猫の恩返しのあらすじネタバレと感想!耳をすませばのスピンオフ作品?!

猫の恩返しは柊あおいの少女漫画を原作とし、1995年にアニメ映画化されたジブリ作品『耳をすませば』。
今回は、『耳をすませば』から生まれたスピンオフ作品として2002年に公開されたジブリ作品『猫の恩返し』についてのあらすじとネタバレ、感想についてご紹介します。

猫の恩返しの予告動画

『猫の恩返し』の作品情報

タイトル:猫の恩返し
監督:森田宏幸
脚本:吉田玲子
原作:柊あおい『バロン 猫の男爵』
製作:鈴木敏夫、高橋望
公開:2002年7月20日(日本)、2003年5月2日(アメリカ)
声の出演:池脇千鶴、袴田吉彦、渡辺哲、斉藤洋介、山田孝之、前田亜季、濱田マリ、佐戸井けん太、岡江久美子、佐藤仁美、丹波哲郎、本名陽子 など

監督はジブリ作品では『魔女の宅急便』『となりの山田くん』などに参加、ジブリ以外では『AKIRA』など様々な作品にアニメーターとして参加、本作が監督デビュー作となる森田宏幸。
脚本は数多くのテレビアニメ作品の脚本を手掛けてきた吉田玲子、プロデュースは数多くのジブリ作品を手掛けてきた鈴木敏夫が参加しています。

『猫の恩返し』のキャスト

主人公の女子高生・吉岡ハルを演じるのは今や数々の映画賞に輝く池脇千鶴。
物語の鍵を握る猫の男爵バロン役は『耳をすませば』の露口茂から袴田吉彦に交代、『耳をすませば』で主人公を演じた本名陽子は吉岡ハルの同級生役で出演しています。そのほか、ジブリ作品への出演経験のある「TEAM NACS」の大泉洋と安田顕、大泉と安田の所属事務所会長である鈴井貴之らがカメオ出演しています。

『猫の恩返し』のあらすじ・ネタバレ

女子高生・ハルの日常

ここはどこかの町のとある一軒家。
白いシルクハットに白のタキシード、ステッキを持った猫の男爵が窓の外を見つめている。
「もしあなたが、ちょっと不思議で困ったことに出会ったら、そこを訪ねてみるといい。そこには・・・・・」

“あおい市”に住む女子高生・ハル(池脇千鶴)は目覚まし時計が鳴っても起きず、母(岡江久美子)に声をかけられてようやく目覚めたのだ。
母は美味しそうな朝食を作ってくれたのだが、遅刻しそうなハルは一口も食べることなく学校へ向かったのである。

途中、運悪く靴が脱げてしまったハルはジョギングをしている野球部員たちの列に阻まれ、結局遅刻してクラスの笑いものになってしまったのだった。

帰り道、憧れの男子・町田にも笑われて赤っ恥をかいてしまったハルは、ラクロス部員である親友のひろみ(佐藤仁美)に愚痴をこぼしたのだが、ひろみは「これは前兆だね。もっと恐ろしいことが始まるんだよ」と意味深な発言をしたのだ。

ハルは町田に想いを寄せているのだが、どうやら彼には彼女がいるらしく告白に踏み切れていなかったのである。

不思議な黒猫

時を同じくして、小さなプレゼントのような箱をくわえた1匹の黒い猫がケーキ屋から出てきていた。
近所の人は「見かけない猫だねえ」と呟いたのだった。

町田のことをひろみに茶化されたハルがキレていたその時、猫は道路を見つめていたかと思えば、青信号で車が走り出した頃合いを見計らったかのように車道に歩いていったのだ。

猫のことが気になったハルは、電話に気を取られていた1台のトラックが猫を撥ねそうになったのを見て、とっさに咄嗟にひろみからラクロスのスティックを拝借すると、間一髪で猫をすくい上げたのである。

スティックはへし折れてしまったが、猫は何とか助かった。
ところが、猫はハルの目の前で何と後ろ足のみで立ち上がり、人間の言葉で「大変危ないところを助けていただきありがとうございました。お怪我はありませんでしたか?」と話しかけてきたのだった。

赤目と青目のオッドアイであるこの猫は、「失礼とは思いますが、また日を改めて」とハルに告げるといずこへと走り去っていったのだ。

ひろみは折れたスティックを拾い上げて「猫の命に代えられないか」と納得したが、ハルの言うことは信じられなかったのである。

猫の国の王子ルーン

帰宅したハルは、パッチワークをしている母から夕食を作ってくれるよう頼まれた。
ハルは思い切って「猫って話せるの?」と尋ねてみたところ、母はハルがまだ幼かった頃に「猫とお話しできるのよ」と語っていたことを思い出したのだった。

