2009年に公開された話題作『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』から10 年、原作者スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作の後、続編として出版された第4弾『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』を実写映画化。これまで語られなかった天才ハッカー・リスベットの過去が明らかになると共に、世界の核へアクセスできるプログラムを巡る攻防が描かれます。
Contents
『蜘蛛の巣を払う女』の作品情報
タイトル:蜘蛛の巣を払う女
原題:The Girl in the Spider’s Web
監督:フェデ・アルバレス
脚本:フェデ・アルバレス、ジェイ・バス、スティーヴン・ナイト
原作:『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』ダビド・ラーゲルクランツ
製作:スコット・ルーディン、イーライ・ブッシュ、オーレ・ソンドベルイ、エイミー・パスカル
公開日:2018年11月9日(アメリカ)、2019年1月11日(日本)
出演者:クレア・フォイ、スベリル・クドナソン、シルヴィア・フークス、キース・スタンフィールド、スティーヴン・マーチャント、シヌーヴ・マコディ・ルンド
『蜘蛛の巣を払う女』概要
同名小説『蜘蛛の巣を払う女』を基にスティーヴン・ナイトが最初の草案を作成し、映画を制作するに当たり様々な方向性を模索。そして、本作の監督を務めたフェデ・アルバレスと作家のジェイ・バスが共同で脚本を執筆。自身が常に描きたいのは、家族と表に出ない秘密だと語るアルバレス。リスベットの幼少期を明かします。
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キャスト
『ザ・クラウン』でゴールデン・グローブ賞及びエミー賞で主演女優賞を獲得したクレア・フォイが主人公のリスベットを演じます。殆どを欧州の俳優達が占め、カミラに扮するのは『ブレードランナー2049』のシルヴィア・フークス。
『蜘蛛の巣を払う女』あらすじ・ネタバレ
幼いリスベットと妹のカミラがチェスをして遊んでいる。父親の秘書が2人を呼びに来た。廊下を歩く姉妹の前方を全身にタトゥを入れた裸の女性か歩いていた。父親はベッドに座り、一緒に遊ぼうと言いネクタイを緩めカミラを膝に抱く。
リスベットは、カミラの腕を引っ張り部屋から走って出て行く。別の部屋へ逃げ込むが、直ぐ父親が後から追って来た。怯えるリスベット。一緒に来なさい、と言う父親に従いカミラは隣へ行くが、リスベットはバルコニーへ続く扉を開けた。
吹雪が降る外は銀世界。フェンスの一角が朽ち果てた場所からリスベットは身を投げる。思わず走り寄ったカミラが見たのは、深く積もった雪の荒野を走り去るリスベットの姿だった。
恋人のソフィアと時間を過ごすリスベット。ソフィアはゴミ箱からリスベットとカミラの写真を拾って眺める。リスベットは3年前に自殺した妹だと言う。父親は反社会性人格者で、妹も同じだったとリスベットは淡々と話す。
そこへ仕事の電話が入る。依頼主は、NSAと委託契約していたプログラマーのボルダ―。
狙われた世界の核
翌日、幼い息子を連れたボルダ―と会ったリスベットは、アメリカ国家安全保障局(NSA)の依頼でボルダ―が作成したプログラムを取り返して欲しいと頼まれた。
ファイヤーウォールと名付けられたそのプログラムは、世界中の核にアクセスできるコードだった。ボルダ―は構築してしまったものの、あまりに危険過ぎるため良心の呵責に苛まれていた。翌日待ち合わせの約束をして散会する。
この様子を監視カメラにハッキングした謎の男がタブレットで見ていた。ボルダ―と別れたリスベットの後を一台の車両が尾行していた。
NSAのセキュリティ専門家・ニーダムは、何者かがシステムにハッキングしている事に気づく。急いで対処しようとするが、ファイヤーウォールのファイルが見る見るうちに盗まれていく。サーバーの電源を切ったが全ては遅かった。
