軍事用に開発されたロボット犬を巡るSF・アクション映画『AXL』。知り合った青年と交流を深めるうちに初期にプログラムされた範囲を超えて進化して行く最先端の人工知能を持つロボット犬を描いています。周囲から賞賛の声が上がる主人公を演じたアレックス・ニューステッター。ロボット犬を救う内向的な若い青年を感情豊かに好演。
Contents
『AXL』作品情報
タイトル:AXL
原題:AXL
監督:オリヴァー・デイリー
脚本:オリヴァー・デイリー
原作:『Miles』オリヴァー・デイリー
製作:トム・ローゼンバーグ、ゲイリー・ルチェッシ、デヴィッド・S・ゴイヤー、リチャード・S・ライト、エリック・リード
公開日:2018年8月24日、日本での劇場公開は未定
出演者:アレックス・ニューステッター、アレックス・マクニコル、ベッキー・G、ドミニク・レインズ、トーマス・ジェーン
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『AXL』概要
監督と脚本を兼務したオリヴァー・デイリーが製作しインターネット上で公開された短編映画『Miles』基に長編映画化したのが本作です。若いモトクロスのレーサーがロボット犬と出会い、後にラテン系のガールフレンドに紹介すると言う内容で、ほぼ下地となる物語は共通しています。『ミリオンダラー・ベイビー』を製作してアカデミー賞を受賞したトム・ローゼンバーグがプロデュース。
『AXL』のキャスト
主人公のマイルズ役は、テレビドラマ『コロニー』のアレックス・ニューステッター。父親のチャックを演じるのは、スティーヴン・キングの大ヒット作『ミスト』に主演したトーマス・ジェーン。そして、紅一点サラに扮するのは歌手のベッキー・Gです。
『AXL』のあらすじ・ネタバレ
モトクロスの競技場でレースが開催され、出場したマイルズは結果を出せずにいた。父のチャックと一緒に切れた鎖のスペアを分けて貰うため、町のお金持ちフォンテインが居る待機場所を訪れる。
幾つも予備を持っているにも拘らず、フォンテインは不遜な態度でスペアは1つしか無いと断った。それを見ていたサラは、鎖の予備を1つ掴みマイルズに渡しに行く。第2レースが始まり、フォンテイン家の1人息子・サムの追随をかわしマイルズは1位通過。
帰り支度をしているとサムがサラを助手席に乗せ、マイルズをパーティへ誘ってきた。早朝に仕事があると答え2人を見送ったマイルズに、チャックはサムの父親が持つコネでスポンサーを得られれば今後のレース運びが楽になると息子に話す。
逃げ出したロボット犬
クレイン社の軍事施設から開発された人工知能を搭載したロボット犬が逃走。緊急捜索が開始された。その頃、マイルズは父に勧められてパーティー会場を訪れていた。マイルズを見つけたサムは仲間に自分をレースで負かした相手だと紹介。
広々としたサムのガレージに新車のバイクを見つけたマイルズは、魅せられてエンジンをかける。そこへサラが来るとマイルズは鎖のお礼を言い、暫し会話が盛り上がった。エンジンの音を聞きつけたサムは、仲良く話している2人に不満を抱く。
メカニック工場で働く父を訪ねたマイルズ。チャックは息子に大学進学の話をするが、マイルズは学校の成績は散々で進学に必要なお金もないと言い、唯一レースだけが得意だと力説した。
一方、軍事施設では、多数の小型ドローンを飛ばして捜索したもののロボット犬が見つからず、目視できるまではお手上げ状態。政府から出資を受けているため開発担当者のアンドリックは、プレッシャーがかかっていた。
翌日、サムに誘われて自分のレース風景をインターネットで公開して興味を持ってもらおうとマイルズは一緒に出かける。サムの友人がビデオ撮影する中、マイルズは華麗な走りを見せた。
サムがマイルズの気を引いている間、サムの差し金でマイルズのバイクの給油タンクにサムの仲間が缶ジュースを入れる。マイルズは再びバイクで走り出す。しかし、小山にさしかかった場所で大きく転倒し、派手に丘陵を転がった。
サムは仲間に帰ろうと言うが、自分のGoProカメラをマイルズに貸していると撮影した友人が躊躇する。サムは代金なら払うから引き上げようと続け、倒れたままのマイルズを置いて一行は全員その場を去ってしまう。
警戒する必要が無い人間との出会い
