるかのパロメーターとなる植物サンプルを採取することこそがイヴの目的だった。
ウォーリーは物陰に隠れてイヴやマックリー艦長たちのやり取りを見ていた。
マックリー艦長はブリッジにあるイヴの胸のマークと同じデザインのスイッチを押すと、スクリーンにシェルビー・フォースライト会長(実写)の映像が映し出され、地球は人類が居住可能だとして帰還にゴーサインを出したのだ。
マックリー艦長はウォーリーから操作マニュアルを渡された。
マニュアルによると、イヴの体内にある植物をアクシオム内の装置にセットすることで、自動的に地球へと進路を向けるというものだった。
ウォーリーとイヴはこっそり再会を果たし、慌てたイヴはウォーリーに身を隠すよう促したのだ。
失われた植物
マックリー艦長はマニュアル通りにイヴの体内から植物を取り出そうとしたのだが、何といつの間にか植物が姿を消していたのである。
マックリー艦長は手順を間違えたのかと再度マニュアルに目を通すなか、驚いたイヴはウォーリーの体内を調べたが植物はなかったのだった。
オートとマックリー艦長はイヴが故障したと判断、直ちに修理工場へと送ったのだ。
ウォーリーはマックリー艦長と一応握手を交わし、その際に地球の土が手のひらに付いたことから、艦長はウォーリーを洗浄するようお付きのロボットに命じたのである。
マックリー艦長は地球の土を分析にかけたところ、地球に関する様々な興味深いデータが出てきたのだった。
艦長はすっかり夢中になってデータを調べ始めたのであった。
ウォーリーとイヴは修理工場へと連行され、ウォーリーは壊れた他のロボットたちの元に放り込まれ、イヴは特別ルームに連れて行かれたのだ。
何とかイヴを連れだしたウォーリーは工場のセキュリティを解除してしまい、他の壊れたロボットたちと一緒に脱走したのである。
ウォーリーとイヴは指名手配扱いとなってしまい、警備ロボットたちの追跡を掻い潜りながら脱出ポッドのところまで逃げ延びたのだった。
ウォーリーとイヴの邂逅
イヴはウォーリーを地球へ帰そうと脱出ポッドを起動させ、自分はアクシオムに留まろうとしたのだ。
その時、1台の警備ロボットが通りがかり、あの植物を脱出ポッドの中に投げ捨てたのである。
警備ロボットはポッド内の赤いスイッチを押し、ウォーリーは植物を回収しようと中に入ったところでハッチが閉じ、ウォーリーはポッドごと宇宙空間に放り出されたのだった。
イヴはすぐさま後を追うが、ポッドは自動操縦装置が働いており、しかも自爆装置がカウントダウンを始めていたのだ。
消火器を手にしたウォーリーは何とか脱出を試みたが扉はロックされており、ポッドはイヴの目の前で爆発して宇宙の塵と化したのである。
イヴはウォーリーが死んだものだと思い込み悲しみに暮れたいたが、次の瞬間、何とか脱出していたウォーリーが消火器を噴射させてイヴの元に駆け寄ったのだった。
ウォーリーは体内にあの植物を無事に保管しており、イヴは植物を回収すると思い切りウォーリーを抱きしめたのだ。
イヴから“キス”をされたウォーリーは一瞬失神しかけてしまい、2台はしばらくの間アクシオム周辺を飛び回っていたのである。
たまたま宇宙を見ていた男と女は船外を飛び回る2台のロボットに驚き、つい手を取り合って打ち解けあったのだった。
その頃、マックリー艦長は夢中になって地球の古いダンスの映像に見入っていたのだ。
艦長は就寝時間だというオートの指示にも耳を傾けず、宇宙空間を飛び回るウォーリーとイヴを見つけてはコンピューターに“ダンス”の意味を問いかけたのである。
今度こそ地球へ・・・
アクシオム船内に戻ったウォーリーとイヴは、警備を掻い潜って艦長室に繋がるダストシュートを発見したのだった。
イヴはウォーリーにこの場で待機するよう命じ、単身で艦長室へと飛んでいったのだ。