システム内に残されたハッカーの足跡を辿り、様々な国のサーバーを介しスウェーデンのストックホルムが発信元であると分かる。ニーダムは荷物をまとめ、直ぐストックホルムへ発つ。
リスベットは移動したファイルを開こうとするが時間制限つきの暗号で守られていた。夜、家でお風呂へ入るリスベットは、マスクを被った謎の男に襲われる。
咄嗟に走り出すリスベットだが、発砲され肩を負傷。部屋へ逃げ込み銃を手にしたリスベットが戻ると、パソコンが消えており、爆弾が仕掛けてある事に気がつく。走って湯の張ったバスタブへ飛び込むリスベット。
ガスボンベが引火し爆発と共に凄まじい炎が一気に広いアパートを包む。リスベットは湯に潜り難を逃れた。監視カメラの映像を顔認識ソフトで解析するが、謎の男の身元は検知されなかった。
ミカエルに接触したリスベットは、ファイヤーウォールの事を話し、監視カメラに映った謎の男の身元を調べてくれと頼んだ。3年振りに会うリスベットの様子を訪ねるミカエルだが、それには答えずリスベットは姿を消す。
ストックホルムに到着したニーダムは、公安警察から署へ同行を求められた。副局長のガブリエルは過去に従軍したニーダムの経歴を読み上げ、渡航目的に警戒感を表す。旅行で訪れたとニーダムは誤魔化し、その場を後にした。
リスベットは、友人のハッカーであるプレイグを訪れる。撃たれた傷から弾を取り出すリスベット。プレイグは、リスベットが待ち合わせに現れなかったため、ボルダ―は盗まれたと思い込み、公安警察へ出向いた映像を見せた。
リスベットは、暗号化されたファイルを開けられるボルダ―を謎の男が狙うと確信した。公安警察はボルダ―を念のため隠れ家へ移すが、プレイグはその場所を突き止める。リスベットはその隠れ家へ訪れ、監視カメラを設置した。
ミカエルは、ラウンジに来たガブリエルにファイルを探すならリスベットではなく、この男を追えと謎の男が写った写真を見せた。そこへ、背中が大きく開いたドレスを着た若い女性が通り過ぎる。
ガブリエルは会話を切り上げ、その女性の後を着いて行く。その後、ミカエルは男のタトゥから犯罪組織スパイダーズの存在を知り、ロシアの権力者だったリスベットの父親と一緒に写真に写る側近が謎の男・ホルツァーだと突き止めた。
双子の姉妹・リスベットとカミラ
ホルツァーは、公安警察の隠れ家に潜むボルダ―を襲う。監視カメラをモニターしていたリスベットは直ぐにボルダ―の下へ急行。近接戦闘に発展するが、ホルツァーはボルダ―を殺し、オーガストが連れ去ってしまう。
後を追ったリスベットは仕掛けておいた監視カメラから車両番号を特定。ホルツァーに殺害された公安警察官を車から下ろして、GPSを起動させホルツァーの後を追った。
激しいカーチェイスの後、オーガストを奪還したリスベットの視線の先に、死んだ筈のカミラが立っていた。ボルダ―の殺害を伝えるニュースで、リスベットが指名手配された事を知ったニーダムが現場へやって来た。
しかし、NSAを警戒するガブリエルは、ニーダムに国外退去を命じ身柄を拘束。緊急時の隠れ家へ来たリスベットは、ファイルを開く方法をオーガストが知っていると分かる。母親の待つアメリカへ帰りたいと頼むオーガスト。
リスベットは一緒にオーガストとチェスをするが、あっさり負けてしまう。再戦まで持っている様に言い、オーガストに駒を1つ渡した。
一方、リスベットに呼び出されたミカエルは、父親の死後カミラが組織を継いだようだと報告した。リスベットは、妹が最悪の男だった父を崇拝していたと苦々しく話す。
背中に描かれたドラゴンタトゥーから出血しているのを見たミカエルは、ホッチキスで傷口を閉じた。歯を食いしばるリスベット。報道でニーダム拘束を見たリスベットは、母親の所へオーガストを安全に返すため接触を試みる。
敵の敵は味方
キャリーバッグを引いたリスベットは、空港へ来てわざとバッグを置いて行く。警備員が押収しセキュリティを通すと、スマホが探知された。バッグを開けスマホを手にした警備員は、その他多数の忘れ物スマホの山に放り投げた。
リスベットは自分のスマホを取り出し、警備室にあるスマホと同期させてシステムにハッキング。そして、設置された監視カメラの前に立ち自分の顔を認識させた。公安から指名手配されているリスベットの顔と一致し警報が鳴った。
