ショートフィルム『Nani(原題)』で知られる新鋭ジャスティン・ティッピングの初めての長編作品となる今作品。監督の実体験を元に作られストリートカルチャー、ヒップホップ、スニーカーなど海外、特にLAカルチャーに敏感な方は見逃せない映画です。
今回はそんなLAカルチャーの裏側まで描いて話題となっている作品、「キックス」をご紹介します。
Contents
キックスの作品情報
タイトル:キックス
原題:Kicks
監督/脚本:ジャスティン・ティッピング
脚本:ジョシュア・バーン=ゴールデン
公開日:2018年12月1日(日本)2016年9月9日(アメリカ)
出演者:ジャキング・ギロリー/クリストファー・ジョーダン・ウォーレス/クリストファー・マイヤー/コフィ・シリボエ/マハーシャラ・アリ他
キックスのキャスト
主人公ブランドン役を演じるジャキング・ギロリーはこの映画を演じた時は若干の14歳。
俳優業の他にラッパーとしても活躍しており、また他にはジュニアオリンピックで800m走と1500m走で金メダルも獲得している多才な才能の持ち主。
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映画「キックス」のフル動画を無料視聴する!ジャキング・ギロリーの演技に注目!キックスのあらすじとネタバレ
スペースシャトルに乗って誰もバカにしなくて襲われることもない静かな場所に行ってみたい。という冒頭から始まるこの物語。
アメリカはカリフォルニア州のリッチモンドという街に住んでいるブランドン。彼は小柄でまだ幼さが残っているのと、あまり裕福ではなくいつもボロボロのスニーカーを履いていることからあまり女子にもモテることが無かった。
そしてこの街は少々治安が悪くカツアゲや暴動などが度々起こっていて、ブランドンはよくある有名なコミック漫画で”サンダルを今日は履くと決めたということは、今日カツアゲなど何にも追われることがないようにと願うのと一緒のこと”というセリフを聞いたことはあったが実際にブランドンには”その時”縁のない話だった。
ブランドンの親友
そんな少し孤独にも聞こえるブランドンだが彼には二人の親友がいる。
一人はリコという何のトラブルにも首を突っ込まず、することと言ったら女の子がいるそこら辺に座り、タバコや草を吸うこと。そんなリコだがとても鍛えられてて男らしいことから女子からはいつも人気だった。
もう一人はアルバート。アルバートはいつも女子のことばかり考え話す、正真正銘のオンナ好き。
そんな彼だが女性との噂を聞いたことがないブランドンとリコは実は女性経験がないのでは思っている。そして女子だけのように見える彼だが、アルバートは自分にR&Bの才能があると信じていて、自分でCDを作って道端で売っているが誰もまだ彼の才能には気づいていないようだった。
憧れの”キックス”
そんな彼らといつも連み、同じつまらないことをしているブランドンだが彼らにはあってブランドンにはないものがあった。
それはスニーカーだった。
リコとアルバートの二人ともナイキのジョーダンシリーズを履いていた。ブランドンのボロボロのスニーカーとは大違いの流行りのスニーカー。スニーカーが一つのステータスともなっているその街でもちろんブランドンもジョーダンスニーカーを手に入れるのが夢だった。
学校に行った際、いつものごとくラップバトルをしていた男がいてリコが「お前に似た奴だな、靴だけは一丁前だけど。」と言い、彼が履いているスニーカーを見ると、最強のスニーカーとも言われている”エアージョーダン1”だった。
その誰もが憧れているエアージョーダン1を見たブランドンは母が隠していた彼のお小遣いと、道端で地道にお菓子を売り貯めた自分のお金でついにエアージョーダン1を手に入れた。
ついにおんぼろのスニーカーとおさらば出来たブランドンは早速新しいスニーカーを履いてリコとアルバートに見せに行った。お洒落は足元からという言葉があるようにエアージョーダン1を手に入れたブランドンは今までとは違い胸を張っていた。
いつも通り、バスケットコートにいた女子たちに声を掛けるリコとアルバート。そうすると一人の女の子がブランドンに興味を持ったのだ。もちろん「君のその靴かっこいいね。」という言葉から。今夜映画をお誘いまで受けたブランドンはすかしながらもまんざらではないようだった。
平凡な日常からの変化
今夜に向けリコとアルバートと別れ自宅へと向かう中、地元の不良たちに襲われてしまう。そしてやっとの思いで手に入れたスニーカーを盗まれてしまったのです。
他に何も興味がなく、スニーカーのことが一番だったブランドンは頭に来て、盗まれたスニーカーを取り戻す決意をします。
ただそのスニーカーを奪ったフラコという男は地元で有名な不良で強盗や暴力など日常茶飯事でした。それを知っていたリコとアルバートは普段の穏便な生活を変えてまで危険な方に走ろうとするブランドンを止めようとしますが、彼の大切にしていたスニーカーにしか眼中にない彼を誰も止めることはできませんでした。
