【完全暴露】映画『リーン・オン・ピート』あらすじ・ネタバレと感想!

『さざなみ』で注目を集めた英国人監督兼脚本家のアンドリュー・ヘイが6年前に読んだ原作に魅せられ映画化。15才の少年と怪我を負う競走馬との愛情を描いた心を打つ物語だ。公開された各国の映画通、特に男性から高い支持を得ている。7才の頃に落馬して以来馬が苦手だったヘイが馬に恋をしたと語り自然豊かなオレゴンで主に撮影した。

リーン・オン・ピートの作品情報

タイトル:リーン・オン・ピート
原題:Lean on Pete
監督:アンドリュー・ヘイ
脚本:アンドリュー・ヘイ
原作:『リーン・オン・ピート』ウィリー・ブローティン

製作:トリスタン・ゴリハー

公開日:2018年4月6日 米国、2018年5月4日 英国、2018年11月  日本

出演者:チャーリー・トンプソン、トラヴィス・フィメル、スティーヴ・ブシェミ、クロエ・セヴィニー、アリソン・エリオット

本作は、公開されると批評家から圧倒的な支持を集め、瞬く間に話題になった。米国の批評サイトRotten Tomatoesでは、実に91パーセント、製作国である英紙ガーディアンでは星4つとそれぞれ高い評価を獲得している。今回も監督と脚本を担ったアンドリュー・ヘイは、原作に対し忠実に撮りたかったと語り、わざわざアメリカで撮影したと語る。

リーン・オン・ピートのキャスト

主演を務めたのは、『ゲティ家の身代金』でゲティ三世を演じたチャーリー・プラマー。本作の演技で、ヴェネツィア国際映画祭の新人賞であるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞している。

リーン・オン・ピートのあらすじとネタバレ

早朝チャーリー・トンプソンは段ボールの荷を解いている。部屋を出ると父親のレイの部屋から女性の笑い声が聞こえる。チャーリーは家を出てジョギングを始める。遠くに競馬場が見える。

チャーリーが家に戻ると見知らぬ女性が台所で料理をしている。奥の部屋からレイがジーパンを履きながら出てくる。彼女が朝食の用意が出来たのでテーブルに座る様に言う。レイがチャーリーに今朝のジョギングはどうだったかと尋ねる。チャーリーは、競馬場を見かけた事を話し、今度一緒に行ってみようと父に言う。

3人でテーブルを囲んで食事を始める。彼女が席を立つと、チャーリーとレイは彼女の皿に残ったソーセージを奪い合い微笑み合う。

「新しい彼女?」

「いや。お前ヤリたいのか?」

「マーリーンより好きだよ」

「ストリッパーにしちゃあ、マーリーンは利口だったぜ」

「意地悪だったし、リンみたいに料理も出来なかった」

レイは笑うと「仕事仲間だよ。それに人妻だ。別居中だけどな」と声を落としていった。チャーリーは、彼女の夫が乗り込んでこないのかとレイに尋ねると、夫は別の女性と住んでいるしここの住所を知らないので大丈夫だと言った。

レイは今夜一人で大丈夫かと息子に尋ね、チャーリーが頷くとお金を財布から出し、もっと渡してやれなくて悪いな、と言う。チャーリーは紙幣を受け取りながら十分だよ、これ以上は必要ないからと返す。レイは微笑み、先に寝ていろよと言って家を出て行く。

ポートランド・ダウンズ地方競馬場。

ジョギングの途中チャーリーは競馬場の建物に入り、中を抜けてレーストラックへ行く。笑みを浮かべながら周囲を見回す。

夜、自宅で1人テレビを見ながらスープと菓子を頬張ると、ポケットから1枚の写真を取り出す。幼少時代のチャーリーを抱き上げている女性の写真で、裏には僕とマージ―叔母さんと記載がある。

 

出逢い

翌朝、競馬場で走る馬に並走してジョギングするチャーリーは厩舎までやって来る。一人罵っているデル・モンゴメリーがチャーリーにここで何をしているのかと訊いてくる。走っているだけだと答えるチャーリーに体力があるかとデルが尋ねる。

タイヤがパンクして一人で手に負えず10ドル払うから手伝えとチャーリーに言う。修理が終わると、チャーリーはアルバイトをしたいと申し出る。デルは、1晩泊まり込みの仕事で25ドルしか払わないと答え、チャーリーは承諾する。

馬屋に居た馬を外へ連れ出すチャーリーにデルが馬の歩かせ方を教え、手綱を放せば走り出してしまうので注意するようにと言う。デルは別の馬をチャーリーにあてがい、こいつは弱虫だから大丈夫だと言う。