やっと起き上がったマイルズは、笑い者にされた事に気づいて憤る。給油タンクを空にし、ガソリンを入れ直して出発しようとした時、前方に見えるゴミ捨て場から物音がして来た。
様子を見に行ったマイルズが廃棄されていた大型のロッカーを開けると、中で赤い目が光る。逃げ出すマイルズの後を追いかけてくるロボット犬。バイクに乗り走り出すが、いつの間にか丘の上に居たロボット犬がマイルズに飛び掛かった。
上手く避けたマイルズを尚もロボット犬は追ってくる。しかし、モトクロスレースが得意のマイルズには叶わず、着地に失敗したロボット犬は体を強く打ち付け動けなくなった。マイルズが近寄ると体内の自己破壊システムが起動するロボット犬。
マイルズは、犬の鼻先を摩る。敵ではなく危険は無いと感知したロボット犬は、破壊システムを解除した。マイルズが犬の背中に刺さった鉄棒を引き抜くと信頼できる相手だと認識したロボット犬は、目の色が青色に変化。
マイルズの携帯電話の着信音を鳴らす。携帯を取り出すと画面には、「AXL」と表示されていた。マイルズは直すから心配するなと声をかけ、AXLを廃棄されたコンテナに入れて隠す。携帯に構造を示す情報を受信したマイルズは、夜を徹して修理した。
マイルズの転倒映像を加工してアップロードしたサムは、仲間達と自宅で楽しんでいた。サラに視聴回数が一晩で2千だと笑う。マイルズが1人置き去りにされた事を知ったサラは、サムに場所を聞いて様子を見に行く。
翌日になっても修理を続けていたマイルズは、自分のバイクの部品を使い始める。全てが完了し、マイルズは喉が渇いただろう言って、残っていたガソリンの全てをAXLのタンクへ入れた。すると一気に元気を取り戻すロボット犬。
辺りに有る様々な大型のゴミを障害物の様にしてマイルズとAXLは走り回る。興奮したAXLが大空に向かって吠えると、探知したドローンが頭上に集まった。ロボット犬の映像を受信したアンドリックは暫く様子を見る事にした。
マイルズを心配したサラが廃棄場に訪れた。警戒したAXLは目を赤く点灯させサラが乗ったピックアップトラックに飛び乗ると地中にタイヤを埋めて動けないようにした。マイルズが駆けつけ、怖がるサラを安心させロボット犬に触らせる。
AXLは直ぐにサラの携帯にアクセスして身元の判別を開始。識別が完了すると目が緑色に変わり、AXLは犬の様にクンッと鳴いた。笑顔を見せるサラ。2人乗りでバイクを走らせるマイルズを追いかけてAXLが駆ける。
日がすっかり暮れると2人は廃棄場で見つけたソファに座り、いつかこの町を出たいと望んでいた思いを語り合った。サラは、明らかに大金をかけて創られたロボット犬を所有者に返すべきだと言う。
信頼を学び進化する
マイルズは、修理中にAXLの尻尾辺りに弾痕を見つけた事を話し、こんな扱い方をする所有者には取り戻す資格は無いと返した。AXLがサラの履歴から好みの音楽を自分に搭載したスピーカーでかけ、プロジェクターを起動し照明を点ける。
AXLの目に取り付けられたカメラから2人がダンスを楽しむ映像を受信して監視するアンドリックは、人との交流を通してAXLが学ぶ事がより洗練されたロボット犬になると同僚の技術担当に話す。
翌日、AXLがサラのトラックを引っ張り上げるとマイルズはここにロボット犬を置いて行かれないと主張。サラは折れ、AXLにシーツをかけトラックの荷台に乗せて2人は町へ戻った。
ガソリンスタンドに寄り、心配する父にマイルズが電話をしている間、AXLはシーツから顔を出し、給油機にアクセス。ガソリンがポンプを通り始める。次にAXLが側のATMにアクセスすると、大金が払い出し口に排出された。
喜んだ2人は辺りに目を配りながらお金を掴みその場を去った。サラが趣味でスプレー画を行う空地へやって来る。AXLはサラが壁に描いた羽をスキャンして自動分析にかけた。ロックが羽になっている保管情報に適合。
最先端の軍事テクノロジー
AXLのプロジェクターが機密情報を壁に投影し音声の説明が流れた。クレイン社/極秘と始まり、国防省と連携したクレイン社がK9犬をベースに開発したロボット犬、A(Attack攻撃)、X(Exploration 探査)、L(Logistics 補充)の能力がプレゼンされる。
