それは夜にやってくる。赤い扉の向こうからやってくるものとは…?2017年にアメリカで公開され、11月23日より日本で公開されるホラー映画『イット・カムズ・アット・ナイト』。未知の病原体に支配された世界で、追い詰められた人間は…。
今回はそんな『イット・カムズ・アット・ナイト』のネタバレと感想をご紹介します。
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イット・カムズ・アット・ナイトの予告動画
イット・カムズ・アット・ナイトの作品情報
タイトル:イット・カムズ・アット・ナイト
原題:It Comes at Night
監督:トレイ・エドワード・シュルツ
脚本:デヴィッド・カプラン、アンドレア・ロア
製作:ジョエル・エドガートン
公開日:2017年6月9日(アメリカ)、2018年11月23日(日本)
出演者:ジョエル・エドガートン、クリストファー・アボット、カルメン・イジョゴ など
既にアメリカで公開済の『イット・カムズ・アット・ナイト』。「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」などと同じ時期に公開されていました。当時の興行収入は予想を下回ったものの、映画批評家からは絶賛されているそうです。
本作は2015年に長編映画監督デビューし、数多くの映画祭で受賞して注目されたトレイ・エドワード・シュルツ監督待望の新作。また主演のジョエル・エドガートンは製作総指揮も務めています。
イット・カムズ・アット・ナイトのキャスト
主人公のポールを演じるのは俳優、そして監督としても活躍するジョエル・エドガートン。そのポール一家と共同生活を送ることになるウィル役にはドラマ「GIRLS」などに出演するクリストファー・アボット。
ポールの妻・サラ役には「ネゴシエーター」で映画デビューし、近年では「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」などの注目作にも出演するカルメン・イジョゴが登場します。
イット・カムズ・アット・ナイトのあらすじとネタバレ
舞台は、未知の病原体に支配された世界。主人公のポールは山の中にある家で、妻のサラ、思春期の息子・トラヴィス、飼い犬のスタンリーを守りながら、得体の知れないものに怯える毎日を送っていた。
夜になると、何かがやってくる。毎晩、外の世界に通じる赤い扉をしっかり閉じ、恐怖の中朝を待った。
以前はトラヴィスの祖父・バッドも一緒に暮らしていたが、黒い斑点、吐血といった症状の感染症にかかり隔離された。そしてついにはポールの手で殺され、焼いて埋められてしまったのだ。
感染の恐れがあるからとは言え、まだ息のあるバッドを自らの手で殺し、火を付けたポール。その様子は慣れたものだった。
「今日も生き延びられたことに感謝しよう」。残ったポール達は空虚感に苛まれ、希望のないまま毎日をなんとか生き延びていた。
謎の侵入者
ある夜、何かが家に侵入した。ポールたちはガスマスクと銃を装備してそれに挑むと、一人の男の姿があった。
ポールは男を倒し、外の木に縛り付けた。男が衰弱してきた頃に彼を問いただすと、男の名はウィルといい、離れたところに家族と暮らしていた。水が尽きて捜し歩いていたところ、ポールの家に侵入したのだった。
ポールは不信感を抱きながらも、ウィルの所持している食料を目当てに、他の家族を迎えに行くことになった。すると道中に謎の男がポールとウィルの乗る車を襲ってきた。ポールはすぐさま反撃して男を燃やし、山の中に埋めていた。
バッドを山に埋めたときと同じように躊躇なく行動したポール。ウィルはそんなポールの行動に、恐怖を覚え始めていた。
ポールはウィルと妻のキム、まだ小さな息子のアンドリューを連れ、家に戻る。そして2つの家族の共同生活が始まった。「入口の赤い扉は常にロックすること」を守りながら。
2つの家族の共同生活
最初のうちは一緒に家事をしたり、ゲームをして過ごしたり、和やかな生活を送っているように見えた。しかしポールたちは完全にウィルたちを信じているわけではない。
また、トラヴィスは死んだ祖父の悪夢を見るようになり、心穏やかではなかった。更に思春期のトラヴィスはまだ若いウィルの妻であるキムを意識してしまい、キムとの悪夢にも悩まされる。
どこか不穏な空気が2つの家族の間に立ち込めていた。
消えた飼い犬・スタンリー
ある日、皆で庭作業中に、犬のスタンリーが山の中に向かって激しく吠え始めた。
スタンリーは何にそんなに吠えているのか。今度こそ、何かがやってきたのだろうか。2つの家族は固唾を飲んで様子を見守った。
何かに向かって山の中へ走り出したスタンリー。トラヴィスが追いかけるが、スタンリーは忽然と姿を消してしまった。
明らかにこの家に何かが近付いてきている。危険を感じた2つの家族は、この日を境に一層、恐怖に怯える生活を送ることになった。
ついに開けられた、赤い扉
後日、トラヴィスが寝付けないで家の中を見回っていると、なぜかアンドリューがかつて祖父・バッドが使っていた部屋で眠っていた。
アンドリューをウィルとキムの眠っている部屋に連れていき戻ろうとしたところ、なんと赤い扉が開けられてしまっていた。
家中がパニックになる中、家の外を調べてみると山で消えたスタンリーの変り果てた姿があった。ポールはスタンリーも何かに感染している可能性があると、これまでバッドや男にしたように、燃やして山に埋めて処理した。
遂にこの家にも何かがやってきたのだ。話し合いを始める2つの家族。しかし、そもそも誰かが中から赤い扉を誰かが開けてしまったのではないか?とお互いを疑い始めた。
