『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン新作『移動都市/モータル・エンジン』は、遥か未来の荒廃した地球が舞台です。人類は駆動車輪で移動する都市へ住居を移して集団生活を営みますが、残り少ない資源を奪い合う弱肉強食の世界。製作費100億ドルを掛け、『ロード・オブ・ザ・リング』の制作者が描くSFアドベンチャー作品です。
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『移動都市/モータル・エンジン』の作品情報
タイトル:移動都市/モータル・エンジン
原題:Mortal Engines
監督:クリスチャン・リヴァース
脚本:ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン
原作:『移動都市』フィリップ・リーヴ
製作:ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ、ゼイン・ワイナー、アマンダ・ウォーカー、デボラ・フォート
公開日:2018年12月14日(アメリカ)、2019年3月1日(日本)
出演者:ヘラ・ヒルマー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ロバート・シーハン、ジハエ
『移動都市/モータル・エンジン』』概要
本作は、製作と脚本を兼務するピーター・ジャクソンが10年前に読んだ原作『移動都市』を基に実写映画化されました。監督を務めたのは、ジャクソンの作品で絵コンテを担当し、『キング・コング』でアカデミー賞視覚効果賞を受賞しているクリスチャン・リヴァースです。主人公ヘスターを作り上げたのは、フィリッパ・ボウエンとフラン・ウォルシュ。
キャスト
主人公を演じるのは、初めて主役の座を手にしたアイスラン人俳優のヘラ・ヒルマー。トム役には、『ジオ・ストーム』のロバート・シーハンが抜擢。悪役サディアスに扮するのは、『マトリックス』のエージェント・スミスでお馴染みのヒューゴ・ウィーヴィングです。
『移動都市/モータル・エンジン』あらすじ・ネタバレ
未来の地球は人類滅亡の危機に晒されていた。人々は結集しそれぞれ移動都市へ居住する。しかし、弱い都市は強い者達に飲み込まれる世の中であった。
母の仇サディアス・ヴァレンタイン
鉱山で生計を立てる移動都市は、襲ってきた巨大移動都市・ロンドンに拿捕され財産一切を奪われる。サディアス・ヴァレンタインは、鉱山都市の住民を前に、尊厳のある扱いをすると約束した。
鉱山都市の人々に紛れ、ヘスターがサディアスを睨みつけている。忍ばせていたナイフを握りしめたヘスターは、サディアスに近づいて行く。気づいたトムは急いで止めに入るが、ヘスターは母・パンドラの仇だと言い群衆の前でサディアスをナイフで刺した。
名前を聞いて驚愕の表情を浮かべるサディアス。駆けつけたトムはヘスターの腕を掴むが、彼女の顔に深く刻まれた傷跡を見て怯んだ。その隙にヘスターは走り出す。トムや警官隊が後を追い、一連の騒ぎを見ていたサディアスの娘・キャサリンもその後を追った。
そして、軽傷で済んだサディアスもまたヘスターの後を追いかける。行き止まりで追い詰められたヘスターは、精製後の鉄屑を落とす巨大な樋へ飛び降りようとフェンスを越えた。
追いついたトムにサディアスが自分の母親を殺害したと言い残し、ヘスターは樋の底へジャンプした。サディアスが駆けつけ、トムはヘスターから聞いた事を話す。すると突然サディアスは、トムを樋へ突き落としてしまう。
その光景をヴェビスが暗闇でじっと見つめていた。ヘスターとトムはロンドンの外へ投げ出され生き延びた。彷徨う2人だが、通りかかった小さな移動都市へ乗せてもらう事になった。お茶を振舞われ暫し休養を取る。
ヘスターとトム
ヘスターは、8才だった時に起きた事件の全貌を話し始めた。昔母とサディアスは恋人であった。考古学者だったパンドラは危険な埋蔵物を掘り当て、無理矢理奪い取ろうとしたサディアスに殺された。
その現場を見ていたヘスターも酷く切りつけられたが命を取り留めたのだった。トムは、保護してくれたと思った小型移動都市の所有者に部屋に監禁された事に気づく。騙されて奴隷市場へ連れてこられたヘスターとトムは、オークションに掛けられた。
バイヤーを装ったアナは、売り飛ばされそうになった2人を救助するが。奴隷市場の男達と乱闘になった。ヘスターとトムは必死にその場から逃げ出す。
命の恩人である人造人間
そこへサディアスがヘスターを抹殺するために放った人造人間シュライクが現れる。2人は捕まりそうになるが、危ない所でアナの飛行船で救われた。パンドラと親しかったアナは、幼いヘスターを心配しずっと探していたのだった。