マイルズはAXLに止めるよう指示した。すると頭部からペアリング装置が排出される。マイルズが掴むと親指に衝撃が走った。針で突いた様に出血。
その様子を見ていた技術担当がアンドリックに、AXLとマイルズが同期したため、マイルズ無しではOSシステムも使えずプロジェクト管理も出来ないと危機感を表す。そこへサムがマイルズ達の居る場所へ近づくドローンの映像が映し出された。
サムはマイルズとサラが一緒に居る所を見て難癖をつけた。マイルズを殴ろうとしたサムに襲い掛かるAXL。マイルズは二度と構うなとサムを脅す。怯えたサムが了解するとマイルズの指示でAXLは拘束を解いた。サムはその場を逃げ出す。
アンドリックは、人間の指示に忠実に従うロボット犬に興奮。技術担当は、もしその命令が攻撃の続行であれば、AXLによる市民の犠牲が出ていたと忠告した。アンドリックは、ある時点では必然であると話し、それが自分達の関わるビジネスだと言った。
サラの提案で、マイルズの父親にAXLの事を話して今後を相談するため2人は一端その場を離れた。その間にサムが仲間を大勢連れてやって来る。AXLの周囲にガソリンを撒くサム。マイルズに攻撃を中止されたため、AXLはサムを敵と認識しない。
一方、政府が関わるロボット犬に対して警戒感を表すチャックにAXLを守りたいマイルズは食い下がっていた。その時サラの携帯に、目の前のサムを見ているAXLのライブ映像が送信される。マイルズは急いでサラと空地へ戻った。
酷く燃やされたA.X.Lが横たわっている。マイルズが触れると、AXLの体内セーフモードが起動し、微かに目が青く点灯。修理工場に着いたマイルズとサラは、AXLの修理を開始した。
その頃、チャックの所にクレイン社の警備員が銃を持って現れ、ロボット犬のペアリング装置を探していると言う。マイルズが置き忘れた装置の事は言わず、チャックは警備員をガレージに誘導した。
修理を続けていたマイルズ。AXLのプロジェクターがハードウェアの復旧完了を告げ、再起動まで2時間半と表示する。
アンドリックの画策
アンドリックは、AXLの回収を指揮。部隊が修理工場へ派遣された。口に拘束具をはめようとした時、AXLが丁度再起動を始める。マイルズとサラは、隠れて事態を見守った。赤く目が点灯したAXLは目の前の警備員を投げ飛ばす。
するともう1人の警備員が銃でAXLを攻撃。マイルズはすかさずその警備員に飛び掛かった。落ちた銃をサラが拾う。AXLは録画された記憶にアクセスし、自分がサムに襲撃された映像を再生。サムの抹殺を認定すると工場を飛び出した。
同期しているマイルズとサラはAXLが見た映像を確認し、標的となったサムを探しに行く。サムと友人達はパーティーへ向かう途中で、その姿を捕えたAXLは唸り声をあげて車の後を追って走って行く。広場にはキャンプファイヤーを囲み大勢が集まっていた。
AXLは、キャンピングカーの上からサムに飛び掛かる。会場はパニックに陥り人が走り出す。サムは火炎放射器でAXLを攻撃するものの燃料が切れてしまう。そこへバイクで到着したマイルズとサラが割って入った。警戒を解くAXL。
頭上に多数のドローンが現れる。アンドリックは、遠隔操作でドローンにAXLを攻撃させ電気系統を破壊した。AXLが倒れ込むと駆けつけたクレイン社の警備員が拘束具を口にはめる。
クレイン社の軍事施設ではアンドリックがシステム改良を試みるがペアリング装置が無く上手く行かない。一緒に連れて来たマイルズに、AXLは自分の犬だと言い、装置の在りかを訪ねた。
ロボットに直接ケーブルを繋ぎ自分の命令を強制的に実行させ、アンドリックがAXLにサラを脅させる。しかし、隙をついてペンライトを掴んだサラは、AXLが見た羽を宙にペンライトで描きスキャンさせる事に成功させた。
再びAXLはサラとマイルズを認識すると繋がれたケーブルを弾き飛ばし、アンドリックに向かって吠え始めた。収拾がつかなくなり、施設を逃げ出したアンドリックを技術担当から緊急通報を受けた政府派遣の軍が拘束する。
サラが囮になって軍の気を引いている間に、バイクに乗ったマイルズとAXLは脱出。それを見た軍の指揮官が航空支援を要請した。衛星が直ぐにマイルズ達の位置を見つけ、攻撃用ヘリコプターが2人を頭上から捕える。
マイルズを守るため
