アカデミー賞を受賞しているイギリス人監督スティーヴ・マックイーンが初めてクライム・スリラー映画を作りメガホンを取りました。批評家から高い評価を獲得した『妻たちの落とし前』は、強盗犯だった夫達が亡くなり借金を抱え追い詰められた妻達がお金を盗む物語です。見事な伏線から迎える終盤15分は息を飲む展開。想像を超えるサプライズも劇中に複数用意され高いエンターテイメント性を持つ作品です。
Contents
『妻たちの落とし前』作品情報
タイトル:妻たちの落とし前
原題:Widows
監督:スティーヴ・マックイーン
脚本:スティーヴ・マックイーン、ギリアン・フリン
原作:『Widows』リンダ・ラ・プラント
製作:スティーヴ・マックイーン、イアン・カニング、エミール・シャーマン
公開日:2018年11月6日(イギリス)、2018年11月16日(アメリカ)、2019年4月(日本)
出演者:ヴィオラ・デイビス、エリザベス・デビッキ、ミシェル・ロドリゲス、シンシア・エリヴォ、コリン・ファレル、リーアム・ニーソン、ジョン・バーンサル、ダニエル・カルーヤ、ロバート・デュバル
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映画「妻たちの落とし前」のフル動画を無料視聴する!ヴィオラ・デイビスなど出演者が豪華!『妻たちの落とし前』概要
スティーヴ・マックイーンは幼少時、イギリスで放映されたTV映画『妻たちの落とし前』に魅せられました。今回リメイクの制作を決意したマックイーンは『ゴーン・ガール』を観て、ギリアン・フリンに連絡を入れニューヨークで会合。脚本を共同執筆し、舞台を現代のシカゴに設定します。配役した殆どの役者達を自ら選び電話を掛けたのもマックイーンです。
キャスト
そうそうたる俳優陣が集結しており、主役のヴェロニカを演じるのはトニー賞、アカデミー賞、そしてエミー賞全て主演女優賞を受賞しているヴィオラ・デイビスです。また、本作はアンサンブルキャストが特徴で『バイオハザード』のミシェル・ロドリゲス、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のエリザベス・デビッキ、ブロードウェイミュージカル『カラー・パープル』で絶賛されトニー賞主演女優賞を受賞したシンシア・エリヴォも出演。他にハリー役のリーアム・ニーセンや『ウォーキング・デッド』のジョン・バーサル。街の政治を独占するマリガン家当主・トムにロバート・デュバル、息子のジャックはコリン・ファレル。そして、『ゲット・アウト』のダニエル・カルーヤは悪役を演じています。
『妻たちの落とし前』あらすじ・ネタバレ
長く連れ添ってきた夫婦であるハリーとヴェロニカ。朝起きた2人は、ベッドの中で睦まじく時間を過ごす。シャワーを浴びるハリーに、ヴェロニカはスキットルを持って行く。渡そうとして一口飲んで見せるヴェロニカに、ハリーは微笑みそっと口づけをした。
ハリーが遺したもの
バンで逃走するハリーとその仲間達。後方から追われ銃撃される。道路へ出たものの通報を受けた警察車両が追って来た。バンから物を投げ捨て、それを避けようとした他の乗用車が警察車両と衝突して炎上。
自分が経営している衣料品店でリンダはお金遣いの荒い夫のカルロスと口喧嘩。カルロスはリスクを背負って家族を養っていると主張。幼い2人の子供にキスをしてお母さんを頼むと言い出かけて行く。
アリスはにっこり微笑んで夫のフロレックが食事する様子を隣に座って見つめていた。アリスの目には殴られた痣。フロレックは、ふざける様に痣の辺りを指で突っつく。化粧で隠せと何食わぬ調子で言うとアリスを引き寄せ抱きしめた。