ブランドンはまずアルバートのいとこのトレブに会いに行きました。彼はこの街はその周辺の奴のことは全員知っている顔の広い男。
彼に相談するブランドンですが、関係ないことには首を突っ込みたくないと、ブランドンの叔父であるマーロンに話するように言いました。
そしてリコとアルバートもブランドンが本気だということを知り、ブランドンの手助けをすることにしました。彼らと一緒にブランドンは叔父の住むオークランドに向かいます。
スニーカーをブランドンから”貰った”フラコ。彼は自宅に戻り、家で待つ幼い思春期前の息子、ジェレマイアに「これが好きなんだろ?」そのスニーカーをあげていたのでした。
別世界
オークランドに向かっていたブランドンたち。叔父のマーロンは悪い奴で昔ブランドンが小さい頃、刑務所に入っていました。彼が連れられた時、ブランドンは叔母の家でいとこたちと遊んだのをかすかに覚えていました。
全員で三人いましたが一人は殺されてしまいました。叔父の住む家に到着した一行ですが、出迎えてくれたいとこたちの威圧感と異様な雰囲気に飲まれ完全に小さくなるリコとアルバート。
そんな中、叔父のマーロンが現れ病気で横たわっている叔母に挨拶するよう言います。そしてブランドンはマーロンに例のスニーカーの事件のことを話します。マーロンはフラコのことを知ってはいましたが、そんなガキは相手にしない。と言われます。
そしてマーロンはブランドンに捕まった理由を話しました。
彼は若い頃、自宅にて薬物を作っており、ネイルというビジネスパートナーがいました。しかしある日、ネイルはマーロンは不必要など思い独り占めしました。それに頭の来たマーロンは気付いたらネイルを撃っていたのです。
それが理由で刑務所行きとなったのでした。続いてマーロンは「自分で蒔いた種は自分で処理するもの。俺は助けにならないし、嫌ならとっとと家に帰りな。」と言いました。
それを聞き、落胆しつつその場を去るブランドン。いとこのライアンとゲイブはアテがなくなり傷心するブランドンを見て今晩フラコの元に連れてってやる。と言います。
リコはすかさず首を横に振りますが、ここまで来たブランドンは彼らの誘いに乗りました。
思わぬアクシデント
フラコの元に向かう前にいとこたちの提案で女の子の集まる所に向かった一行。みんなでお酒や葉っぱを吸ってテンションの高い中、ゴルダと呼ばれる女の子がブランドンの方を見ていました。
リコとアルバートはからかい半分でブランドンに伝えたところ、ブランドンがその子の手を引いて部屋に入って行きました。それを見た二人は唖然。特にアルバートに関しては先を越されたような目で見ていました。
そしてお楽しみの後、皆んなが集まっている所に行くとそこでは車の技の見せ合いが行われていました。そしてそこにはフラコ率いる不良たちも来ていたのです。
そしてフラコが息子にも見せてあげようと肩車し、ブランドンがその自分のスニーカーを履いたフラコの息子を見つけます。
そしてその中に以前、ブランドンがバスケボールを投げつけたフラコの仲間が居て、ブランドンに絡んで来ましたが、いとこが助けてくれそのまま喧嘩に。
そしてその勢いでそのフラコの仲間が車に轢かれてしまいます。思わぬアクシデントにその場は騒然とし、皆んな問題になる前に逃げて行きました。
それを見たフラコは仲間を失った復讐のため、ブランドンのいとこたちの後を追い、バレぬよう角からいとこたちを銃で撃ったのでした。
ブランドンとフラコの接触
そんなことが起こっているとは知らないブランドンはフラコに歩いて帰るよう言われた通り自宅へと戻る彼の息子のジェレマイアの後を追って居ました。
リコとアルバートは流石にまずいと思いブランドンを止めようとしましたが、叔父マーロンの家から持って来た銃を片手にそのままフラコの家へと侵入して行ったのでした。
テレビを付けたまま寝ているジェレマイアから無事にスニーカーを取り戻したブランドンでしたがジェレマイアが目を覚まします。そして更にまずいことにフラコが家に帰って来たのです。
ブランドンはジェレマイアに「俺が外に出れるよう、フラコにバレないようにしろ。」と銃を片手にしながら出口に向かうブランドンでしたが、息子の様子が少しおかしいと感じたフラコがジェレマイアに何かあったのかと聞くとジェレマイアが「この家に知らない人がいる。」と答えてしまいます。
フラコは「ここで待ってろ。」と息子に言い、ブランドンと銃撃戦になります。
リコとアルバートの助けにより間一髪の状態で逃げだせたブランドンは走って逃げましたが、アルバートがフラコに捕まってしまいます。殴られ顔から流血し、銃を構えたフラコでしたがリコが後ろから殴りかかり無事二人も逃げることができました。
終わりからの始まり
やっとの思いで自分のスニーカーを取り戻したブランドン。
リコとアルバートと合流でき、上機嫌なブランドンでしたが、彼のそのスニーカーのせいで傷を負ったアルバート。