配備されていた公安警察官達が直ちにリスベットを追い始める。慌ただしい動きに眉をひそめるニーダム。リスベットは足早に歩きながら遠隔操作で拘束室の扉を解除。勝手に扉が開いた隙にニーダムを逃げ出す。
リスベットは、アナウンス係のモニターに乗客のニーダムへゲート45迄至急来るようメッセージを表示。空港にその旨のアナウンスが流れ、ニーダムが向かうとゲート近くの灰皿の中でスマホが振動しているのが聞こえた。
スマホを手にしたニーダムに連絡を入れたリスベットは、オーガストに付き添って一緒に米国まで連れて行って欲しいと頼んだ。ニーダムは、政府職員である以上ファイヤーウォール無しでは帰国できないと言う。
しかし、ニーダムもまた公安から追われたため、言う通りにすると約束してリスベットの誘導で逃げ切るのだった。プレイグが迎えに来てニーダムは空港を後にした。
その頃、オーガストのスマホに父から電話が掛かってくる。思わず電話に出るオーガスト。ホルツァーは、オーガストが父を呼ぶ声を聞きながら、GPSで居場所を探知した。
カミラにオーガストをさらわれたリスベットは、プレイグのアパートへ来てパソコンを操作し航空マップを開く。1つの点が道に沿い点滅していた。
カミラ達と一緒に車に乗るオーガストのポケットに入っているチェスの駒が青く点滅していた。ニーダムは何処にオーガストを連れて行くのかと訊く。リスベットは家だと答えた。
16年後の姉妹
ミカエルは公安警察署を訪れ、ガブリエルに全貌を明かし協力を得た。幼い頃父や妹と暮らした家へやって来るリスベット。必死に飛び降りて逃げ出した日の事が走馬灯の様に蘇る。雪山を滑り降り、要塞のような家を臨んだ。
プレイグは少し離れた所にバンを止め、外に小型の衛星受信アンテナを設置しパソコンのシステムを起動。リスベットは地下から忍び込む。見張りをスタンガンで眠らせた後、発信機を仕掛けた。
プレイグのパソコン画面に3Dで家の構図が現れアップロードが開始。リスベットは手下達をかわしながらオーガストを探す。
一方、ガブリエルと一緒に同乗していたミカエルは、なぜスパイダーズがファイヤーウォールを入手したリスベットの住むアパートを知り得たのかと尋ねた。ガブリエルは知らないと白を切る。
その時、ミカエルは、ラウンジでガブリエルに会った時、若い女を追ったガブリエルを思い出した。側を通り過ぎた女の顔が蘇る。カミラだった。ミカエルは、公安警察こそがスパイダーズからファイヤーウォール買うバイヤーだと気付く。
問い詰めると、ガブリエルは、戦争好きなアメリカの手に渡るより、戦争へ加担しないスウェーデンが保管するべきだと開き直った。同じ頃、ガスマスクをしたカミラは、リスベットが幼い頃飛び降りたバルコニーに立ち鼻歌を口ずさむ。
催眠ガスが一帯を充満しリスベットは意識を失う。柱を蜘蛛が這っている。意識を取り戻したリスベットの目の前にオーガストが座らされていた。ファイルを開くようオーガストに話して欲しいとカミラはリスベットに頼む。
ホルツァーは、ガブリエルが連れて来たミカエルの命を奪うと毒を入れた注射器を見せてリスベットを脅す。自分を信じてファイルを開くようリスベットはオーガストに話す。オーガストは応じて暗号を解除した。
核兵器の所在を示す世界地図が表示。カミラは、スタンガンでリスベットを眠らせた。様子を見ていたガブリエルが直ぐに送金すると言うと、カミラはそんな必要は無いと答える。ガブリエルに同行した公安警察官をホルツァーが射殺。
カミラは大丈夫よと微笑んでガブリエルに近づくと。指の間に隠し持っていた鋭利な太針でガブリエルの頸動脈を突き刺した。見る見る生気を失うガブリエルに、売らない事にしたと言うカミラ。
リスベットが目覚めた途端、カミラはリスベットを包んだゴム製被覆から空気を一気に抜く。呼吸困難で苦しむリスベットの口の辺りを、カミラは太針で切り込みを入れた。
父親が死んだ時獣のような本性をやっと知ったと話すカミラは、自分を置いてきぼりにしたとリスベットを咎めた。そして、火の灯るキャンドルを傾けてゴム製被覆の切り込み部分に蝋を垂らし、リスベットに分かれを告げた。
プレイグは、受信した大邸宅が映るコンピューター画面で、オーガストとその背後に近づく男の姿を発見し、カーソルを男の頭に合わせる。鈍い音がして家の壁に穴が開く。オーガストに銃を向けていた男が倒れ込んだ。