ハルが幼かった頃、学校の帰り道で1匹の薄汚れた白い猫に出くわしたことがあった。
ハルはお腹が減っている様子だった白い猫にお菓子をあげたのだ。

ハルはその猫が「世の中、生きていくのって大変だよ」と話していたと母に語っていたのだが、ハルはすっかりそのことを忘れていたのである。

その夜、ハルは「そんなこともあったなあ」と当時を振り返り、今度こそは遅刻しないと固く誓って眠りにつこうとしたところ、どこからともなく青い光の提灯を掲げ、二足で歩く猫の大行列が現れたのだった。

近所の野良猫たちは黒ずくめのガードマン風の猫たちに排除され、行列の中央には手押し車の玉座に座る猫の王の中の王、その名も“猫王”(丹波哲郎)の姿もあった。

ハルは恐る恐る外へ出てみると、猫王の家臣ナトリ(佐戸井けん太)はハルが助けた猫こそが猫王の王子ルーン(山田孝之)であると告げ、“明日より沢山の幸福が訪れる”という目録を手渡したのである。

猫の行列は厳かな音楽を奏でながらいずこへと去っていったのだった。

猫からの贈り物

翌日、目覚まし時計で目が覚めたハルは、昨晩の出来事は“夢オチ”だろうと考えていた。
ところがその直後、ひろみから彼女の自宅に大量のラクロスのスティックが送り付けられてきたとの電話が入ってきたのだ。

ハルは目録を開こうとすると、今度は母が「ハル、早く来て!」というので庭を見てみると、いつの間にか庭一面に青々とした大量の猫じゃらしが穂を垂れていたのである。

ハルは学校へ行こうとすると、その後を大量の猫たちがついてきたのだった。
「一体、何なの?!」とハルはようやく学校に到着するも、今度は靴箱に大量の小箱に入ったネズミが入れられていたのだ。
ネズミは瞬く間に駆け付けた猫たちの餌食となった。

ハルは教室で目録を開いてみると、人間では理解できない言語が綴られていた。
「夢じゃなかったんだ。やっぱり、あの猫の仕業なんだ・・・猫なんて助けなきゃよかったってこと?」

ハルは目録の中に王冠を被った猫の絵を見つけたその時、ひろみがこの日の掃除当番を代わってほしいと頼んできたのである。
この日はひろみの憧れの男子・ツゲちゃんの卓球の試合があるのだった。

快く掃除当番を引き受けたハルはゴミ箱をゴミ捨て場に運んでいたところ、噂通りに憧れの町田が美人の彼女と楽しそうに歩いているところを目撃したのだ。
気を取られたハルは転んでしまい、散らばったゴミをかき集めながら「あーあ、私ってここで何してるんだろう・・・」とぼやいていると、そこに1匹の猫が通りがかったのである。

「ハルさま、ハルさま」
その猫は、昨晩の猫王の行列にも参加していた家臣のナトル(濱田マリ)だった。

猫の国へご招待

ハルは「あんたたちね!朝から色々!私はネズミ食べないし、猫じゃらしもマタタビも有り難くないのよ」とナトルにくってかかり、ナトルは「猫王さまに何と報告してよいものやら」と頭を抱えてしまったのだ。

最近悩み事があるというハルに、ナトルは「わたくしどもはぜひともハルさまにご満足いただかなくれは」と語り、何と猫の国に招待すると言い出したのである。
ナトル曰く、猫の国は自然も豊かで食べ物も美味しい国だそうだ。

続けてナトルは、猫王は何とハルをルーンの妃にしようと考えていることまで明かしたのだった。
これにはさすがに驚いたハルは「だって王子って猫じゃない?」と言ったあと、しばらく考え込んだ末に「猫の国っていいかもね。一日中ゴロゴロしていられるかも。嫌なことは全部忘れられるかもね」と前向きになったのだ。

ただし、猫の嫁になるのは御免だと釘を刺しておいたのである。

ところが、ナトルは一方的に「それでは、今晩迎えにあがります」と告げていずこへと去っていったのだった。

猫の嫁になるのは絶対嫌だ!と叫ぶハルの耳元に、どこからともなく謎の声が聞こえてきたのだ。
「ハルちゃん、“猫の事務所”を探して。きっと助けてくれる。十字街にいる白い大きな猫が場所を教えてくれるから」