サディアスから逃げ出したヘスターは、力尽き倒れていた所を助け出され、その後の幼少期を面倒見てくれていたのは、シュライクであった事をトムに話す。シュライクは、感情が無い方が辛い思い出に苛まれる事は無いとヘスターに話す。
そして、母を殺され苦しんでいたヘスターは、シュライクの様に心を持たない人造人間になろうと一度は決めたのだった。
一方、ロンドンでは、唯一の目撃者ヴェビスから父親がトムを突き飛ばした事を聞いたキャサリン。ヴェビスは、都市の塔に隠された秘密があると話し、2人は探索に乗り出していた。
アナは飛行都市・エアヘブンにヘスターとトムを連れて来る。トムは、以前ロンドンへ運び込まれたコンピューターの作動装置のエンブレムを思い出し、パンドラが見つけたのはエネルギー兵器を制御できるシステムだった事が判明。
ロンドンの塔へ忍び込んでいたキャサリンとヴェビスは、完成したエネルギー兵器を閉鎖しようとした市長をサディアスが射殺するのを目撃。自分の野心のために殺人を犯す父に対し、キャサリンは抵抗する事を決意するのだった。
巨大都市の動向を監視していたエアヘブンは、ロンドンが東へ舵を切り、シールド・ウォールに対して攻撃を計画していると確信する。そこへ、ヘスターを追ったシュライクが襲撃して来た。大勢の市民は一丸となりシュライクと闘う。
どこまでもヘスターを追いかけて来るシュライクの前にトムが立ち塞がった。首を掴みトムを軽々と持ち上げたシュライクに、ヘスターは涙を流してトムを殺さないように懇願する。シュライクはヘスターのトムに対する特別な感情に気づく。
ヘスターと過ごした日々が懐かしいと呟き、致命傷を負っていたシュライクは、ヘスターが持っていたパンドラのネックレスを手渡し、トムを殺さずに息絶えた。ヘスターとトムは、アナ達と一緒に飛行船でシールド・ウォールへ向かう。
エネルギー兵器・メドゥーサ
サディアスはロンドン市民に演説を行い、新時代の幕開けだと語った。資源が枯渇し始めたこれまでの土地から新たな猟場へ移動する事を伝えると、市民は歓声を上げた。サディアスは、完成した兵器・メドゥーサで攻撃を仕掛ける計画だった。
シールド・ウォールの背後には反移動都市を唱える市長を先頭に、巨大な帝国がそびえ立つ。アナは、ロンドンへ先制攻撃をするべきだと進言した。トムは、市民が犠牲になると異議を申し立てるが、市長は攻撃を認可。一斉に砲撃準備が始まる。
同じ頃、ロンドンの塔のドームが開きメドゥーサが姿を表そうとしていた。シールド・ウォールから攻撃飛行船がロンドンの上空へスクランブル飛行して向かう。しかし、メドゥーサの凄まじいエネルギー砲弾を受け、シールド・ウォールは大打撃を被った。
壁の中心部分にぽっかりと大きな穴が開いた。デッキに出てこの光景を見ていたロンドン市民は、拍手して歓喜に沸く。サディアスは更なる攻撃を指示するが、メドゥーサは大量のエネルギーを使用するため、充電が必要であった。
亡き母が娘に託したもの
ヘスターは、シュライクから渡された母の形見であるロケットペンダントを開けてみる。それは、メドゥーサを停止できるプログラムが組み込まれたフラッシュドライブであった。2人は、メドゥーサを止めるため、アナ達と共にロンドンへ向かう。
都市に近づいた飛行船は激しい攻撃を受け、大勢の犠牲を伴うが、アナの飛行船は辛くも着陸。ヘスターが塔を目指し都市へ潜り込む。警備兵に狙われるヘスターだが、塔を旋回しながらアナが援護する。
トムに操縦を任せたアナは、ヘスターを守れと言い残し飛行船を降りてヘスターの居る塔へ向かった。サディアスの指示でメドゥーサの攻撃準備が整う。高台に降り立ったアナが銃撃し、メドゥーサのシステムはオーバーライドを余儀なくさせられる。
サディアスとアナの一騎打ちが始まり、その隙にヘスターは幼い頃母が発見したコンピューターを見つけた。ヘスターが形見のフラッシュドライブを挿入した。メドゥーサのシステム画面にパスワードが表示され、ヘスターは番号を入力。
アナはお腹を刺されるが、サディアスをがっちり掴んで放そうとしない。サディアスは、勝負は決まった、諦めろとアナに言う。メドゥーサのエネルギー砲弾発射まで5秒を切り塔のドームが開いた所でシステムが停止した。
目をむいたサディアスの視線の先には、不敵な笑みを浮かべたヘスターが立っている。アナは力を振り絞りヘスターに脱出せよと叫ぶ。ヘスターが走り去る様子を見たアナは、これで勝負は決まったとサディアスに言い、掴んだ手を話し高台から落下した。
