『さらば愛しきアウトロー』は、アメリカに実在した銀行強盗犯のフォレスト・タッカーを描いた作品です。60年間の俳優キャリアを持つロバート・レッドフォードの引退作品でもあり、大きな注目が集まりました。十代の頃から盗みをはたらくタッカーは、州をまたいで次から次へと銀行強盗をはたらきます。しかし、目撃者の証言はタッカーに対し一様に好意的なものでした。
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『さらば愛しきアウトロー』作品情報
タイトル:さらば愛しきアウトロー
原題:The Old Man & the Gun
監督:デヴィッド・ロウリー
脚本:デヴィッド・ロウリー
原作:『The Old Man and the Gun』デヴィッド・グラン(ニューヨーカー)
製作:ロバート・レッドフォード、ビル・ホルダーマン、アンソニー・マストロマウロ、ドーン・オストロフ、ジェレミー・ステックラー、ジェームズ・D・スターン
公開日:2018年9月28日(アメリカ)、2019年7月12日(日本)
出演者:ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、シシー・スペイセク、ダニー・グローバー、トム・ウェイツ、エリザベス・モス
『さらば愛しきアウトロー』概要
『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』で一躍脚光を浴びたデヴィッド・ロウリーが本作の監督と脚本を兼務しています。ニューヨーカーに掲載されたデヴィッド・グランの記事を読んだロバート・レッドフォードがロウリーに映画化を打診しました。2人は『ピートと秘密の友達』の撮影を終了した後、本格的に本作のプリプロダクションに入ります。
キャスト
主人公フォレスト・タッカーをロバート・レッドフォードが演じ、親しくなる女友達・ジュエルを『歌え!ロレッタ愛のために』でアカデミー賞主演女優賞を獲得した『イン・ザ・ベッドルーム』のシシー・スペイセクが扮します。その他、ケイシー・アフレック、ダニー・グローバー等豪華俳優陣が出演。
『さらば愛しきアウトロー』あらすじ・ネタバレ
カリスマ銀行強盗犯
1981年7月26日、午前10時2分、テキサス州。銀行から出てきたフォレスト・タッカーは、車に乗り込んでダッシュボードに拳銃をしまい、その場を走り去る。耳に入れたイヤホンで警察無線に聞き耳を立てた。
通信指令係が「容疑者は武装し、白のセダンを運転している」と現場に急行する警察各車両に報告。車を乗り換えたタッカーは高速道路に乗り、窓を開けて走行。オーバーヒートで車を路肩に停めたジュエルを見かけ、タッカーは助けが必要かと尋ねる。
ジュエルは大丈夫だと言うが、タッカーは見てあげようと気軽に声を掛けて近づく。その脇を何台ものパトロールカーがサイレンを鳴らして通り過ぎて行く。ジュエルが車に詳しいのかとタッカーに訊くと、実はよく分からないと返答が返って来た。
ジュエルは、手を貸してくれたお礼にコーヒーをご馳走するため、タッカーと一緒にダイナーへ来る。ジュエルは、夫に先立たれ独り身だった。会話が弾み、自分が銀行強盗だと言うタッカーの話をジュエルは笑い飛ばした。
やって見せてと言われたタッカーは、自分の手口を説明し始める。先ず、銀行へ入ったら落ち着いて椅子に座り様子を見てタイミングを計る。数時間から時には数日掛かり、自分が納得できる瞬間まで辛抱強く監視しながら待つ。
その時が来たら窓口へ近づき相手の目を見て銀行強盗だと告げる。持参した拳銃を見せ、アタッシュケースにお金を詰めて寄こすよう指示。馬鹿な事はするな、君が気に入ったので傷つけたくないと話す。
お金を受け取ったら、来た時と同じように慌てず普通に銀行を去る。ジュエルは、終始笑みを絶やさず説明を聞いている。タッカーは、にっこり笑い、冗談だと言った。
紳士的で非暴力
1981年8月4日、午後11時59分、ダラス。刑事のジョン・ハントが息子を連れ、銀行に立ち寄る。いつもの様にスーツに身を包んだタッカーが入って来た。タッカーは、支店長に近寄り、自分のビジネスについて相談があると声を掛けた。
支店長は満面の笑顔で、どんなビジネスなのか尋ねる。タッカーがトレンチコートの前を開いて見せ、途端に支店長の顔が引きつった。支店長室でタッカーからアタッシュケースを渡された支店長が出て来ると、タッカーの仲間・ウォラーが懐に手を入れた。
支店長は顔をこわばらせ、キャッシュレジスターを開けてお金を次々にバッグに入れて行く。そして、こっそり警報装置のボタンを押した。耳に入れたイヤホンからそれを察知したタッカーだが、落ち着いて待つ。