ジミーはシャツを着ながら部屋から出てきてトーストを頬張りアマンダにキスをする。一瞬不快な表情を浮かべるアマンダ。夫に朝食は要らないのかと訊くがジミーは急ぐと言って足早に出て行った。
4人の男達は車をガレージに乗り入れる。ジミーとカルロスが撃たれたフロレックを担ぎ出し、用意していた別のバンに乗り換えた。ハリーがシャッターを開けると外で待ち構えていたスワットチームが一斉に銃撃。バンは爆発して炎上した。
長年シカゴの地方議員を務めるトム・マリガンは、街の有力者が集まる晩餐会で演説し、次の選挙で議席獲得を目指す息子のジャックを紹介した。ジャックは、選挙の競争相手ジャマール・マニングが構えるサウス・サイドの選挙事務所を訪れる。
ジャマールの弟ジャテームが胡散臭そうにジャックを一瞥。選挙において競争相手と腹を割って正直に話すべきだと言う父トムの持論を前置きし、ジャックは代々政治一家の自分の方がより選挙民には認知されていると言った。
更に、ジャマールの法に反する行いについてやんわり触れると、ジャマールは逮捕された事は無いと話を遮った。ジャマールは、貧困地域の事情を本当に分かっているのは自分だと挑むように返した。
ジャックは自分が世論調査で12ポイント上回っているので、今のうちに退けばお金の無駄遣いをしなくても済み、負けて恥もかかないと話す。ジャマールは、かなり手応えを感じている時に退く人間はいないと余裕を見せた。
ジャックが事務所を出た後、ジャマールはジャテームにマリガン家が親族や友人に公共工事を受注させ資金を還流させて私腹を肥やしている事を話し、37才になる自分も違法な稼業から表の舞台へ乗り出したいと野心を見せた。
ジャマールの秘書は、ハリーが死にお金も一緒に失った事を伝える。スワットから銃撃を受けた倉庫は現場検証が行われていた。炎上した車から火が広がり、ガレージは黒焦げ。強盗犯の遺体は損傷が激しいと検死官から報告された。
お葬式に向かうヴェロニカは、悲しみに暮れ泣きながらお化粧をする。アマンダ、アリス、そしてリンダは、教会の合同葬儀に参列。アリスは自分の母に遺体を見せてもらえないと訴え涙を流す。母親は見ない方が良いとリンダを慰めた。
ジャテームは、ハリー達にお金を軽々と盗まれた事を責め、講堂に隠れていた手下を冷酷に射殺。他の部下に死体を片付けるように指示した。
埋葬に向かう車中、お抱え運転手のバッシュは何かあった時に渡すようハリーから頼まれたと言って封筒をヴェロニカに渡す。中を開けてみるとメモと鍵が入っていた。
墓地では大勢人が集まりジャックも参列していた。ヴェロニカは19才で亡くなった息子マーカスの墓石にも花を添える。ジャックはハリーと何度か仕事をしたと言い、出来る事があれば連絡して欲しいとヴェロニカにお悔やみを述べた。
遠くから様子を見ているジャマールとジャテーム。ヴェロニカはバッシュにハリーと一緒に亡くなった男達の名前を調べて欲しいと頼んだ。
裕福な生活から借金2百万ドルに転落
夜になり、ヴェロニカは音楽をかけてハリーを思い出していた。瀟洒なマンションの窓から夜の街を眺めるヴェロニカを後ろから優しく抱きしめ口づけをするハリー。ヴェロニカの目から涙が流れる。夫婦の愛犬オリヴィアが吠え始めた。
チャイムが鳴り、玄関を開けるとジャマールが立っている。無理やり入ってきてジャマールは吠えるオリヴィアを抱き上げると中へ勝手に入って行く。ハリーの事はよく知らないが、自分から2百万ドル盗んだとヴェロニカに詰め寄った。
