原作の小説は全世界的ベストセラーとなり、映画化されると瞬く間に記録的な大ヒットシリーズとなった、イギリスの児童文学作家J・K・ローリングの原作による“ハリー・ポッター”シリーズ。
今回は、前作(第2作)の『秘密の部屋』から2年、ホグワーツ魔法魔術学校の3年生となったハリー・ポッターと仲間たちが更なる成長を見せてくれるシリーズ第3作『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』についてのあらすじとネタバレ、感想を大特集しますので最後までお付き合いください。
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『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の作品情報
タイトル:ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
原題:Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:スティーヴ・クローヴス
原作:J・K・ローリング
製作:デヴィッド・ハイマン/クリス・コロンバス/マーク・ラドクリフ
公開:2004年6月4日(アメリカ)、2004年6月26日(日本)
出演:ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン/マイケル・ガンボン/アラン・リックマン/マギー・スミス/ロビー・コルトレーン/トム・フェルトン/マシュー・ルイス/デイビッド・シューリス/ティモシー・スポール/デイビッド・ブラッドリー/ロバート・ハーディ/ゲイリー・オールドマン など
監督は前2作でメガホンを執ったクリス・コロンバスが降板、代わりにスティーヴン・スピルバーグやギレルモ・デル・トロといった有力候補の中から後に『ゼロ・グラビティ』『ROMA/ローマ』でアカデミー監督賞を受賞することになるアルフォンソ・キュアロンが選ばれています。
脚本は前2作に引き続いてスティーヴ・クローヴスが担当、本作も含む3作で音楽を担当してきたジョン・ウィリアムスは本作限りで降板しています(ただし、ウィリアムス作曲のメインテーマ曲は後のシリーズ全作品で引き続き使用されています)。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のキャスト
主演のダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソンを始めとするメインキャストは(ダンブルドア校長役を除いて)ほぼ続投、今回からハリーの過去を知るシリーズの重要人物として新たにゲイリー・オールドマンが、ハリーの新たな師匠役でデイビッド・シューリスがシリーズ初参戦しています。
なお、前2作でダンブルドア校長を演じてきたリチャード・ハリスの急逝に伴い、本作からシリーズ完結までマイケル・ガンボンがダンブルドア役を引き継いで演じます。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のあらすじ・ネタバレ
ハリーの家出
ホグワーツ魔法魔術学校での激動の2年目を終えたハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)は、新年度までの間、醜悪な親戚ダーズリー家で満たされない日々を送っていたのだ。
そんなある日、更に極悪な叔母マージ(パム・フェリス)がダーズリー家を訪れ、ハリーはおろか両親のことまでも侮辱してきたのである。
一家が団欒するなか、一人だけ後片づけを命じられていたハリーは遂に不満を爆発させ、マージに魔法をかけて風船のように膨らませるとそのまま上空へと飛ばしてしまったのだった。
堪りかねたハリーは一家の制止を振り切って家を出ていき、人気のない公園で謎めいた黒い犬に遭遇したその時、すぐ近くに行く宛のない魔法使いや魔女を乗せる三階建てのバス“夜の騎士バス”が通りかかったのだ。