イヴから植物を受け取ったマックリー艦長は大いに驚き、これで地球へ帰れると喜んだのである。
マックリー艦長は植物の出元を探るため、イヴの記録した映像データにアクセス、最初のうちは地球の荒れ果てたままの現状にがっかりしたのだが、ウォーリーが再生していた映画の動画を実際に人々が踊っているものだと思い込み、地球へ帰還する決断を下したのだった。
イヴは映像データを見ているうちに、自分がスリープ状態になっていた時でもウォーリーは離れず付き添ってくれていたことに気付いたのだ。
イヴが心配になったウォーリーはダストシュートをよじ登り始めたが、足跡をつけてきたモーに嗅ぎつかれてしまったのである。
植物に水を与えたマックリー艦長は、オートに地球への帰還を準備するよう命じたが、オートは拒んだ上に植物を渡せと要求してきた。
艦長がなぜかと問うと、オートは“機密”だと拒むばかりだった。
マックリー艦長に詰め寄られたオートは仕方なく機密事項の映像を再生し始めたのだ。
そこでは、フォースライト会長は地球の大気の毒素レベルが急上昇、浄化計画は失敗に終わり、地球は人類の住めない星になってしまったことを発表していたのである。
オートは地球に戻るよりも宇宙に留まって今まで通りの生活を送る方が無難だと提言したが、マックリー艦長は映像データの日付が今から約700年前の2110年のものであることに気付いたのだった。
マックリー艦長は「私は生き延びたいのではない、生きたいのだ!」と主張してオートに地球へ向かうよう命じたが、艦長室に入ってきた警備ロボットは艦長から植物を取り上げ、イヴの牽制を振り切って植物をダストシュートに投げ捨ててしまったのだ。
しかしその直後、植物を回収したウォーリーが艦長室に姿を現したのである。
オートはウォーリーに植物を渡せと迫り、ウォーリーは急いで体内に植物をしまったが、オートによって腹部に強力な電流を流されてショートしてしまい、そのままダストシュートの下へと転落していったのだった。
オートはイヴの機能を停止させてダストシュートに突き落とし、外部との通信を遮断してマックリー艦長を監禁してしまったのだ。
イヴはゴミ集積場で目を覚ましたが、そこでは大量のゴミが固められて宇宙空間に投棄されていたのである。
イヴは懸命にウォーリーを探して何とか見つけ出し、たまたま居合わせたモーの力を借りて安全な場所へと逃れたのだった。
しかし、ウォーリーの頭脳であるメモリ回路は完全に破壊されてしまっており、イヴはゴミの中を必死で探し回って回路を見つけようとしたが、ウォーリーに合う回路は発見できなかったのだ。
ウォーリーはイヴに植物をアクシオムにセットするよう頼むが、イヴは植物そっちのけでウォーリーの面倒を見ようとしたのである。
ウォーリーは満身創痍のまま植物を拾い上げ、意思を受け止めたイヴはウォーリーを植物ごと抱きとめて船内に戻り、修理工場から逃がしたロボットたちの助けを借りて警備ロボットの追跡を振り切ったのだった。
就寝スペースに閉じこめられたマックリー艦長は、オートの目を盗んで一時的に通信を復旧させ、ウォーリーとイヴにリゾートエリア内に隠されている装置のところまで移動するよう頼んだのだ。
マックリー艦長はオートと対峙しながら緑のスイッチを押し、アクシオムの全ての住民をリゾートエリアに集結させ、装置を起動させようとしたのである。
オートは最後まで抵抗、装置を懸命に守ろうとするウォーリーを押し潰そうとしたが、生まれて初めて自分の足で立ったマックリー艦長は人々の声援を受けて「オート、お前の任務を解く」とオートのスイッチを切ってシャットダウンしたのだった。
マックリー艦長は自ら舵を取り、植物はモーや人々の協力を得て遂に装置に収められたが、ウォーリーは力尽きてしまっていたのだ。