ヴェロニカは怯えながらハリーの仕事には全く関わっていなかったので分からないと声を震わす。自分は教師組合のロビイストでハリーと仕事の繋がりは無いと言うヴェロニカに、ジャマールは選挙資金に充てて新しい人生を買うつもりだったと話した。
お金の事など知らないとヴェロニカが言った途端ジャマールはオリヴィアの首を掴み上げ、全財産を1ヶ月以内に清算しろと脅す。警察に通報すると言ったヴェロニカに、ハリーの遺体を放って置いた警察がその妻の言う事に聞く耳を持たないと嘲笑した。
リンダの衣料品店に差押人が訪れ、店にある物を次々回収する。リンダは賃貸料を毎月支払っていると突っかかるが、差押人はカルロスが使い込んでいたことを説明。レジのお金まで取り上げられ、リンダは焦りの表情を浮かべた。
宝石店を訪れたヴェロニカは、ハリーが遺した鍵で奥の貸金庫を開ける。中には分厚い手帳、その手帳に挟まれた封筒には若い女性と性交している中年男性が写った隠し撮り写真が入っていた。封筒にCEO、Ken・R、そしてLVと記載がある。
手帳にはびっしりと何か書いてあり、図面が入っていた。何を意味しているのか見当がつかないヴェロニカ。挟んであったマッチを手掛かりに街のボーリング場に向かう。バッシュとは車を譲渡する代わりにもう暫く運転手をしてもらう事にした。
ボーリング場のオーナーは、手帳に価値は無く、この世界を知らない方が良いと言われる。尾行していたジャテームは、ボーリング場から出てくるヴェロニカを車の中から見つめていた。
金遣いの荒い生活をしていたため、フロレック亡き後アリスは途方に暮れていた。母親はアリスにオンラインのデートサイトで男と知り合い、誘惑して面倒を見て貰い大学へ行って欲しいと勧める。
アリスが見知らぬ男と関係を持つなど真っ平だと言うと、母は十代で娘が多くの男達と関係を持っていた事を持ち出す。アリスはその男達からお金は貰わなかったと言い返した。
黒人が多く住む貧困地区へ選挙運動に来たジャックは、父のトムが地域で始めた商業を取り上げ、マイノリティ所有のビジネスを強調して演説。商店主の女性を招き壇上に上がらせた。
そこへ、ぶら下がりのレポーターがトムに任命されてコミッショナーの地位に就いたジャックの団体が受注した5百万ドルの公共事業が問題になっていると指摘。選挙民を前にトムは地域に貢献してきたと豪語し、ジャックは足早にその場を去った。
切羽詰まる強盗犯の妻達
ヴェロニカはハリーと死んだ男達の妻をスパサロンに呼ぶ。初対面でお互いを知らないため、黒人のヴェロニカを見たリンダは、ハリーとのなれ初めを唐突に尋ねた。
その質問には答えずヴェロニカはハリー達が長く仕事をしていた事に触れ、当座資金だと言ってリンダとアリスにお金を渡す。ヴェロニカは、ジャマールのお金を盗んだため、男達の死後、自分達に危険が迫っている事を伝える。
ヴェロニカは、ハリーの手帳に書かれていた次の5億円強盗計画を持ち出す。自分達で実行し2億円をジャマールに、そして残りを分けようと切り出した。リンダは子供が居るので夜は出られないと言い、アリスも問題を抱えたくないと断る。
ヴェロニカは自分達の命が危ういのだと言い、頼みにしていた夫はもう戻らないと続けた。翌日の夜、ヴェロニカはハリーが使っていた倉庫を訪れる。オリヴィアがハリーの残り香を嗅ぎ分け尻尾を振って椅子を前足で掻く。
アリスはオンラインで出会った男とラウンジで待ち合わせをした。大手不動産会社の役員を務めるデヴィッドは、一目でアリスに魅了された。美容師のベルは子守の仕事が入ると自分の幼い娘を母親に押し付けて家を飛び出す。