ハリーは車掌のスタン・シャンパイク(リー・イングルビー)に促されてバスに乗り込み、バスは猛スピードでロンドンの街を駆け抜け、ダイアゴン横丁のパブ「漏れ鍋」へと向かったのである。
移動中にスタンが読んでいた新聞には、殺人罪で服役していた囚人シリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)が魔法界の刑務所アズカバンから脱獄した事件が一面で報じられていたのだ。
スタンいわく、シリウスは“名前を言ってはいけないあの人”の支援者ということだった。
パブ「濡れ鍋」
「漏れ鍋」に到着したハリーは、魔法省の大臣コーネリアス・ファッジ(ロバート・ハーディ)が訪れている部屋へと通された。
未成年の魔法使いはマグル(魔法を使えない一般人)の世界での魔法の使用を禁じられているため、ハリーは退学を覚悟していたが、ファッジはマージが既に救助されて記憶も抹消されていることを理由に今回の件は不問とし、翌日のホグワーツへの移動までは「漏れ鍋」に滞在のうえ外出しないよう命じたのだ。
翌朝、ハリーは「怪物的な怪物の本」なる怪書に襲われそうになっていたところ、「濡れ鍋」に大親友のロン・ウィーズリー(ルパート・グリント)とハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン)が訪れ、ロンのペットであるネズミのスキャバーズとハーマイオニーの飼い猫クルックシャンクスの自慢をしあっていたのである。
ロンは夏休み中に一家でエジプト旅行していたことをハリーに話していたところ、ロンの父アーサー(マーク・ウィリアムズ)はハリーを呼び寄せ、脱獄したシリウスはハリーの宿敵ヴォルデモート卿の僕でありハリーの命を狙っていると警告したのだった。
吸魂鬼ディメンター
ホグワーツ行きの特急列車に乗ったハリー、ロン、ハーマイオニーは、客席で眠ったままの魔法使いリーマス・ルーピン(デヴィッド・シューリス)と同じ客室に座ったのだ。
雨の湖畔へと差し掛かった列車は突然橋の上で停車してしまい、車内の照明も消え、外の気温も急激に冷えてしまったのである。
やがて車内に黒ずくめの怪物が侵入、ハリーの魂を吸い取ろうとしたのだった。
ハリーは辛くも目を覚ましたルーピンに助けられて事なきを得た。
ルーピンいわく、怪物の正体はアズカバンの看守である“ディメンター(吸魂鬼)”であり、シリウスを探してやってきたのだろうということだった。
ホグワーツの新年度
3年生に進級したハリー、ロン、ハーマイオニーは、アルバス・ダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)主催の歓迎式に出席したのだ。
タンブルドアは、2年続けて空席となった“闇の魔術に対する防御術”の新任教師としてルーピンが、そして“魔法生物飼育学”の新任教師にはハリーたちの心強い理解者ルビウス・ハグリッド(ロビー・コルトレーン)が就任したことを発表したのである。
しかし、ダンブルドアは残念な知らせとして、魔法省の要請により、シリウスが逮捕されるまではディメンターがホグワーツの警備を担うことも併せて発表したのだった。
ディメンターは凶暴な性格のため、ダンブルドアは全校生徒に決して危害を加える口実を与えぬよう警告したのだ。
ダンブルドアは全校生徒の幸福を願い、ホグワーツの新年度が幕を開けたのである。
3年生の授業
ハリーたち3年生は、手始めに占い学の教授シビル・トレローニー(エマ・トンプソン)の授業を受けることになった。
トレローニーは二人一組で互いのティーカップの茶葉の模様を見る“紅茶占い”をさせるが、占いの結果、ハリーには大凶と死をもたらすとされる巨大な亡霊犬“グリム”の相が浮かび上がったのだった。
ハリーやロンは、グリムとシリウスとの間には何か因果関係があるのではと睨むが、ハーマイオニーは怪しげな占い学よりも古代ルーン文字の授業の方が楽しいと意にも介さなかったのだ。
続いてはハグリッドの野外授業だが、ハリーとは犬猿の仲のドラコ・マルフォイ(トム・フェルトン)と仲間たちはハグリッドや彼を教師に任命したダンブルドアをバカにしたのである。
それでもハグリッドは鳥と馬が合わさったような誇り高き生物“ヒッポグリフ”のバックビークを紹介、礼を尽くさねば命の保証はないと前もって忠告したのだった。