アンドリューは、何故両親の居る部屋ではなくバッドの部屋で眠っていたのか、覚えていないと言う。またトラヴィスは、不思議な行動をしたアンドリューに触れてしまっていたことから、感染症の心配をしていた。
ポール一家、ウィル一家はお互いの家族への不信感を更に募らせていくのだった。
不信感の末に起こった悲劇
その後、ウィル一家の様子を盗み聞きしていたトラヴィスは、その様子がおかしいことから、アンドリューが何かに感染したのではないかと気付く。ポール一家が、これまでは外から来る何かに対してそうしていたように、ガスマスクと銃を装備してウィル一家の様子を見に行った。
すると同じく銃を向けるウィル。不信感を募らせたウィル達はポールの家を出ていこうとしていたのだった。
逃げるように家を出ていくウィル一家。執拗にウィルを追いかけ、銃を突きつけるポール。ウィルは反撃するが、精神的に限界に来ていたポールに、家族ごと撃ち殺されてしまった。
救いようのない結末
壮絶な状況を目の当たりにし、生き残ったポール一家。しかし、トラヴィスも祖父・バッドと同じような皮膚の黒いの斑点、吐血といった症状が出始め、感染していることが分かった。母親のサラは、大丈夫よと宥めるしかない。
夜になると外からやってくる、未だに得体の知れない何か。そして家の中には、感染症にかかったトラヴィス。ポールは愛する息子であるトラヴィスのことも躊躇なく殺し、焼いて山に埋めてしまえるのだろうか。
泣き崩れるポールとサラ。しかし、何かを決意したようにお互いを見つめ合うシーンで物語は幕を閉じた。
(おまけ)結末を暗示していたある絵画
アート好きの方の中には、このシーンで物語の結末を予想できる人もいるだろう。
冒頭でトラヴィスが眺めている絵画はピーテル・ブリューゲルの「The Triumph of Death(死の勝利)」という油絵。
14世紀頃にヨーロッパで大流行したペスト。為す術もなく多くの人が命を落としていく中、キリスト教では死の舞踊や勝利といった様式が普及した。このうち死の勝利には、骸骨が人々に襲い掛かる恐怖の風景が描かれている。
ピーテル・ブリューゲルのこの作品では、噴火する山や荒れる海を背景に、斬首・絞首・火刑などの処刑の様子や溺死させられたり喉を切り裂かれるなど骸骨の手による大量の人々の死が描かれている。
これは本作の中でも最後に生き残る人間はなく、すべての人が死に絶え、死が勝利するということを暗示しているのではないだろうか。
また本作で恐れられている感染症は、ペストをイメージしたものなのかもしれない。
冒頭でなんとなく映し出される絵画にも、こんなメッセージが込められていたのだ。
イット・カムズ・アット・ナイトの感想とまとめ
それは夜にやってくる。しかし結局襲ってくるものの正体は明かされず、それを恐れる人間の様子がまざまざと描かれた本作。
本当に怖いのはおばけや怪物ではなく人間だ、というテーマの作品はこれまでにもありましたが、本作では生き延びた人間も絶望するしかないという、救いようのないエンディング。
恐怖に対し為す術のない人間は余裕をなくし、人間同士で不信感を募らせ、争うようになる。この物語が最後に行き着くのはこの世の終わりなのでしょう。
アメリカのホラー映画によく見られる、ワッ!と驚かせるようなシーンはあまりなく、エキサイティングな怖さというよりも、心理的に辛いホラー映画でした。
またトラヴィスの夢のシーンには毎回ドキドキさせられました。夢も現実も変わらない、恐れていることが現実になってしまう、心理的に耐えられない生活の中での17歳の少年の姿が印象的でした。
今回メガホンをとったトレイ・エドワード・シュルツ監督は2015年に「Krisha」で長編映画監督デビューし、数多くの映画祭で受賞して注目された新進気鋭の30歳。本作が2作目となります。
「Krisha」は60代の老女クリシャが長い間疎遠だった息子のトレイに会いに行き、関係を修復しようとする物語。日本では公開されていませんが、どんな作品なのかとても気になりました。
デビュー作で受賞したのはAFI(アメリカン・インディペンデント・フィルム・アワード)での作品賞、監督賞、など5冠、その他に監督賞2つなど、大変注目を浴びました。
この活躍から、本作の配給会社であるA24は彼の新作2作に出資することを発表しました。今後のトレイ・エドワード・シュルツ監督作品も非常に期待されていることがわかります。
本作は11月に日本での公開を迎えます。アメリカでは2017年に公開されていますが、日本ではどのように話題になるのでしょうか?
2018年下期は、注目のホラー映画が続々と上映されます。
音を立てたら殺されてしまう、そんな荒廃した世界で生きる1組の家族を描くクワイエット・プレイス」。こちらは9月に日本で公開がスタートしましたが、アメリカでは2018年No.1大ヒットホラーとも言われ、話題となっています。
また邦画でも「嫌われ松子の一生」「渇き。」などで知られる中島哲也監督の「来る。」が12月に上映されます。中島哲也監督の約5年振りの新作に、岡田准一、妻夫木聡、黒木華、松たか子、小松奈々といった人気俳優が集結し、期待は高まります。
実はどの作品も、「得体の知れないものに怯える人間」がテーマになっていますが今年のトレンドなのでしょうか?これらの作品の中で本作がどのような評価をされるのか注目です。
『イット・カムズ・アット・ナイト』は11月23日より全国ロードショー。
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