訪れたベルから感じの良さと頼り甲斐のある印象を受けたリンダはヴェロニカとの待ち合わせ場所へ向かう。デヴィッドにホテルへ誘われたリンダは躊躇していた。
ボーリング場に来たジャテームは、車椅子に乗るオーナーを拷問。ナイフで腕を刺されたオーナーは、ヴェロニカは事情を知らずにハリーの手帳を持っており、過去に行った強盗の詳細が記載されている事をジャテームに話す。
パズルのピース
倉庫に集まったヴェロニカ、リンダ、そしてアリスは、強盗実行に同意した。アリスにバンを購入しろと指示するヴェロニカに、自家用車を使えば良いと言うアリス。車はハリーの名前で登録されている、頭を少し使えとヴェロニカは叱咤した。
リンダには図面を見せて次の集合時迄に場所の特定を指示。交通費が要ると言うリンダにヴェロニカはお金を渡し、アリスに銃を3丁購入する様にとお金を手渡した。どこで手に入れるのかと尋ねるアリスに、ここはアメリカだとヴェロニカは言い放つ。
アリスは中古車のオークションへ訪れ、自分に興味を持った参加者の男性にいろいろと車の説明をして貰う。しかし、元値より高いと言う忠告に耳を傾けず、アリスは競り落とすのではなく単純に額を釣り上げて購入した。
ヴェロニカはアリスが運転できないと知り、バッシュに頼むしかないとこぼす。アリスが6千ドルも中古バンに払った事で運転資金を持つヴェロニカは憤る。中古品の競売所に来たアリスは、銃を見ている子連れの女性にポーランド語で話しかけた。
何を言っているのか分からないと女性が言うと、男に脅されているがビザが失効しているので警察に行かれないと訛りのある英語を敢えて話し嘘をつく。幼い子供が銃は女の見方だと日頃からママは言うよねとアリスに助け舟を出す。
射撃の練習に連れ立ったアリスとリンダ。図面の特定に失敗したリンダの話を聞いたアリスは自分に任せろと言った。ヴェロニカは亡くなった息子の事でハリーと言い争った朝を思い出していた。教会の葬儀で男泣きするハリー。
そんな時、ヴェロニカにもう1人の未亡人・ジミーの妻アマンダから連絡が入る。ダイナーで落ち合うと、不安な事が多く失礼になるつもりは無かったとスパサロンに来なかった事をアマンダは詫びた。
アマンダは夫から最近ヘマをするようになったと聞かされた事を話すが、ヴェロニカは、ハリーは30年やって来て一度もミスは無かったと話す。話したい要件は何だったのかと尋ねられ、ヴェロニカは様子を聞きたかったと答えた。
アマンダは4ヶ月になる息子を抱えるシングルマザーになってしまったと言う。人生をやり直す位のお金をハリーが残しているなら街を出るのも良いかもしれないとアマンダはヴェロニカにアドバイス。計画の事をヴェロニカは黙っていた。
逃走車の運転手
バッシュの自宅へジャテームが手下と共に乗り込んだ。バッシュが身につけているスーパーボールの記念指輪について触れた後、ヴェロニカから手帳を貰って来いと言った。バッシュは、お金が無いヴェロニカの運転手は辞めたと嘘をつく。
ヴェロニカは手帳を持っていないとバッシュが言った途端ジャテームがテレビの音量を上げ、手下がバッシュのリンチを始める。ジャテームは全く気にも留めずチャンネルを変えてフットボールの観戦を始めた。
翌日オリヴィアを散歩に連れ出そうとしたヴェロニカに、マンションのフロントから預かり物だと封筒を手渡される。中を開けてみるとバッシュの指輪が入っていた。その時モバイル電話が鳴り、期限はあと1週間だと男が言い通話が切れた。
アリスはデヴィッドと会う。机の上には、ヴェロニカがリンダに渡した図面。デヴィッドは、品質の良い金庫だと言った。アリスが金庫の場所は分かるかと訊くと、自分の知り合いなら分かるとデヴィッドは答える。