支店長からアタッシュケースを受け取り、タッカーはお礼を言ってウォラーと出て行った。その途端、支店長は正面出口の鍵を閉め、銀行内に居た客に対し、支店長として責務を果たし、たった今銀行強盗が起きたと大声で伝えた。
ハントの表情が凍り付く。駆けつけた刑事たちと支店長の事情聴取に立ち会うが、ハントはタッカーに気づかず全く覚えていなかった。一方、タッカーは、運転を担ったテディを含め3人で余裕を持って逃走し、付け髭を取って車を乗り換えた。
引き続き事情聴取を受ける支店長は、犯人が武装していたのか訊かれる。実際に銃を見てはいないが犯人は持っていると主張したと言葉を濁す。刑事は、犯人が言った事を信じたのかと呆れた。支店長は、紳士的だったので信用したと答えた。
ジュエルに電話したタッカーは、再び同じ店で待ち合わせる。今日は補聴器をつけてないのね、と言われたタッカーは、耳が遠い振りをしてジュエルを笑わせた。ジュエルから馬が好きだと聞いていたタッカーは、鉛筆で写生した馬の絵をプレゼントした。
ハントは、銀行強盗の事件ファイルを同僚刑事から渡される。犯人の特徴は、60代から70代、白人男性、補聴器着用と記載されていた。ハントは、他に標的になった銀行があると睨み、捜査を開始した。
タッカーは、その後もオクラホマ州、ミズーリ州、そしてアーカンサス州等次々と強盗をはたらく。勤務初日だった窓口係がタッカーに渡されたブリーフケースにお金を入れながら泣き始めた。タッカーは、何でも最初があるものだと言って慰めた。
ハントはそれらの銀行で聞き込みをする。礼儀正しく、紳士的、幸せそうに見えたと言う証言が集まった。一方、タッカーは、ジュエルの家に招かれる。広大な敷地が広がる牧場だった。ジュエルは、維持費は高いが手放したくないと話した。
大きな獲物を狙った代償
タッカーは、次にミズーリ州のセントルイスにある大きな銀行を標的にした。向かいのビルの屋上から、銀行の外観を写生。ウォラー、テディと落ち合い、同じビルの屋上から下見をする。テディは、到着した現金輸送車の写真を撮った。
ウォラーは、もう直ぐ67才を迎え未来を考えたいので、小銭ではなく大金を狙おうと言う。テディは手に余ることは控えるべきだと慎重な意見だった。タッカーは、自分達の事件がテレビで報道され、担当刑事のハントの顔を見つめた。
早朝に連絡を受けたハントは、銀行の大型金庫が狙われた事を聞き、現場へ急行する。床には100ドル札が散乱していた。目撃者は、警備員を装った3人が行員にエスコートされて金庫へ入ったと話す。
ハントは、100ドル札に、「幸運を 最盛期を過ぎたギャング」と書かれた自分宛のメッセージを読み、思わず声を出して笑う。警備員に撃たれたテディの脇腹をウォラーが手当てする。3人は盗んだ金のインゴットやコインを見て惚れ惚れした。
タッカーは、ジュエルが取引する銀行を訪れ、彼女が抱える家のローンを彼女に内緒で完済したいと支店長に話す。しかし、所有者であるジョエルの署名を必要とする事務処理がある言われ、諦めたタッカーはその場を後にした。
事件はFBIの管轄になる。ハントの下にサンフランシスコに住むタッカーの元妻との間に生まれた娘・ドロシーから若い頃の家族写真が届く。ハントは単独でサンフランシスコへ飛んだ。
フォレスト・タッカー
1981年、10月12日、サンフランシスコ。ドロシーは、結婚は2年しか続かず、自分が生まれる前にタッカーは既に服役していたので、会った事は無いと話す。反省したと言いながら、出所してもまた罪を犯す父親はずっと刑務所に居るべきだと彼女は言った。
ハントは昔のタッカーの弁護士に会う。13才で初めて自転車を盗んだタッカーは、それ以降刑務所に出たり入ったりの人生で16回脱獄に成功した事を知る。弁護士はタッカーにもっと楽に生活できる道があると諭すが、タッカーは人生を謳歌していると答えたと言う。
タッカーがジュエルといつもの様に同じダイナーでコーヒーを飲んでいると、ハントが妻を連れて入って来る。ネクタイに飲み物をこぼしたハントがトイレへ行くのをタッカーはじっと目で追った。
ハントがネクタイのシミを落としていると、タッカーがテレビで見た顔だと言って話しかけてくる。銀行強盗犯はもう捕まえたのかと訊かれたハントは、目を細めて笑みを浮かべ、まだだと答えた。
ハントの曲がったネクタイを直したタッカーは、きちんとした身なりをしていると慣れない事をやっていても意外に上手くものだとほくそ笑む。トイレを出ようとしたタッカーに、フォレストと呼び掛けたハントは、調べ上げたぞと声を掛けた。
ジュエルを家まで送ったカッターは、彼女が家の中に入るまで見届ける。車を降りたカッターが玄関に近づくとジュエルが扉を開けた。タッカーは、帽子を脱いでジュエルにキスをし、また帽子を頭に乗せ笑顔で立ち去った。