イヴはウォーリーを抱きしめ、まもなくアクシオムはハイパージャンプで地球に向けて出発したのである。
再生
地球では、ハルがウォーリーの帰りを待ち続けていたのだった。
アクシオムは地球の宇宙港に着陸、マックリー艦長や人々は初めて地球を目の当たりにしたのだ。
イヴはハルと共にウォーリーを基地に連れて行き、部屋中の予備パーツをかき集めて何とかウォーリーを修理して復活させることに成功したが、ウォーリーは完全に以前の記憶を失ってしまったのである。
イヴはコレクションのルービックキューブを握らせたり、映画を見せたりして何とかウォーリーの記憶を取り戻そうと試みたが、ウォーリーはコレクションをゴミと認識して処分しようとする始末だった。
イヴはウォーリーの手を握り、そっと“キス”をすると、ウォーリーはようやく全ての記憶を取り戻し、イヴの手を握り返したのだ。
ウォーリーとイヴは映画のワンシーンのように見つめ合っていたのである。
マックリー艦長や人々は植物を土に植え、ウォーリーとイヴは仲睦まじくその様子を見守っていたのだった。
やがて地球は緑にあふれ、人々とロボットたちが力を合わせて復興に励んだおかげで以前の美しい姿を取り戻していったのである。
『ウォーリー』の感想とまとめ
1995年の『トイ・ストーリー』から歩みを始めたピクサーはこれまで次々と革新的な作品を世に送り出し、世界のアニメーションシーンを常にリードしてきました。
ピクサーが手掛ける長編作品としては第9作目となる本作は、一部分でピクサーとして初めて3DCGアニメーションと実写パートを組み合わせ、地球が汚染された700年前と物語の舞台となる時代との対比を鮮明に描きあげています。
本作のメインテーマはウォーリーとイヴというロボット同士の心の交流が挙げられますが、全編を通して人類に対する警鐘と風刺が織り込まれた社会派作品の一面も併せ持ったメッセージ色の濃い作品ともなりました。
汚染された地球を捨てて飛び立った超巨大宇宙船アクシオムの艦長室には、現在の艦長であるキャプテン・マックリーなど歴代艦長の写真が飾られていますが、ほぼ実写に近いイケメンな初代館長から代が変わる度に徐々にメタボ体形となっていき、マックリー艦長の頃には完全な超肥満体形となってしまっています。しかも、歴代艦長の背後には、実質上アクシオムを牛耳る、本作における悪役ともいうべきメインコンピューター“オート”がどっしりと控えているのがお分かりでしょう。
本作に登場する人類は、誰もが生まれた時から身の回りの世話は全てロボットが受け持ち、ラクチンな浮遊型椅子で歩くことなく移動でき、常に娯楽を与えられ、医療技術の進歩により寿命も約百数十年と超長寿となり、一見幸せであるかのように見えますが、いずれもメタボ体形と骨の退化により自力で歩くどころか立ち上がることすら困難となってしまっており、しかも物語の終盤でようやく人々は自分たちがロボットによって支配・監視されていたことに気付くのです。
エンドロールでようやく人類は地球の復興と共に元の健康的な体形となり、自分の足で歩けるようになっているのがお分かりいただけると思いますが、行き過ぎた文明の発展が地球を蝕むどころか人類を退化に導こうとしていることが本作では強調されて描かれています。今の時代でも、ネットが発達したとはいえ未だに影響力を持つテレビなどのメディア、スマートフォンの発展でより身近になったSNSなどのネット社会、自動車の自動運転技術の研究開発、進化するAI技術など、人類は一見テクノロジーを使いこなしているかのように思えますが、本作のようにもしかしたら人類はテクノロジーに飲み込まれてはいないか今一度振り返ってみる必要がありそうです。
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