チャーリーがその馬の名を尋ねると「リーン・オン・ピートだ」と答える。デルは、2頭はクォーター馬の短距離レース用競走馬だと説明した後、ピートが駄目な馬だと散々な言い方をする。

競馬場。

チャーリーは、これが初めての競馬観戦だと話す。ピートが颯爽に走る様子を観客に紛れて見守るチャーリーは、嬉しそうに一緒に走り出す。

「ピートすっごく速いよ。観た?」

「速かねえよ。他の馬がアホなんだ」とデルは吐き捨てる。

デルは約束の額より多い50ドルをチャーリーに渡し、今日はよくやってくれたと言う。夕暮れ、チャーリーはデルのトラックの荷台で横になる。嘶きがして体を起こすと、ピートがフェンスの向こう側に立ち、チャーリーを見つめている。「ピート、調子はどう?」チャーリーが優しく語りかけるとピートは歩き出す。

食料品を抱えて家に戻るとレイが居り、何処に行っていたのかとチャーリーに尋ねる。書置きを残した事、そして馬の世話をするアルバイトをしてお金を稼ぎ食料品を買ってきたと父に伝える。レイは、デルという男は真ともかと尋ねると、チャーリーは大丈夫だと答える。

レストランでデルとチャーリーが食事をしている。チャーリーはサンドイッチにかぶりついている。デルは、行儀が悪いとチャーリーを咎め、母親は何と言っているのかと尋ねる。チャーリーは、会ったことが無いので分からないと答える。デルは、チャーリーの母親がまだ幼いチャーリーを置いて家を出たまま帰らなかった事を聞き、酷い母親だ、子供には母親が必要だと言う。

チャーリーは、マージ叔母さんが居るが、自分が12才の時に父親が女性と出かけて数日留守にした事でマージと喧嘩になり、それ以来2人は口を聞いていないと話す。デルは、マナーを学べと言い、今日の分だと言ってお金をチャーリーに渡し、ランチをご馳走して早退させるから前日よりは少ない額だと言う。

夜チャーリーが1人で自宅に居ると大声を上げてレイが玄関を開け、中から扉を抑えている。レイはチャーリーに逃げろと叫ぶ。見知らぬ男がレイを突き飛ばして家に入ってくると2人は揉み合いになる。チャーリーは部屋に戻りハンマーを手に玄関まで戻った瞬間、ガラスが割れる音がしてその男が走って逃げだす。レイはお腹を刺されて酷く出血している。チャーリーはレイに駆け寄り、様子を見に外に出てきた隣人に救急車を呼ぶよう叫ぶ。

現場に来た警察官に年齢を訊かれ、チャーリーは15才だと答える。面倒を見てくれる人は居るかという質問に、叔母が来てくれるとチャーリーは答える。

病院。

担当医からレイが感染症を引き起こし深刻な状態であると聞いたチャーリーは、レイに家に戻って少し眠るように言われるが、付き添うと言い父の手を握る。

馬屋。

チャーリーは、馬屋で馬糞を片付け清掃する。

病院。

チャーリーはレイにマージ叔母の連絡先を尋ねる。レイは何故必要なのかと訊く。チャーリーは、きっと助けてもらえるからだと答える。レイは、自分達の面倒は自分達で見ようと言い、家に戻りゆっくり眠るように言う。お金が必要だから厩舎の仕事を続けるように息子に言う。

自宅に戻ったチャーリーは荷物をまとめ、ランプとマージ叔母の写真を持ち、レイがいつも被っている野球帽を被ると家を出る。

厩舎。

ピートの馬屋に隣接する道具部屋に荷物を置くとピートにこれからはもっと会いに来ると話しかける。ピートはチャーリーの手を舐める。

競馬場。

観客席でチャーリーはジョッキーのボニーと競馬観戦している。

「馬はレースをするためにここに居るの。ペットじゃないのよ」とボニーは言う。ピートがレースに勝利し喜ぶチャーリーだが、デルとボニーが興奮剤をピートに与えた事を知る。チャーリーは、公衆電話から病院に電話をして父親の容態を確かめた後、ワイオミングの交換台にマージ・トンプソンの電話番号を探してもらうが該当者は無いと言われる。

チャーリーが父の見舞いに訪れると病室のベッドが片づけられている。担当医はレイが亡くなったと告げ、チャーリーに誰か連絡する人は居ないかと尋ねる。チャーリーが身寄りの無い事を告げると医者は福祉事務所に連絡すると言って病室を出て行く。チャーリーは急いで飛び出し走り去る。