猫の男爵バロン

ハルは謎の声に導かれるように十字街へと向かったが、白い大きな猫はどこにもいなかった。
諦めかけたハルはカフェの椅子に腰掛けると、そこには何と大きく太った白い猫のムタ(渡辺哲)が座っていたのである。

この猫で間違いないと思ったハルは「助けてほしい」と頼むと、ムタはふてぶてしい態度で「ついてきな」とだけ告げて歩き出し、ハルはその後をつけてみることにしたのだった。

人気のない裏地や屋根伝いにムタの後を追いかけたハルは、いつの間にか不思議な街へ辿り着いていた。
そこは人間には小さすぎるミニチュアサイズの家が立ち並ぶ、日本とは思えない洋風な街並みであった。

ムタは小さな一軒家のポストに投函されていた新聞を広げ、「ねえ、猫の事務所は?」とのハルの問いにだんまりと答えなかったのだ。

するとその時、ハルは家の中に、白いシルクハットの白いタキシード、ステッキを抱えた凛々しい1匹の猫の人形が窓の向こうを見つめているのを見つけたのである。

やがて日が暮れ、夕陽がまるでスポットライトのように家を照らし、夜の闇が訪れるとライトアップされた家の中から、人形から“猫の伯爵”の姿となったバロン(袴田吉彦)が姿を現したのだった。
「ようこそ、猫の事務所へ。ここは君たちが住む世界とは少しだけずれた場所。“心”を持ったものたちが住む。人が思いを込めて作ったものにいつしか“心”が宿る。私や“彼”のようにね」

バロンが街の広場の中央の鳥の像に目をやると、像はカラスのトト(斉藤洋介)に変化したのだ。

バロンは早速ハルの事情を理解してくれた。
トトが口の悪いムタと口論になっている間に、ハルはバロンの招きで猫の事務所内に足を踏み入れたのである。

ハルはバロンからスペシャルブレンドの紅茶をごちそうになっているところで、ムタは猫の国について「まやかしさ。猫の国は自分の時間が生きられない奴が行くところさ」と吐き捨てたのだった。
猫の国に一度行ってみたかったというバロンは、自分で何とかするというハルに「どうすれば自分の時間を生きられるか考えよう」と諭したのだ。

ムタがケーキを準備してくれている間、猫の事務所をナトルがノックしてきたのである。
「ハルさま、迎えに来ましたにゃん」
ハルは瞬く間に大量の猫に取り囲まれて連れ去られ、バロンやムタ、トトは急いで後を追ったのだった。

ハルは今すぐ解放するよう要求したが、ナトルは「それってマリッジブルーですにゃ」と聞く耳を持たない。
ムタは先行してハルに追いついたが、ハルたちは突然開いた異次元への入り口に吸い込まれ、続いてバロンとトトも入り込んでいったのだ。

結局ナトルに振り切られてしまったバロンとトトだったが、猫の足跡の形をした湖を発見したのである。

猫の国

草原で気が付いたハルは、自分がムタよりも身長が縮んでしまったことに気付いたのだった。
ムタ「遂に来ちまったか」

そこは見渡す限りの草原が広がり、中央に高い塔を備えた城がある“猫の国”であった。

ムタは出口を探して帰ろうと促したが、ハルは草原に寝そべってもう少しだけここにいたいと言い出したのだ。
その時、城で召使いとして働いている1匹の白猫・ユキ(前田亜季)が現れ、ハルに「早くここから逃げてください。ハルちゃんはここにいちゃいけないのよ」と告げたのである。

ハルはこの猫がなぜ自分の名を知っているのか不思議がっているとナトルが現れ、ハルはムタ共々猫王の城へと連れていかれたのだった。

監視カメラでハルの到着を確認した猫王は喜び勇んで彼女の元に行こうとしたが、ナトリはムタを見るなり「どこかで見たような・・・」と言葉を濁したのだ。

衣裳部屋に通されたハルはドレスに着替えているとそこに猫王が現れ、ハルは結婚の話を断ろうとしたが、いつの間にかハルは猫耳、猫の手といった“猫の姿”にされてしまったのである。

ハルはムタに助けを求めようとしたが、食いしん坊なムタは大量のドリンクが入った巨大なガラス瓶の中で溺れてしまっており、ハルはそのまま祝宴の場に連れて行かれたのだった。