服を脱いでデヴィッドをベッドに押し倒すアリス。デヴィッドは関係を自分だけに限定して欲しいと申し出、アリスは了承した。そこへ誰かが訪ねて来る。母親だとデヴィッドに告げ直ぐに服を着るように言うと玄関へ飛び出していく。
玄関を開けるとヴェロニカが立っていた。バッシュを殺され怯えたヴェロニカは、行く所が無いと話す。ヴェロニカを見たデヴィッドは、母親だって?と怪訝な表情をして出て行く。
服の乱れたアリスを見たヴェロニカは、夫が死亡してまだ1ヶ月だと節操の無さを責めた。アリスは口汚く罵る。ヴェロニカは、アリスの頭の悪さを指摘。図面は金庫だと判明し、デヴィッドが場所の特定をするとアリスは言うがヴェロニカは半信半疑。
更にアリスが罵り、ヴェロニカはアリスを平手打ち。するとアリスもヴェロニカの頬を殴り返し、もう誰にも自分を馬鹿にさせないと睨みつけた。ヴェロニカはバッシュが殺された事を話し、全てを失ったと涙ぐむ。アリスはヴェロニカを抱きしめた。
倉庫で落ち合ったリンダは、ヴェロニカに逃走用バンを運転する人間を見つけろと詰め寄り1週間何をしていたのかと責めた。ヴェロニカはたった1つの仕事も完了出来ないくせに文句を言うなと言い返す。
リンダは失敗すれば全員刑務所行きだとまくし立て、決行日までの残り6日以内に新しい運転手を見つけろと怒鳴った。
ハリーの正体
ヴェロニカは考えた挙句、オリヴィアを連れてアマンダの自宅を訪ねた。自分が車に精通した人を探している事を誰かに話したかとアマンダに訊く。今日は子供がむずがっているのでタイミングが悪いとアマンダが言うと、赤ん坊の泣き声してくる。
アマンダが様子を見に行っている間、歩き回っていたオリヴィアが奥の部屋の前で鳴き始め尻尾を振って扉を掻きだす。オリヴィアの所へ来たヴェロニカは、壁際のテーブルの上に置かれたハリーのスキットルを見つける。
尚も扉を掻いて鳴くオリヴィア。ヴェロニカは部屋の前で息を飲んで立ち尽くす。オリヴィアを抱き上げるとヴェロニカはアマンダの自宅を足早に出て行った。
アマンダが奥の部屋の扉を開け、もっと早く帰るべきだったのに、いつも長く居たがるんだからと言った。何も言わずじっと椅子に座るハリー。車に戻ったヴェロニカは、運転しながら唇を噛みしめ泣き始めた。
ジャックのボートで海にクルージングに出たハリーとジャック。検死官は遺体をうまく取り計らったかとハリーは尋ねた。ジャックは死体にもお金は必要だと言い、検死官が賄賂を要求している事を明かす。
ハリー達がジャマールのお金を盗んだ夜。仲間がバンの後ろに乗り込むとハリーはガスボンベをバンに立て掛け、数回発砲してからシャッターを開けた。攻撃されたと思ったスワットが一斉にバンに向かって銃撃を開始。
その隙にハリーはお金の入ったバッグを持ち攻撃下にあるバンから離れ、隠してあった起爆装置で仲間が乗るバンを爆破した。
選挙前にお金は用意できるのかとジャックが尋ねる。ハリーは、時間は必要だが彼女達はお金を手に入れると答えた。ジャックは選挙前に用意できなければ、また生き返るぞとハリーに言う。
デヴィッドが見つけた金庫はマリガン家にある金庫だと分かる。倉庫へ集合したヴェロニカとアリスの所へ子守のベルを連れて来たリンダは、すばしっこく頭の良いベルは運転手に適役だと紹介した。
ヴェロニカは難色を示すが、アリスも運転手は必要だと言い、納得するしかない。翌日、ヴェロニカはマリガン家を訪れる。設置された監視カメラを目の端で確認。その間にベルは周辺をジョギングしながら観察。死角になったフェンスを軽々と登った。