敗北感を抱きながら塔を出たサディアスの目に前にキャサリンが立っていた。メドゥーサの力を手に入れるためにこれまで何人の命を奪ったのかと責める娘に対し、シールド・ウォールの壁は崩れる運命にあり2人で脱出しようとサディアスは言う。
父の制止を無視したキャサリンは、ロンドンへ通信を呼びかけるトムとコンタクトを取った。ロンドンがシールド・ウォールに突っ込むつもりだとキャサリンは伝えた。システム全体が停止したため、ロンドンのエンジンは止められない。
キャサリンはトムの指示に従い、エンジン室の防壁扉を開けた。トムは飛行船のミサイルボタンを押しエンジンを撃った。1人小型飛行船で逃げ出そうとしたサディアスの前に、ヘスターが銃を持って立ちはだかった。
ヘスターの首を絞めようとするサディアスの頬目掛けて、持っていたナイフで切りつけるヘスター。そこへ飛行船を操縦するトムが近づき、ヘスターは飛び乗った。トムは、サディアスが乗る飛行船目掛けてミサイルを発射した。
サディアスは必死に操縦桿を動かすが、炎に包まれた飛行船は地面に激突し、コックピットを分離して爆発した。サディアスの眼前には、今にも止まりそうなロンドンの巨大な駆動車輪が迫りコックピットを踏み潰して停車した。
ボーダーレスな世界へ
夜が明け、ロンドン市民はキャサリンを先頭にメドゥーサのエネルギー砲弾で朽ちたシールド・ウォールを登っていた。そこには市長と一緒に反移動都市の住民達が立ちキャサリン達を見下ろしている。怯えるロンドン市民。
銃を構えた部隊を制止した市長は、ロンドン市民へ手を差し伸べるのだった。飛行船を自動操縦に切り替えたトムは、デッキで地上を眺めるヘスターの所へやって来る。
これから何処へ行くのかと尋ねるヘスターに、気持ちの赴くまま世界を旅するとトムは答えた。ヘスターは、自分も一緒に行くと微笑んだ。
『移動都市/モータル・エンジン』を観た感想
高額の製作費が投入されたハリウッド映画では、殆どの場合男性俳優が主役です。しかし、本作では幼い頃に母親を目の前で殺害された女性ヘスター・ショウを軸に物語が進みます。
そして、ヘスターを救出し、サディアスと戦闘を繰り広げるのは韓国人女性歌手のジハエが扮するアナ、と女性が活躍する作品です。舞台は未来とは言え、現代社会における国家間の資源の争奪戦とかけ離れた世界ではありません。
特撮が駆使された映画ですが、巨大都市やシールド・ウォールを作り上げ、CGでは得られない迫力を感じることが出来ます。風景も美しく、壮大な未来世界を大胆なスケールで描写しています。
ハリウッド映画ではあまり見られない事ですが、登場人物を演じる俳優達は様々な国からキャストされています。ヘスターを見つけるのに大変苦労したと語るのは、監督のクリスチャン・リヴァース。
製作のピーター・ジャクソンは、妥協せず自分の思い描くヘスター像に完璧に合う役者を見つけるまで探し続けるようアドバイスされたリヴァースは、何100人とオーディションした後、やっとアイスランドでヘラ・ヒルマーを見つけます。
本作を製作するに当たり、長編映画を撮った経験の無かったリヴァースに監督を打診したのはジャクソン。100億ドルの製作費に対し、失敗できない重圧で一瞬恐怖を感じたとリヴァースは話しています。
2人の付き合いは長く、1988年公開されたジャクソンの自主製作映画『バッド・テイスト』を観た当時15才だったリヴァースはファンレターを書き絵が得意な事をアピールし、以来連絡を取り合う仲となりました。
ある日連絡を貰いジャクソンが監督と脚本を兼務した『ブレインデッド』で絵コンテを書く仕事に誘われて以降一緒に映画制作を続けます。ジャクソンを見ていて監督業に目覚めたリヴァースは短編映画を経て本作の監督業を得ました。
ジャクソンは、この物語に込めたメッセージとして、社会のプロパガンダを単純に信じるのではなく、疑いを持って自分で真実を見極めようとする気持ちを大切にしてほしいと明かします。
また、サディアスの様な人間より、人造人間シュライクのヘスターに対する思いの方がよっぽど純粋な愛情だと話すジャクソンは、顔に深い傷を持つヘスターを含め、傍目にどう映るかなど大切ではないと言う原作者の意図を説明しています。
サディアスがロンドン市民に約束する自分達にとって都合の良い明るい未来は、他の人々の生活が崩壊する事を意味しています。また、サディアス個人の野望を満足させるための行動であり、誰の為でも無い事が劇中で明らかになります。
権力を握るごく少数の人達によって数百万の人生が破壊されている現代。人間は結局同じ事を繰り返してしまう、とジャクソンがインタビューで言ったのは他を犠牲にして自らの富を得ようとする権力者に対する警鐘と言えます。
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