ハリーはハグリッドの助言を得ながら、礼を尽くしてバックビークに認められ、その背に乗って自由自在に空を飛ぶことができたのだ。
ところが、ドラコはバックビークをバカにした態度を取って怒りを買い、襲われて怪我を負ってしまったのである。
授業は中断されて自習時間となり、ハリーたちは掠り傷で済んだドラコの大袈裟ぶりを嗤う一方、ドラコの父ルシウスが激怒しているという噂を聞き付けたのだった。
そんな時、ホグワーツの近くのダフタウンでシリウスが目撃されたとの報がもたらされたのだ。
続いてはルーピンによる、“まね妖怪ボガート”を使った授業が始まった。
ボガートは相手の最も恐れるものに変身することから、ルーピンは対処法として“笑い”が重要であることを生徒たちに伝授したのである。
まず、ボガートはハリーとロンのルームメイトであるネビル・ロングボトム(マシュー・ルイス)が最も恐れる教師セブルス・スネイプ(アラン・リックマン)の姿に変身するが、ルーピンのアドバイスでネビルはスネイプが祖母の服を着た姿を想像してみたところボカートはその通りに変身、あまりの滑稽さに生徒たちは大笑いしたのだった。
ところが、ハリーの番になると、ボガートはディメンターに変身してしまい、怖気づいてしまったハリーの代わりにルーピンが対処して授業はそのままお開きとなったのだ。
シリウスの影
生徒たちは教師ミネルバ・マクゴナガル(マギー・スミス)の引率により魔法の村“ホグズミード”へ行くことになった。
しかし、村に行くには親または保護者のサインが記された許可証が必要であり、家出したために叔父バーノン(リチャード・グリフィス)からサインを貰い損ねたハリーは行くことができず、寂しげにロンやハーマイオニーらを見送るしかなかったのである。
ホグワーツに居残ることになったハリーはルーピンに相談しに行き、先日の授業で自分はボガートがディメンターではなくヴォルデモート卿に変身するものと思っていたことを打ち明けたのだった。
それを聞いたルーピンは、「君が最も恐れているのは“恐怖”そのものなのだろう」と語り、ディメンターは相手の最悪な記憶を呼び覚ます力があると忠告したのだ。
ルーピンはハリーの両親とは知り合いだったことを明かし、ハリーの目は亡き母に似ていると言ってくれたのである。
両親の記憶がないハリーに、ルーピンはハリーの母は類まれなる魔法の才能がある一方、ハリーの父はトラブルメーカーだったことを明かし、ハリーは両親の良い部分を引き継いでいると語るのだった。
生徒たちがホグズミードから戻って来たその時、寮の入り口にある“太った婦人”(ドーン・フレンチ)の絵が何者かによって破かれており、別の絵に逃れていた婦人の証言からダンブルドアはシリウスの犯行と断定、生徒たちを大広間に避難させると管理人アーガス・フィルチ(デイビッド・ブラッドリー)に校内の警備体制を強化するよう命じたのだ。
しかし、校内の隅々まで捜索してもシリウスは発見されず、スネイプは校内に内通者がいる可能性を示唆したが、ダンブルドアはそれを否定したうえで生徒たちを一時帰宅させることもあり得るとの考えを示したのである。
ハリーは寝たフリをして二人の会話を盗み聞きするのだった。
ルーピンはなぜか授業に現れないことが度々あり、その度にスネイプが代理を務めていたのだ。
スネイプはルーピンの行動については明かせないとし、そのまま“ウェアウルフ(狼人間)”についての授業を始めたのである。
翌日はクィディッチの寮対抗戦であり、ドラコはハリーに挑発の手紙を投げ込んだのだった。
嵐のクィディッチ
クィディッチの試合は吹き荒れる雷雨のなか強行され、ハリーはシーカーとして激戦を繰り広げていたが、突然上空からディメンターが襲い掛かり、戦意を喪失したハリーは箒から転落してしまったのだ。
ダンブルドアの魔法により助けられたハリーは、愛用の箒が“暴れ柳”に落ちて粉々に破壊されたことを知ったのである。
ハリーはルーピンに、なぜ自分だけがディメンターの影響を受けるのか質問してみると、ルーピンは過去に両親を殺されたハリーの重く暗い過去に興味があるのだろうと応えるのだった。