 

逃避行

チャーリーは、怪我をしたピートが売りに出され、その後は殺処分されることを知る。ダイナーで男達とビールを飲んでいたデルを見つけたチャーリーは、自分がピートを買うから売らないでくれと頼む。しかし、デルはどうやってお金を工面するのか、どこで面倒を見るのか、自分の馬屋は使わせないと言いながら嘲笑する。デルはチャーリーにピートをトレーラーに乗せろと怒鳴りながら鍵を渡す。

チャーリーは、ピートをトレーラーに乗せるとトラックに乗り込み運転して厩舎から走り去る。

山中、ガソリンが残り少なくなった事を告げるアラームが鳴る。小さなガソリンスタンドを見つけたチャーリーは、店内から出てきた店員にレギュラーガソリンを注文して店内に入る。チャーリーは、周りの様子を伺いながら地図を掴むと店の外に出てトラックに乗り込みその場を走り去る。

夜、駐車中の車からガソリンを盗むチャーリーは、レストランのネオンサインを見つめる。

チャーリーはファミリーレストランに入り、無銭飲食をする。逃げようとするが捕まり事務所まで連れて行かれる。店員が保安官事務所に電話をかけているとチャーリーのテーブルを担当したウェイトレスが事務所に入ってくる。チャーリーは、とてもお腹が空いていたが持ち金はガソリンに使って残っておらず申し訳ないと謝る。

ウェイトレスが何処に向かっているのかと尋ねると、ワイオミングだと答え叔母を見つけられないでいる事を話す。店員が戻り、団体客の注文をさばかなければならず、事務所でチャーリーの監視ができないとウェイトレスに漏らすと、彼女はチャーリーを行かせてやれと言う。チャーリーは立ち上がり事務所を飛び出す。

夜半、トラックが故障し動かなくなる。ピートが走る車の音に神経質になるため、車道を逸れてピートの手綱を引きながらチャーリーは歩き出す。砂漠の強い日差しの中を歩きながら、チャーリーはオレゴンに来る前に住んでいたワシントン州のスポケーンで友人とその母親と一緒に好物のパンケーキを食べて過ごした最高の思い出をピートに話して聞かせる。

ボトルの水を分け合いながら飲む。「スポケーンの友人の所へ行こうかとも思ったんだ。でも、物乞いなんかしたくない。こんな姿を見られるよりは、二度と会えない方が良い。」

夜、木にもたれて野宿するチャーリー。「父さんが家を空けた時、よくマージと家の外でキャンプしたんだ。夜は星を数えて名前を付けたんだよ。マージの所へ行って僕たちが行儀よくすればきっと居させてくれると思う」

荒野をチャーリーはピートと歩き続ける。

「父さんが言うには、母さんはもの凄い気分屋で、意地悪だったり優しくなったり…デルみたいだね。父さんは、母さんが心の底では僕を愛してるって言うんだ。で、頭のイカレタ母さんは居なくなって良かったって。父さんがお前と一緒に居るからって。」

車道に近づきオートバイが行き交う大きな音にピートは怯えて暴れる。チャーリーは抑える事が出来ず、首を振ったピートに手綱を持ってかれてしまう。走り出すピートを追いかけるチャーリー。道路に飛び出したピートは、走ってきた車に正面衝突してしまう。チャーリーはピートに駆け寄り、頬を撫でながら声を掛けるが痛みに悶えるピートは大きく鼻から息を吐き出した後動かなくなる。

ふらふらと立ち上がるチャーリーは荒い呼吸をしながら傷だらけのピートの体を見る。事故現場に来た警察官は身寄りがないチャーリーに全部解決するから大丈夫だと言う。誰の馬なのかと問われたチャーリーは、ピートを見つめるとその場を走って逃げだす。

町に辿り着いたチャーリーは、ゴミ集積場で横になり一夜を明かす。ホームレスシェルターで食事をしているチャーリーに男が話しかけてくる。その男は自分の彼女が住むトレーラーにチャーリーを案内する。

行き交う通行人に電話を貸してほしいとチャーリーは丁寧に頼む。マージが何年も前に働いていたバーに電話をかけ、彼女と顔見知りだった男と話しをする。その男は、マージが結婚してララミーに在る図書館に勤めていると話す。