思わぬ助け

祝宴に無理やり参加させられたハルは終始泣きっぱなしで、猫王が呼んできた楽団や手品師のパフォーマンスにも反応することはなかった。
猫王の怒りを買った手品師やつい笑ってしまった側近は城の窓から放り投げられ、ブチ切れた猫王は「もっとマシなのはおらんのか!」と言い出したのだ。

誰もが尻込みするなか、1匹の仮面の貴公子が「私がハルさまを喜ばせてみせます」と名乗りを上げたのである。

貴公子はハルをダンスに誘い、踊りながら「自分を見失うな。君は自分の時間を生きるんだ」と告げると、仮面を取って正体を明かしたのだった。
それは、ハルを迎えにきたバロンだったのだ。

猫王は兵隊を呼んでバロンを捕らえようとしたが、バロンとハルは目を覚ましたムタに助けられ、ユキの手引きで抜け道に案内されたのである。
ユキはハルに「夜明けまでにこの国を出れば、また元の人間に戻れる」と伝え、そびえ立つ高い塔の頂点に行けば人間界に戻れると教えてくれたのだった。

バロンは、ハルを猫の事務所に導いた謎の声はユキであることに気付いていたのだ。

猫の国から抜け出せ

塔までは複雑な迷路の堀が張り巡らされており、ハルたちが逃げられないだろうと確信した猫王は高みの見物を決め込んだのである。

ハルとバロンは城から抜け出したムタと共に迷路に挑み、追っ手の兵隊をかわしながら突き進んでいったが、猫王は次の手段として移動式の壁のハリボテで道を塞いだのだった。
しかし、ハルはハリボテの下に猫兵の足があることを見破り、あっさりと攻略して塔の麓に辿り着いたのだ。

バロンは息を切らしたハルを抱え、ムタと共に塔を駆け上がっていった。
ハルはそんなバロンの男気にいつしか惚れ込んでいたのである。

バロンたちは塔に潜んでいた兵隊をもかわしたのだが、猫王は最後の手段として、ハルたちが頂上に着いた頃合いを見計らって塔に仕掛けていた爆弾を爆発させたのだった。

塔は瞬く間に崩壊、勝ち誇った猫王はハルを城に連れて行こうとしたその時、別の会合に出席していたルーンが戻ってきたのだ。

思わぬ求婚

ユキから知らせを聞いてやってきたルーンは塔の崩壊に驚き、塔を爆破した猫王を責めると、「僕はユキちゃんと結婚します」と宣言したのである。
ルーンはユキにプロポーズの品として魚の形をしたクッキーを差し出したのだった。

それは、ハルが幼い頃に白い猫にあげたものと同じものであり、その白い猫こそがユキだったのだ。
ハルがルーンを助けた時、ルーンが持っていたのはそのクッキーだったのである。

ユキはルーンのプロポーズを受け入れ、ハルは2匹を心から祝福したのだが、あっけにとられた猫王は突然ハルを自分の妃にすると言い出したのだった。

ハルは「そんなことよりも、私を元の姿に戻して。勝手なことばかり言って。私があんたの妃になるはずないでしょ!この変態猫!」と拒絶、ムタはハルのためにひと肌脱ぐといって自分の正体がかつて湖の魚を全て食らい尽くした伝説の大犯罪者“ルナルド・ムーン”であることを明かしたのだ。

ルーンは乱心の猫王を止めるべく立ち上がり、ハルにまだ出口は繋がっていることを教えてくれたのである。
ムタは怪力でハルを塔の上階まで飛ばし、ルーンはユキを安全な場所へ匿い、ハルはユキに感謝しながら自分はルーンを助けたことは間違っていなかったと振り返り、迷ったり悩んだりしていた時間も全て大切な自分の時間であることに気付いたのだった。

帰還

激昂した猫王は塔をよじ登り、バロンに勝負を挑んだのだ。
受けて立ったバロンはムタにハルを任せ、あっという間に猫王に勝利したのである。

しかし、負けを認めない猫王は人間界への出口を移動したことを明かし、ようやく人間の姿に戻ったハルは雲よりも高い上空に追いやられていたのだった。

ムタはハルを引き上げようとしたが、ハルはとうとうムタと共に落下してしまったのだ。
ハルとムタに追いついたバロンは、一緒に落下しながら「胸を張って下を見るんだ。俺を信じろ!」と叫び、ハルとバロンとムタは体勢を立て直して上空を滑空していったのである。