家の中に入ると警備員質室が目に飛び込む。ヴェロニカは出迎えた秘書を上手誘導して常備する警備員は1人だけだと知る。会議の終了後にジャックが面会すると伝えた秘書が姿を消すとヴェロニカは直ぐに人目を盗み上階へ行く。
選挙事務所になっているフロアに大きなシカゴの地図が掛かっている前に立ち止まるヴェロニカを職員が不審に思う。トイレを探していて道に迷った振りをした。ベルは、外から戻ったスタッフが2度ガラスドアを叩き警備員が出てくる所を目撃。
ジャックは世論調査の支持率が落ちたため選挙運動本部長を首にし、イギリス出身の黒人を新しく就任させてマニングに対抗する方針をトムに説明。マリガン家の選挙を代々30年間担当して来た相手に忠誠心が無いのかと息子を怒鳴るトム。
ジャックは裏金問題でウンザリしていると言いトムを激しく責めた。トムは、お前には何も変革など起こせないと声を荒げ、唯一重要なのは政界で生き残る事だと言った。
更に、トムはこの街を造ったのは自分達であり、不法移民や子供ばかり作っている人間に奪われないためには権力に留まる事だと続けた。ジャックはニヤリと笑い、父親が死んだ後の日々を楽しみにしていると冷たく言った。
これが自分の息子かと溜息をついたトムは、首にした選挙運動本部長を復帰させろと言い部屋を出た。外で待っていたヴェロニカは教師組合のロビイストだと自己紹介する。アポが無いと言うジャックに、教師組合とは話せとトムは命じた。
ヴェロニカはジャックにハリーと最後に会ったのは何時かと尋ねた。亡くなる前だと言うジャックに、ジャマールに脅され、ハリーが盗ったお金を自分に返せと言ってきた事を話す。意味が分からないと恍けるジャック。
お互いジャマールと言う共通の問題を抱えており、何かあれば連絡するように言ったではないかと食い下がる。ジャックはヴェロニカが自分の選挙区に住んでいないと返し、犯罪なら警察へ通報した方が良いと突き放した。
マリガン家を出たヴェロニカは敷地に駐車したレイク・ビュー警備会社の車のロゴが写真の入っていた封筒に記載されたLVと同一の物だと気付く。
出勤したベルは、先日美容室のオーナーが揉めていた男はジャマールの手下だと分かる。オーナーはマイノリティで且つ女性の自分が経営を始めるのは難しく、お金の工面をして貰ったために借りを作った事を話した。
選挙討論が行われる日から3日前に集まった4人の妻達。ヴェロニカは、ハリーの手帳にあった5百万ドルの額は、マリガンが委託事業で受け取った裏金の金額と合致する事を説明した。
5百万ドルがどれだけ重いのか土を入れた容器を見立ててリンダに運ばせ、男並みに素早く動けるチーム力が必要だと檄を飛ばす。ヴェロニカは、自分達に実行できないと誰もが高を括っている事が最大の強みだと全員の目を見据えるのだった。
金庫のパスワードを管理するレイク・ビュー警備会社のCEOケンに姪との関係をばらすとヴェロニカは写真を見せて脅す。毎日変更されるパスワードを教えるように言うと、ケンはハリーが死んで解放されたと思ったのにと泣き顔。
その様子を尾行していたジャテームが車の中から観察していた。自分の車に乗り込んだヴェロニカに、ケンは窓からパスワードが書かれた紙を投げつける。日暮れになり、ヴェロニカはオリヴィアをペットホテルへ預けに立ち寄った。
妻たちの強盗
倉庫に集まる3人。ベルはスパーリングをしている。ヴェロニカが最後に現れ、失敗すれば後はそれぞれ自分の責任だと言い、全員バンに乗り込み出発した。