後に叔父のマーロンからいとこのゲイブが撃たれたこと、そして「地元に帰る前にマーロンからこれからいることになるぞ。」と言われ持たされた銃と自分が起こした事の重大さに気づくブランドン。
地元に戻り、持ち帰った銃をスニーカーの空き箱に入れ捨て、リコとアルバートに謝るため彼らが好きなものを持っていき無事に仲直りした彼らでしたが、その道中息子のスニーカーを取り戻すため来ていたフラコに見つかります。
決戦
走って逃げた三人でしたが、ブランドンは足を止め、フラコと正面から戦うことにします。持っていたスケートボードがフラコの顔面にヒットし、そのまま殴りかかるブランドン。フラコが持っていた銃を手にし撃とうとしますが、息子のジェレマイアがそれを見ていました。
ブランドンは銃を置き、去ろうとしたところ後ろからフラコに殴られ血まみれになります。「銃を渡せ。」と息子に言いますが、黙って銃を握りしめたまま渡さないジェレマイア。
そのままスニーカーを奪うことなくフラコはジェレマイアに「俺が悪かった。」と言いながら帰って行ったのでした。
流血しながら地面に倒れていたブランドン。リコとアルバートがブランドンを助けに戻って来ます。
二人は「これでお前も一人前の男だよ。」とブランドンに声を掛けました。そしてそんなブランドンの足元に”エアージョーダン1”が正式に戻って来たのでした。
キックスの感想
アメリカの西海岸、カリフォルニアの闇とそこに生きるまだ汚れのない少年の話。
そして今回の話の鍵となるスニーカー。実は映画の題名である『キックス』は若者のスラングで”スニーカー”という意味です。
そしてこの話は監督であるジャスティン・ティッピングが実際に体験した内容を元に作られています。
ジャスティン・ティッピング監督は実際に新しいナイキを履いて出かけたところ、ブランドンと同様襲われ、傷だらけのまま自宅に帰った時兄に、「これでお前も一人前の男だな。」と言われ大人の階段を登れ嬉しかった反面、後から男らしさについての考え方に違和感を感じこの作品を書き始めたそうです。
映画を終わった後、この記述を見て確かにこれが本当の男らしさなのかと言われたら違うと私なら即答するでしょう。しかしそれは、ブランドンの住むリッチモンドやその周辺で育ったこともましては行ったこともないのでそのカルチャーを知らないので言えるだけかもしれません。
日本でも不良と言われる人たちはいますし、実際中学とかでちやほやされていたのはその不良と言われる非道を歩む人たちでしたし、それに憧れる人も何人もいました。
この映画の舞台であるイーストベイのスニーカーカルチャーみたいなものは学生の頃あまりありませんでしたが、それは大人になった今でもスニーカーではなく、車、腕時計や学歴、女の世界で多いのは一流ブランド品を身に付けるなど形は違えど存在します。
そして人々も知らずのうちにそれでステータスをはかっているのです。スニーカーごときで子どもたちが騒いでる程度にしか世間的には思われていないのかもしれませんが、実際そう言っている人がいいハイブランドのものを身につけていたり、いい車に乗っていたりするのですからなんとも皮肉だなと感じます。
ブランドンにとってはスニーカーが彼の人生の中でとても重要なものですし、我々もその彼のスニーカー的なものを持っていると思います。ただそれにより、思いがけない道を歩んでしまう危険性があることもこの映画は伝えてくれています。
ブランドンの場合は、盗まれたスニーカーのことしか最初頭になく、暴力の道へと進んでいってしまいますし、彼の叔父のマーロンは薬が発端で刑務所に行ってしまいます。
何かに夢中になること、全うすることはいい事ですが、いつどこで道が外れているかもちゃんと見ながらでないと自分を見失うことになります。
映画では最後はハッピーエンド(ブランドンもフラコも死なない、スニーカーも再び手にする)になっていますが、ハッピーエンドにすることでこの映画が伝えたかった男らしさ、復習などのテーマが綺麗なものになってしまうのではと考えました。
しかし、バッドエンドにするとただの後味の悪い映画になってしまうので、ブランドンの成長期としてはこの終わり方で安心できました。
最近日本でも芸人さんなどスニーカーマニアな人たちが取り上げられる機会が多くなって来ています。あまり知られていないだけでスニーカーひとつひとつにちゃんとストーリーがあったりするので、
それを知って見る人はもちろんスニーカーカルチャーの本場の映画なのでとても楽しんで見れますし、カリフォルニアで実際にあるカルチャーを、更に多くのダークな部分を見れるということもあり、サブカルチャーなどがお好きな人また劇中に流れる曲もとても厳選されているのでミュージックカルチャーに興味がある人も楽しめる作品です。
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