家を見渡せる離れた丘の上で、ニーダムがスナイパーライフルを構えている。覗くスコープには、標的の四角いマークが表示されている。ニーダムは次々に引き金を引いて敵を射殺して行く。
ファイルが保存されたパソコンを掴んで逃げ出すカミラ。リスベットはゴム製被覆を破るとカミラの後を追った。扉の後ろに隠れていたオーガストは、自分を探しに来たホルツァーの足に毒の注射器を突き立てた。
怒りに燃えるリスベットは、ニーダムが射殺した男の銃を拾い上げた。ミカエルはオーガストを救出し、リスベットに行けと叫ぶ。家を抜け出たカミラは森林の中を歩いていた。
リスベットに追われ、カミラは山の絶壁まで来る。リスベットは銃を構えた手を下げ、あの日の事で自分を責めるのはお門違いだと言った。カミラは、なぜこの16年間多くの人を助けたのに自分の事は助けてくれなかったのかと尋ねた。
リスベットの目から涙が溢れ、戻れなかったと呟く。カミラがその理由を訊くと、カミラが父親を選んだからだとリスベットは答えた。カミラの頬を涙が流れる。持っていたパソコンを地面に落としたカミラは、崖から身を投げた。
絶壁まで辿り着いたニーダムが地面に落ちているパソコンを見つける。開いて見ると、全ファイル消去の表示。そして、これがボルダ―の望みだったので、とメッセージが残っていた。
空港へ迎えに来た母とオーガストは再会し抱きしめ合う。遠くからその光景を見つめるリスベット。ミカエルは、途中まで書いた『The Girl in the spider’s Web』と題した記事を消去した。リスベットは夜になって家に再び訪れ、火を放つ。
『蜘蛛の巣を払う女』を観た感想
これまでのミレニアムシリーズでリスベットが父親に虐待を受けていた事は示唆されており、大人になった主人公と父親との攻防が続編で描写されました。本作では、冒頭場面でリスベットの生い立ちを物語ります。
幼くして虐待を経験したリスベットは、怒りを抱えながらも信念のまま人生を生き、それが社会規範から逸脱しようと自分の正義を貫きます。
常識の枠内で生活する多くの一般市民が普段どこかで感じる不公平さや不正に対する憤りを許さないのが弱者の味方・リスベットであり、デジタル社会のシステムを巧みに操り権力に挑む姿は痛快です。
これで体格の良い男性を瞬時に倒せる戦闘能力を備えていると、逆に白けてしまいますが、リスベットは小柄。頭脳とハッカーとしての技術で相手を負かして行くからこそカッコイイのです。
2009年公開の『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で最初に登場したノオミ・ラパス演じるリスベットは衝撃的でした。世界中で大反響を得て数々の賞を受賞。ラパスはその後次々にハリウッド映画へ出演しています。
本作でリスベットに扮するのは、イギリス人俳優のクレア・フォイ。これほど幅の広い演技力を持つ女優は見たことが無い程圧巻です。『ザ・クラウン』では格式と伝統を重んじるエリザベス女王。
『ファースト・マン』では宇宙飛行士の夫を静かに見守る芯の強いアメリカ人女性。そして、本作の天才ハッカーであるスウェーデン人のリスベット、と全く異なる女性達を見事に演じ分けています。
驚くのは、『ファースト・マン』撮影終了後、フォイはすぐにドイツへ行き『蜘蛛の巣を払う女』の撮影準備に入っていることです。さすがに本作の後は5ヶ月間の休養を取ったとインタビューで話しています。
監督は、これが3作目となるフェデ・アルバレス。全作品で脚本も執筆するアルバレスは罪の意識をテーマにしています。
誰もが覗きたくない扉を心に持っているけれど、開けてみれば思っていたよりは悪くなく、直視すればより良い結果が待っていると言うメッセージを込めたと語ります。
また、リスベットはヒーローではなく、自警の要素がより強いと語るアルバレス。その違いとして、自分の行動が支持をえられるかどうか等リスベットは全く気にせず、周囲に好かれようとも思っていない事だと定義しています。
リスベットは、人に感謝して欲しいと言う自己愛が無いからこそ、絶大な人気を得ているキャラクターなのかもしれません。
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