ベルはマリガン家の近所で路上駐車した複数の車に信号弾を次々投げ入れる。直ぐに警報が起動し私服警察官が急行。街灯に照らし出されたベルが遠くから手を振った。「行くわよ」とヴェロニカが言うと皆ヘルメットを被った。
車を降りマリガン家の敷地に侵入し庭を通って窓から警備員が居る事を確認したヴェロニカはガラスドアを2回叩く。警備員がドアを開けた途端、銃で脅し家の中へ押し入りテーザー銃で気絶させ拘束帯で締め上げた。
次々に階段を上がって行く女達。緊張で鼓動が早く息が上がる。車を回したベルは、マリガン家の外で待機した。上階にあるシカゴの地図が入ったフレームを動かすと金庫が姿を現す。ヴェロニカはパスワードを取り出し、書かれてある通り891618と押す。
間違いを知らせるブザーが鳴る。もう一度同じ番号を入力するがやはりブザーが鳴った。警備会社へ自動通報が入る時間制限アラームが早くなる。逆さまだと言われ、819169と押し直すと金庫がようやく開く。中の棚にお金が積み上がっていた。
背負っていたバッグを下ろした3人は両手で素早くお金をバッグに投げ入れて行く。金庫を飛び出し階段を駆け足で下りる。突然、部屋の扉が開きトムが銃を構えて出て来た。
膨れ上がったバッグを見て俺の金だと怒鳴り、銃でヘルメットの目隠しを外し露わになったヴェロニカの顔を凝視した。アリスがトムの銃を奪おうとした拍子にトムはアリスに発砲。
背後に居たリンダがそのトムに向かって引き金を引く。その銃を預かると言うヴェロニカにリンダはトムを撃った銃を手渡した。アリスを引っ張り全員バンの後ろに乗り込む。
どんでん返し
ベルは車を出してと言うヴェロニカの顔をじっと見つめる。するとベルのこめかみに銃を突きつけたジャテームが助手席から顔を覗かせた。バンは走り出し、4人の妻達は路上に置き去りにされてしまう。
勝ち誇った表情でバンを運転するジャテームはラジオから流れる兄の選挙討論を聞きながら高揚。そこに突然後ろから自分の車に追突され、トンネル入り口の分離帯に激しく衝突した。ジャテームの車から3人の妻達が飛び出してくる。
バンの後部扉を開けてバッグを引っ張り出し、ジャテームの車に戻るとその場から急発進した。ジャテームは、頭から血を流し即死。酷く出血しているアリスは車の中で朦朧とし始めていた。
病院の救急へアリスを担ぎ込んだリンダは、銃で撃たれかなり出血した事を駆けつけた医療者へ伝えた。名前を問いかけられても答えないアリスの代わりにジェニファーだと告げ、そっと後ずさる。
倉庫へ戻ったヴェロニカはお金の入ったバッグを車から下ろす。人の気配を感じて振り向くと、ハリーが立っていた。押さえていたものが溢れだし、ヴェロニカの目から涙がこぼれる。ハリーは小さく頷く。
何故ジャマールに手帳を売らなかったのかとハリーが問い詰める。ヴェロニカは、子供を産ませ白人同志幸せな家庭を作ろうとしていたくせにと声を荒げた。ハリーは、自分達の結婚はもう救えなかった、だが自分を救わねばならなかったと叫んだ。
臆病者とヴェロニカが蔑むと、ハリーはその金が必要だと近づいてヴェロニカを殴りバッグを引っ手繰った。地面に倒されたヴェロニカ。ポケットから銃を抜いたハリーは、深呼吸して振り返る。その瞬間、ヴェロニカはハリーを撃った。
膝をついて倒れ込むハリー。ヴェロニカは嗚咽を漏らしながらハリーの手を取るとリンダの銃を握らせる。お金が入ったバッグを1つだけ背負い、倉庫を出て行く。ジャテームの車に信号弾を投げ入れ、ヴェロニカは自分の車に乗り込んだ。
美容室のオーナーが店を開けると、椅子の上に大金の入った紙袋を見つける。ラジオからトムが亡くなった同情票でジャックが選挙に勝利したニュースが流れた。その様子を店の外に駐車した車の中からじっと見つめるベル。