テディの家へ行くと、暗闇の中でテディが外のデッキに座っていた。車を降りたタッカーが不審そうな表情で見つめていると、突然照明が点灯。複数の警察車両が辺りを包囲していた。タッカーは、両手を挙げながら直ぐに車に乗り込み逃走。
腕に被弾したタッカーは、耳にイヤホンを入れて警察無線を聞きながら、追尾される中車を走らせる。路地に入り、通りがかった車の運転手を脅し乗せてもらう。子連れの女性だったため、2人を降ろして車を盗んだ。
タッカーはジュエルの家に引き返すが、彼女を起こすことはせず、馬に乗り丘を登った。高台から多くの警察車両がサイレンを鳴らして一列でジョエルの家に向かっているのが見えた。
逮捕されたタッカーは、病院で傷の治療を受ける。目を覚ますとハントがじっと見つめていた。そして、ハントは無言のまま、自分宛にメッセージが書かれた100ドル札をタッカーに手渡し、病室を出て行った。
人生を楽しむ
刑務所に居るタッカーをジュエルが訪ねる。タッカーは、過去に成功した16回の脱獄を日付入りで書いたメモをジョエルに渡す。17と書かれた空欄についてジュエルが訊く。一番は最後に取っておくと答えたタッカーに、ジュエルは大人しくしたらと言った。
アドバイス通りにしたタッカーは、刑期を終えて出所する。迎えに来たジュエルとタッカーは彼女の牧場へやって来る。好きなだけ滞在するように言葉を掛けたジュエルは、電話してくれて良かったとタッカーを見つめた。
2人は散歩や映画を鑑賞し、平穏な日々を過ごす。ある日、ジュエルと出かけたタッカーは、セントルイスの銀行に現金を運ぶ輸送会社のバンを見かける。昼寝しているジュエルに、タッカーは、ちょっと用を足して来ると声を掛けて出かけた。
タッカーは、ハントに公衆電話から連絡を入れる。声を聞いてタッカーだと気付いたハントが出所したタッカーの様子を尋ねた。電話を切ったタッカーは、ブリーフケースを下げその足で銀行へ入って行った。
‐その日、タッカーは他に4つの銀行からもお金を盗んだ‐
‐逮捕されたタッカーは笑顔を浮かべていたと現場の刑事は証言している-
『さらば愛しきアウトロー』を観た感想
好きな事だけをして人生を送ったフォレスト・タッカー。弾を込めていない銃を使い、一度も暴力的な行動を取らず銀行強盗を繰り返します。その度に掴まり刑務所に収監されますが、晩年84才で亡くなるまでに18回の脱獄に成功しています。
主演したロバート・レッドフォードは、タッカーが楽しんでいた点に着目し、映画の題材として相応しいと考えました。そして、タッカーを追いつめたジョン・ハントとお互い敬意を持っていた関係に惹かれたとインタビューで語っています。
劇中に登場するジュエルも実在の人物で、タッカーの素顔を知らずに恋に落ち、結婚。その後真相を知り、刑に服すようタッカーを説得し、出所時に迎えに行く所も実話通りです。ジュエルを演じたシシー・スペイセクは、成熟した可愛らしい女性を好演しています。
ロバート・レッドフォードとは初共演で、撮影中思わず伝説的スターに見とれてしまったそうです。監督を務めたデヴィッド・ロウリーがカメラを止めてスペイセクに近づき、相手はロバート・レッドフォードではなくタッカーですと耳打ちされたと笑います。
ロウリーは、携帯電話も払えず車で寝泊まりする程困窮した生活を送る中、いつかフィルムメイカーとして生活できるようになる夢を諦めなければ、きっと道は開けると信じ続けました。
本作の監督業をレッドフォードに打診された時、原作となったニューヨーカーの記事を読み、自分の好きな事をやり諦めなかったタッカーが以前の自分を思い出させてくれた事で、オファーを引き受けたと明かしています。
『さらば愛しきアウトロー』公開後、レッドフォードの引退について様々な憶測が飛び交っていますが、彼は俳優を引退すると言っています。2019年のサンダンス映画祭が開催された際も主催者を退くと発表。但し、映画製作に何らかの形で関わる事は示唆しています。
技術の進歩で特撮ばかりに時間とお金を掛けるようになった映画作りを危惧したレッドフォードは、物語を伝えることを目指す無名の監督達が自分達の作品を発表する場所を提供するためにサンダンス映画祭を始めました。
日本のNHKがスポンサーに名を連ねている事は知られています。レッドフォードの思いは長く受け継がれ、同映画祭で注目された作品は配給会社が買い付けをし、監督も大きな活躍の場を得るようになっています。
本作のインタビューに多くの場所へ現れたレッドフォードは、カジュアルな服装でジーンズがとても似合っていました。最後の作品に相応しいスタイリッシュな映画として完成しており、今後も良い物語の語り手として映画作りを続けて欲しいです。
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