ペンキ屋を訪れたチャーリーは仕事がしたいと申し出る。屋内のペンキ塗りの仕事をして給金を貰い夜トレーラーに戻ると、チャーリーは靴下の中にお金をねじ込んで眠りにつく。突然男がチャーリーに襲い掛かり、仕事で貰ったお金を寄こせとチャーリーを殴り、無理やり靴下に手を入れてお金を引っ手繰る。トレーラーの外に放り出されたチャーリーは、乗り捨てられた車のトランクから工具を見つけるとトレーラーに引き返す。チャーリーは男を殴りつけお金を奪い返しその場を去る。

 

Home

ワイオミング行きの長距離バスに乗り込むチャーリー。

ララミー公立図書館。

チャーリーは周囲を見回しながら館内を歩く。奥に居たマージがチャーリーに気が付き近づくと両手で抱きしめる。

マージ宅。

チャーリーはパンケーキを食べながら、もしマージの夫が許可すれば少しだけ滞在させてもらえないかと恐る恐る頼む。マージは、もう別れた事を示唆し、居たいだけ居ていいと答える。

夜、チャーリーはマージの寝室を訪れて話があると言う。

「もし追い出されても悪くは思わないよ。僕は大丈夫だから」

「追い出したりなんかしないわ」

「もし、居させて貰えるなら、ここで就学してもいいかな」

「そうね。学業は法律で定められてる」

「もし、僕が刑務所に行くことになって出所したら、またここに戻って来れるかな」

「刑務所なんかへ行かないわよ。行ったとしら勿論帰っていらっしゃい。ともかく今夜はよく寝なさい。」

「悪夢を見るんだ。父さんの事。時々ピートの事も。救えなかったから。」

「大丈夫よ、私が居るから。悪夢は完全には消えないけれど、癒えるものよ」

「父さんとピートが恋しいんだ。会いたい」

チャーリーの目から涙が溢れマージに抱きつき声を上げて泣き出す。マージは力強くチャーリーを抱きしめる。

チャーリーが早朝の住宅街をジョギングしている。ふと、立ち止まり振り返る。

 

リーン・オン・ピートを観た感想

個人間の繋がりが薄いとされるアメリカ特有の辛い境遇に立たされる少年が唯一心を通わせた相手は、散々使われた挙句に殺処分が近い競走馬のピート。守りたい一心で馬と逃亡の旅に出るチャーリーを待ち受けているのは、厳しい現実であるが一切センチメンタルに描かず、淡々と緻密に2人を描いて行く。

特筆すべきは、アンドリュー・ヘイが誰かを悪人に仕立てなかったである。チャーリーの周りに居る大人は父親のレイを含め、皆優しさや同情心はあるが幼い少年を導く資質は欠落している。

観客に泣いて欲しいと決して頼まない映画でありながら、一縷の望みを胸に旅を続けるチャーリーとピートに涙するのは、都合の良い奇跡が起きないリアリティに説得力があるからだ。

ピートを失ったチャーリーの表情は険しくなっていく。働いて稼いだ給料を奪われた後、彼は犠牲者になる事を拒絶し暴力には暴力で対抗する。しかし、それはマージに会いに行くと言う目的を遂げるためであり、堕落の始まりではないのである。

主演のチャーリー・プラマーは、近年殆ど目にしない類稀な才能を持つ若い役者である。新作映画を紹介する番組、BUILDの進行を務めるリッキー・カミラリーがたとえた様に、まるでジェームズ・ディーンを彷彿とさせる繊細な儚さを見事に演じ観客の心を大きく揺さぶる。

現在19才のプラマーは、オーディションで選ばれてキャストされた。劇中殆どのシーンに登場し最後まで物語をリードする若い役者を探していた監督のヘイは、プラマーが群を抜いていたと語り賞賛する。

これに対し、プラマーは、ヘイがクロスアップ等1場面を様々な方向から何度も撮影し直すのではなく多くのシーンをワンショットで撮り、更に最初から順番に撮影した事が物語に連続性が生まれ、感情移入に役立ったと話す。

精神的に役にのめり込んだと語るプラマーは相当消耗したそうで、撮影終了後両親とガールフレンドに長く会っていなかったので直ぐニューヨークに戻ったとインタビューで年頃の顔を覗かせる。

また、ピートを演じた馬はスタースキーという名前で、他3馬を勝ち抜いて役を得たとヘイは笑って語る。きちんと調教された名馬で、おやつを貰いながら撮影に協力したそうだ。

リドリ―・スコットの下で『グラディエーター』の編集アシスタントとして仕事をした日々をヘイは振り返り、いわゆるハリウッド映画を作りたくなかったと言い、人の人生に寄り添う映画を作りたいと語る。本作は、正にヘイが心を注ぐ地に足の着いた美しい作品である。

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