ハルは「私たち、まだ生きてる!」と叫び、朝日が下の街を照らし出した頃、トトがカラスの大群を引き連れて助けに駆け付け、ハルたちはカラスたちが作った階段を下り、ハルが通う学校の屋上に辿り着いたのだった。
「私、帰れたんだ! みんなありがとう!」

一部始終を見届けたルーンとユキはハルの無事を喜び、猫王は責任を取って王の座を降りると宣言したのだ。

しばしの別れ

トトはハルの忘れ物のカバンを届け、ムタを連れて飛び去ろうとした。

バロンはハルに一旦家に帰って休むよう告げたが、ハルは「私、あなたのことが好きになっちゃったかも」と想いを打ち明けたのである。
バロンもハルとのしばしの別れを惜しみながら、もしまたハルが困ったことがあったらいつでも猫の事務所の扉は開かれるだろうと言い残し、トトに飛び乗って去っていったのだった。

ハルはバロンたちが飛び去った方向に向かって「ありがとう!」と叫び、家に戻っていったのだ。

日曜日の朝。
ハルの母は目覚まし時計で目を覚まし、急いで家事をしようとしたところ、髪の毛を短く切ったハルは既に朝食とスペシャルブレンドの紅茶の準備を済ませており、驚く母にこれからひろみと映画を観に行くと告げたのである。

もう遅刻しないと固く心に誓ったハルは、十字街で待ち合わせたひろみから町田が彼女と別れたことを知らされたが、ハルは「別に。もういいのよ」と既に町田への想いを断ち切ったことを伝えたのだった。

十字街を楽しそうに歩くハルとひろみを、ムタはいつものようにあくびしながら見守っていたのであった。

『猫の恩返し』の感想とまとめ

1995年に公開された、スタジオジブリ製作のアニメーション映画『耳をすませば』。
本作は『耳をすませば』の主人公・月島雫が劇中で登場する猫の人形“バロン”をモチーフに執筆した物語とされ、『耳をすませば』の脚本を書いた巨匠・宮崎駿が原作者の柊あおいに頼んで書いてもらった作品『バロン 猫の男爵』を下敷きにしています。

これまで宮崎駿・高畑勲の2トップですらも“続編”を頑なに作らなかったジブリが“スピンオフ”ということで制作した本作は『耳を澄ませば』を超えるヒット作となり、2002年度の邦画興行収入ランキングの堂々の1位となる64億円を売り上げています。

本作はキャラクターデザイン担当がジブリ外部からの起用ということで、これまでのジブリ作品とはまた違った色合いとなっており、壮大な世界観を描くことの多いジブリ作品としては比較的コンパクトにまとめられた(上映時間も75分と短め)作品となり、肩肘張らずに気を抜いて楽しめる作品に仕上がりました。

『耳をすませば』にも登場した猫の男爵バロンと太った猫のムーン(本作では“ムタ”という名前)は前述の通り月島雫の物語の中の登場キャラクターという位置づけでしたが、その物語の世界観が舞台となった本作では縦横無尽の活躍を見せ、自分の生き方を見つけられずに戸惑い悩む主人公・ハルを導く存在として描かれています。

本作も、基本的にプロの声優を起用しない方針である他のジブリ作品同様に声優を本職としない俳優陣が起用され、当時まだ20代になったばかりの池脇千鶴が声優初挑戦ながらも初々しく活発かつ悩める主人公・ハルを好演しています。他にも、『耳を澄ませば』の露口茂からバロン役を受け継いだ袴田吉彦、猫の王子ルーン役で当時まだ10代だった山田孝之、ハルとは過去に面識がありルーンを慕っている白猫のユキは“前田姉妹”の妹・亜季(姉は中村勘九郎の妻である前田愛)、ドジでおっちょこちょいな猫の家臣ナトルはミュージシャンから女優に転じ、北野武作品にも出演している濱田マリ、ハルの母は『はなまるマーケット』の司会としても知られる岡江久美子、そして本作のヴィラン(悪役)ともいうべき強欲でわがままな猫の王“猫王”は“大霊界の案内人”としても名を馳せた丹波哲郎が演じています。その他にも、『耳を澄ませば』で主人公・月島雫を演じた本名陽子、ジブリ作品では『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『思い出のマーニー』に出演している大泉洋と安田顕、大泉と安田が所属する「クリエイティブ・オフィス・キュー」の会長であり『水曜どうでしょう』などを手掛ける放送作家でもある鈴井貴之などがカメオ出演しています。

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