走る道が行き止まり、マイルズとAXLは丘陵を落下。マイルズは自分を置いて逃げろと怒鳴る。前方に停空し攻撃準備するヘリコプター。AXLは、生体スキャンでマイルズが骨折している事を感知した。
マイルズを守るため、AXLはヘリコプターに向かって走り出す。記憶した情報を全てクラウドに送信し始めたAXLは、自己破壊システムを起動した。振り返ったAXLは、マイルズが自分を救ってくれたと言葉を発するとまた前方を向き走って行く。
多数のドローンが側面にくっ付き電気系統を攻撃する中、AXLはヘリコプターに向かって吠えた。クラウドへの送信が完了するとAXLは爆発。マイルズは唇を噛みしめて空高く昇る黒煙を見つめていた。
サラとマイルズは、芸術学校への進学を決め一緒に町を出ることに決めた。チャックと別れた後、2人は浜辺に寄る。マイルズは、ロボットシステムの工学本を読んでいた。サラはチャックから預かったと言いマイルズに封筒を渡す。
拘留中のアンドリックを軍の指揮官が訪問。国家の安全保障の情報を漏洩し市民の命を脅かしたと責める。そして、NSAがダーク・ウェブで発見したアルゴリズムの断片が特殊防衛システムであるAXLの暗号と合致した事を突きつけた。
いつか再び
アンドリックが開発したプログラムが何かを再構築し始めていると話し、指揮官はそれが何なのかとアンドリックに訊く。マイルズとサラの現状についてアンドリックが尋ねると、2人には奨学金を与えて監視下に置いたと指揮官は答えた。
チャックが託した封筒の中には、置き忘れたAXLとのペアリング装置が入っていた。マイルズが親指で押してみると2人の携帯にアップロードが始り、AXLと表示されるのだった。
『AXL』を観た感想
CGではなくロボット犬を造って撮影した事から登場人物とのやり取りが自然であり、観ているうちにロボット犬が愛らしく見えてきます。
しかし、実は目の色で警戒モードと平時を区別、そして情報収集して分析を行い周囲の環境を学んで進化する能力を持った最新鋭のテクノロジー。
そして、軍用に開発された政府管理下にあるAIと言う設定のため、物語は複雑化して行きます。また、高校生との交流が中心でお金持ちのいじめっ子と言う敵対者も現れて物語を二転三転させ、ロボット犬と主人公マイルズの行く手には様々な障害があります。
オートバイに乗ったマイルズとA.X.Lが一緒に走る所はとても楽しめる一場面で、ロボット犬だからこそ実現できたであろうアクロバット的な動きが躍動的であり本作の見どころと言えます。
マイルズを守るために自壊するシーンは悲しい展開ですが、最後に保存していた情報を基にA.X.L自ら再構築している事が分かり次回作に繋がる期待ができそうです。
モトクロスレース以外何の取り柄も無いと信じ込んでいた若い青年がロボット犬と出会い、そして失った事でロボット工学へ目覚める成長物語をロマンス要素も上手く取り入れた作品。
本作のクリエイターであるオリヴァー・デイリーは、キャストした俳優陣から大変好かれ、最高の雰囲気の中撮影が行われました。劇中に登場するロボット犬も資金を投入して等身大で造り、リアリティの有るやり取りを重要視しています。
そして、何と細かい動きは中に役者が入って行っています。主人公マイルズを演じたアレックス・ニューステッターは、CGとは異なり想像力を駆使しなくても実際の反応が得られたので演じやすかったとインタビューで語っています。
また、本作以前からデイリーとは仲の良い間柄で、サム役のアレックス・マクニコルとも撮影中に友達になり信頼関係を築けたと振り返ります。ニューステッターは、毎週末欠かさずレースを観戦するほどすっかりモトクロスのファンになりました。
ニューステッターを含む他の若い役者達はみなオーディションとカメラテストを受けた後にキャストされ本作の出演が決まりました。サラを演じたメキシコ人のヒップ・ホップ歌手ベッキー・Gは、異なる映画というジャンルをとても楽しんだそうです。
自身が製作した短編映画『Miles』を基に、本作で長編映画デビューしたオリヴァー・デイリー。感無量でこれ1本でお終いでも感謝の気持ちだと控えめです。観客にはもし飼っていれば家に居る犬を抱きしめて欲しいと話します。
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