ディメンターの恐怖を克服する方法を教えてほしいと頼むハリーに、ルーピンは休暇が終わったら教えると約束したのだ。
衝撃の真相
冬になり、ハリーはまたしてもホグズミードに向かう仲間たちを苦虫を嚙み潰したように見送っていた。
そんなハリーに、ロンの双子の兄であるフレッド(ジェームズ・フェルプス)とジョージ(オリバー・フェルプス)が助け舟を出し、ホグワーツの詳細な見取り図が記された“忍びの地図”を託したのである。
忍びの地図はホグワーツにいる人々(もちろんダンブルドアも)の動向が一目で把握できる優れものであり、兄弟はフィルチの書斎からくすねたのだというのだった。
ハリーは兄弟のアドバイスにより、透明マントを羽織るとホグワーツにある7つの抜け道のひとつ“隻眼の魔女の道”を潜り抜けていったのだ。
ホグズミードでは、二人きりになったロンとハーマイオニーの前にドラコ一味が現れて狼藉を働こうとしていたが、追い付いたハリーがドラコらに魔法をかけて撃退、ロンとハーマイオニーを救ったのである。
マダム・ロスメルタ(ジュリー・クリスティ)が経営するパブ「三本の箒」にファッジが訪れ、この村にシリウスが潜伏していること、そしてなぜかハリーが関与していることをロスメルタに語ったのだった。
パブは未成年者お断りのためロンとハーマイオニーは入れず、ハリーは単身透明マントで姿を消しながらパブの中に潜入していったのだ。
パブの個室では、ファッジ・マクゴナガル・ロスメルタの三人が、ハリーにとって耳を疑う内容の話をしていたところだった。
ハリーの両親は亡くなる数年前から命を狙われていることに気付き、ごく限られた人間しか知らない場所に身を隠していたのだ。
しかし、あのシリウスがヴォルデモート卿に両親の潜伏場所を教え、更には両親の友人だったピーター・ペティグリュー(ティモシー・スポール)までも殺したのだという。
そしてマクゴナガルは、何とシリウスがハリーの後見人であり、今なおそれは有効であるという発言をしたのである。
あまりの衝撃にパブを飛び出したハリーはロンとハーマイオニーに、シリウスは両親の親友でありながら裏切ったことを告げると、シリウスを倒して両親の仇を討つという悲壮な決意を語るのだった。
守護霊“パトローナム”の呪文
春が近づいた頃、ハリーはルーピンから非常に高度な魔法“守護霊(パトローナム)の呪文”の手解きを受けていた。
この呪文を使いこなすためには自身が今までの人生で一番幸せだった思い出を思い出す必要があり、両親と過ごした日々こそが最良の思い出だと悟ったハリーは見事に呪文を成功させたのである。
そんなある日、スキャバーズの姿が見えなくなり、ロンはクルックシャンクスに食われたのではないかと疑い、ハーマイオニーの怒りを買ってしまったのだった。
バックビークがドラコを傷つけた件で聴聞会に呼ばれたハグリッドは、ハリーたちに結果を知らせたのだ。
ハグリッドは教師を解任されずに済んだのだが、バックビークはルシウスの強い要求により処刑されることが決まってしまったのである。
その夜、忍びの地図を眺めていたハリーは、死んだはずの“ピーター・ペティグリュー”がホグワーツにいるとの地図の情報に目を疑い、真相を探るために夜の校内を探して回ったが、手掛かりを掴むどころかスネイプに見つかってしまったのだった。
地図をただの羊皮紙に変えてやり過ごそうとしたハリーの前にルーピンが現れ、彼の執り成しによりハリーは難を逃れたが、忍びの地図はシリウスに渡すわけにはいかないとしてルーピンに没収されてしまったのだ。
しかし、ルーピンもピーターの存在が地図に載ったことに驚きの表情を見せたのである。
シリウス現る
ハーマイオニーは占いの授業を放り出して教室から去っていった。
ロンはハリーに、どうも最近ハーマイオニーの様子がおかしいとぼやくのだが、彼女が落としていった水晶玉を教室に戻そうとしたハリーはそこにシリウスの姿が映り込んでいるのを目の当たりにしたのだった。
教室に現れたトレローニーは、この日の夜にシリウスがハリーの前に現れると予言したのだ。
バックビークが処刑される日、ハーマイオニーはからかいに来たドラコを魔法で追い払い、ハリーやロンと共にハグリッドの小屋へと向かったのである。