衣料品店を取り戻したリンダは子供達と店を訪れる。感慨深い表情で店内を見回すリンダ。
スーツに身を包んだアリスがカフェを訪れ窓際に座った。奥のテーブル席でコーヒーを飲むヴェロニカ。お互いに気づき2人は一瞬緊張した。遅れて来た女友達がアリスの向かいに腰掛けた。鏡越しにヴェロニカを見つめるアリス。
ジャマールの秘書がヴェロニカの向かいに座り、連絡を貰い驚いたと切り出す。ヴェロニカは、テーブルの下に置いたお金を使い学校の図書館を建てる費用に充て、その図書館をマーカスと名付けて欲しいと頼んだ。
カフェを出たアリスが車に乗ろうとした時、ヴェロニカが声を掛ける。明るい笑顔を浮かべたヴェロニカは、元気だったかとアリスに尋ねた。
『妻たちの落とし前』を観た感想
政治と行政の汚職や民間企業との癒着、人種差別、そして長年連れ添った夫の浮気、それぞれが独立したテーマに成り得る題材を1つの映画に全て盛り込み完結させたスティーヴ・マックイーン。緊張感が溢れ手に汗握るスリラー作品です。
散りばめられた伏線が融合した時、愛情深く優しい夫だとヴェロニカが信じて疑わなかったハリーの真の目論見が露わになります。自分のために仲間を罠に掛けて殺害し、妻さえ手に掛けようとする夫の本性。
一緒に人生を歩いた分だけ妻は衝撃を受けます。それを吹っ切るように計画を実行して前に進もうとするヴェロニカのうねる様な感情は生々しく、壊れそうな自分を必死に支える健気さに女性観客は共感するでしょう。
専業主婦だった妻達が夫の死後、自分で人生を切り開くために夫の稼業である強盗を1度だけ実行。その過程でそれぞれの女性は大きく変化して行き、特にアリスは男性に頼って生きる容姿だけが取り柄の女性を卒業し強さを学びます。
未亡人達の成長を1つの見どころと指摘するのは、本作のクリエイターであるマックイーンです。最初に現代芸術家として名前が知れ渡った彼の経歴は輝かしく、彫刻や映像作品を発表し1997年本国のイギリスでターナー賞を受賞。
また、過去に個展開催で3度も来日しており、2006年から2014年の間に香川県の猪熊弦一郎美術館や表参道で作品を発表し、社会が抱える問題を提起しました。
マックイーンが映画制作に乗り出すのは2008年で、初監督作品『ハンガー』が高い評価を獲得し、カンヌ国際映画祭の新人賞に当たるカメラドール賞を受賞しています。
2013年には『それでも夜は明ける』で第86回アカデミー賞の作品賞を含む3部門を受賞する等様々な分野で才能を発揮してきた芸術家兼映画クリエイターなのです。
本作の豪華キャストからもマックイーンを絶賛する声が上がり、細かい事まで命令したがる監督が多い中、俳優達にスペースを与え創造力を引き出す技術を備えていると話すのはリーアム・ニーセンやドラマ作品初出演のミシェル・ロドリゲス。
また、全てを失ったヴェロニカが唯一心の拠り所にするウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア。絶妙なタイミングでオリヴィアを登場させるマックイーンの見事な演出でした。撮影現場ではオリヴィア専用のトレーラーが用意されたそうです。
御年86才の名優ロバート・デュバルは、最初出演を断りましたが自分の年齢を考え息子ジャックにバトンを渡そうするトム役の出演を決めました。名立たる熟練俳優達をまとめたマックイーンは、管理能力も卓越していると言えます。
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