ハリーはバックビークを逃がすよう懇願するが、ハグリッドは自分を教師にしてくれたダンブルドアに迷惑はかけたくないと拒むのだった。
ハグリッドは密かに匿っていたスキャバーズをロンに引き渡したところで、ファッジが処刑人を連れてやって来たため、ハグリッドはハリーたちを裏から逃がしたのだ。
ハリーたち三人は高台からバックビークの処刑を見届けた直後、スキャバーズはロンの指を噛んで逃げ出してしまったのである。
その時、ハリーたちの前に黒い犬が現れ、ロンとスキャバーズを引き摺って暴れ柳の根元に連れ去ってしまったのだった。
ハリーとハーマイオニーは暴れ柳の攻撃を受けながらも何とか根元に滑り込み、その先の洞窟を進むと“叫びの屋敷”という場所に辿り着いたのだ。
ハリーとハーマイオニーはロンやスキュバーズを助け出したところ、黒い犬は変身を解いて人間の姿になっていた。
何と犬の正体はあのシリウスだったのである。
裏切り者の正体
ハリーはシリウスに掴みかかり、決着をつけようと杖を突きつけたところ、その場にルーピンが現れて割って入ると、シリウスとの再会を喜んだのだった。
驚くハーマイオニーはルーピンの正体がウェアウルフであることを見破り、ルーピンはそれを認めたうえで衝撃の真実を明かしたのだ。
シリウスが狙っていたのはハリーの命ではなく、死んだはずのピーター・ペティグリューだったのである。
そこにスネイプが現れ、シリウスを捕らえようとしたが、ハリーは魔法でスネイプを気絶させ、ルーピンとシリウスに話の続きをするよう迫るのだった。
シリウスは忍びの地図の情報に間違いはなかったことを伝え、ロンの手元にいるスキャバーズこそが死を偽装してネズミに変身していたピーターであることを明かしたのだ。
遂に正体を明かしたピーターは、自分はヴォルデモート卿と通じており、ハリーの両親の居場所を告げたのは自分であることを白状、ハリーたちはピーターを捕らえてディメンターに引き渡すことにしたのである。
満月の夜
誤解が解けてハリーと和解を果たしたシリウスは、自分の無実が証明されたら意地悪なダーズリー家の代わりにハリーを引き取りたいと言い出したその時、雲の切れ間から満月が姿を覗かせ、それを見たルーピンは狼に変身してしまったのだった。
ピーターはその隙を突き、ネズミに変身して逃亡していった。
スネイプが割って入るなか、シリウスはルーピンを止めるため犬に変身するが、突然ルーピンは逃げ出してしまい、重傷を負ったシリウスはディメンターの大群に取り囲まれてしまったのだ。
ハリーはシリウスを救うため守護霊の呪文を使ったが多勢に無勢で追い詰められてしまった。
その時、光り輝く鹿のような生物が現れ、眩い光を放ってディメンターたちを追い払ったのである。
ハリーとシリウスはそのまま気を失ってしまったのだった。
逆転時計
病室で目を覚ましたハリーはハーマイオニーに、あの光の生物に父の面影を見たことを話した。
ところが、シリウスはディメンターに捕らえられてしまっており、今にも魂を吸い取るという極刑“吸魂鬼の接吻”を執行されそうになっているというのだ。
ハリー、ロン、ハーマイオニーはダンブルドアにシリウスの無実と真犯人はピーターであることを伝えると、ダンブルドアは魔法省の人間は子供の言うことを聞かないだろうとしながらも「時間とは不思議なものじゃ。それは強力なものであり、悪戯に扱えば危険を伴うであろう」とヒントを与え、シリウスは“闇の塔”の最上階の独房に収監されていることを教えてくれたのである。
ハーマイオニーはマクゴナガルから貰ったという、時間を巻き戻すことができる“逆転時計”を使い、ハリーを連れてバックビークが処刑される直前まで遡ったのだった。
ハグリッドの小屋に近づいたハリーとハーマイオニーは、ハグリッドに逃がした容疑がかからぬようギリギリのタイミングでバックビークを救い出し、暴れ柳の見える位置で時が来るのを待つことにしたのだ。
その間、ハリーは改めて何者かがディメンターを追い払った話をすると、ハーマイオニーはそれは守護霊であり、本当に実力のある魔法使いにしか召喚することのできないものだというのである。
ハーマイオニーは叫び声をあげて狼となったルーピンをシリウスから遠ざけ、バックビークはルーピンに襲われそうになったハリーとハーマイオニーを助けてくれたのだった。
やがてハリーとシリウスはディメンターに襲われ始め、ハリーは亡き父が守護霊を呼び出してくれるものだと待ち構えていたが、ハーマイオニーから来ないと告げられると、自ら守護霊の呪文を発動してハリーとシリウスの危機を救ったのだ。
ハリーは自分を助けてくれたのは父ではなく自分自身だったことに気付き、ハーマイオニーと共にバックビークの背に乗って闇の塔に飛び、シリウスを救出したのである。
シリウスは二人に礼を言うと、ハリーの両親はいつでもハリーの心の中で見守っていることを伝え、バックビークに乗って飛び立っていったのだった。
また会う日まで
ハリーはルーピンの元を訪ねると、正体がバレてしまった彼は既に学校に辞意を伝えており、荷支度をしている最中だった。
ピーターこそ逃がしてしまったものの、ルーピンは無実のシリウスを救ったハリーを称え、忍びの地図を返すと再会を誓ってホグワーツを後にしたのだ。
間もなく、ハリー宛に世界最速の箒“ファイアボルト”が届けられ、バックビークの羽が同封されていたことから、ハリーはシリウスが贈ってくれたものだと気付いたのである。
ハリーは早速ホグワーツ上空を驚異のスピードで飛び回ってみるのだった。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の感想とまとめ
映画シリーズの衝撃的なスタートから3年、第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』ではまだあどけなさや初々しさのあった主演トリオのダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソンを始めとする子役たちも、日本でいうところの小学生から中学生に成長したこともあり、演技も表現力も見違えたかのようにレベルアップしており、これから本格的に思春期に差し掛かる年齢のホグワーツの生徒たちを自信たっぷりに演じあげています。
本作では、冒頭でいつも意地悪な叔父叔母一家にいじめられてきたハリーが(本来ならば使用を禁止されている)魔法を使って懲らしめる、ある意味ショートコント的な場面がありましたが、今回はあまりの非道ぶりに遂にブチ切れたハリーが感情を露にする場面があり、これから非常に過酷な道のりを歩むであろうハリーがひとつ皮剥けたかのような印象を受けました。そして、雪の降り積もる魔法の村ホグズミードにおいて、ロンとハーマイオニーが二人きりになる場面がありましたが(すぐにドラコに邪魔されましたが)、これも後々のシリーズに影響する伏線ともなっていますので次回作以降もチェックしてみてくださいね。
本作および次回作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』からは、前2作で描かれてきた児童文学的な初々しい学校生活の描写は鳴りを潜めていき、これから先ハリーにとって最大の脅威となる“名前を言ってはいけないあの人”の復活を期に、一気にダークでシリアスな大人向けの路線へと進化していきますので、登場人物(および演じる俳優・子役たち)たちの成長と併せてお楽しみいただければ幸いです。
本作では、前2作でホグワーツ校長ダンブルドア役を演じてきたリチャード・ハリスの訃報を受け、数多くの候補者から選ばれたマイケル・ガンボンが本作を含む残り全作品でダンブルドアを演じることになりましたので、ファンの中にはダンブルドア=マイケル・ガンボンのイメージを持たれている方も多いことでしょう。その他にも、ハリーの後々の考え方に影響を与えたリーマス・ルーピン役でデイビッド・シューリスが、ハリーの後見人にして心強い味方となるシリウス・ブラック役でゲイリー・オールドマンがシリーズ初参戦を果たし、物語に深みを与えています。それでは、次回はいよいよ“あの人”が衝撃の復活を果たす『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』にご期待ください。
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