映画『ある少年の告白』あらすじ・ネタバレと感想!キャストのルーカス・ヘッジスとラストの結末について

18才の同性愛者・ジャレッドは理解の無い両親によって転向療法を受けさせられます。そこで目のあたりにする恐ろしい体験とは…。ゲラード・コンリー原作2016年ベストセラーの回顧録を基に映画化された『ある少年の告白』は批評家から好評を受けており、2019年ゴールデン・グローブ賞で主演のルーカス・ヘッジスが主演男優賞にノミネートされました。

今回は「ある少年の告白」のネタバレ、感想と無料視聴方法をご紹介します。

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『ある少年の告白』作品情報

タイトル:ある少年の告白

原題:Boy Erased

監督:ジョエル・エジャートン

脚本:ジョエル・エジャートン

原作:『Boy Erased:Memoir』ゲラルド・コンリー

製作:ジョエル・エジャートン、スティーヴ・ゴリン、ケリー・コハンスキー・ロバーツ

公開日:2018年11月2日(アメリカ)、2019年4月19日(日本)

出演者:ルーカス・ヘッジス、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エジャートン

『ある少年の告白』概要

ジョエル・エジャートンが監督・製作・脚本、そして療法士ヴィクター・サイクス役で共演。原作を読み大きなショックを受けたエジャートンは映画化を決意。脚本を書き、原作者のゲラルド・コンリーとその母マーサに会い親交を深め、子供の頃から知るルーカス・ヘッジスを適役と考えてキャストしました。劇中施設で配られる教本は、エジャートンが当時実際に使われた物を手に入れて撮影しています。

キャスト

ジャレッド・イーモンズ役には『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のルーカス・ヘッジス、父親・マーシャルはラッセル・クロウ、そして母親・ナンシーはニコール・キッドマンが演じます。

『ある少年の告白』あらすじ・ネタバレ

ラブ・イン・アクション

ナンシー・イーモンズは息子・ジャレッドを連れて同性愛者に転向療法を実施するラブ・イン・アクションへやって来る。受付スタッフは、ナンシーに施設の見学を断り、夕方5時にジャレッドを迎えに来る迄連絡は取れないと説明した。

ジャレッドは別室へ通され、スマホとポケットの中身を出すよう指示され、スマホにと登録してある連絡先は日々係員がランダムに電話を掛けると言われる。更に、大学で学び物語を書く創作をするノートも施設が目を通すと取り上げられた。

集められた少年少女達は制服を着させられ、指示に従い皆の前で身だしなみ等厳しい規則が書かれた教本を読み上げる。トイレへ行くときはスタッフが付き添い、自慰行為も禁止、他のメンバーとのスキンシップは軽い握手だけに制限等の内容だった。

プログラムを主導する療法士・サイクスは、ゲイは生まれつきと言う話は嘘だと話し始め、今後数日の間にゲイ、ギャンブル好き、アル中、精神障害、中絶、等の項目に分けて家族関係を図にするよう参加者に指示。この様な罪深い家族のせいでゲイになったと言う。

ジャレッドは、高校時代バスケ部に所属しチアリーダーのクロエと付き合っていた。ある夜、牧師の父・マーシャルの車を借りて友人達と遊んだ帰りクロエを送って行く。クロエはジャレッドに言い寄るが、その気になれないジャレッドに困惑した。

12日間のプログラムを行うラブ・イン・アクションは、立ち方等姿勢の矯正やクラスで自分が経験した同性へとの関係についても子供達に告白をさせ、最後は神に謝罪をするよう求めた。そして、サイクスは、プログラムの内容を口外しないように固く禁じた。

ナンシーとジャレッドは、プログラム終了まで側のホテルに泊まる手配をしていた。ジャレッドはその日の内容をノートに書いて自分なりに変わろうと真剣に取り組むのだった。

友人の裏切り

大学へ進学する前にクロエと別れたジャレッドは、寮でヘンリーと出会う。学生生活を謳歌していたジャレッドだったが、ある晩自分の部屋に泊まりこんだヘンリーにレイプされる。下の部屋からうるさいと天井を叩かれ、ヘンリーは体を離す。

自分はどうかしていると泣いて謝るヘンリーは、教会で子供をレイプした事を明かし誰にも言わないで欲しいと頼んだ。混乱したジャレッドは、以降ヘンリーを避け自宅へ戻った。

しかし、危機感を持ったヘンリーは大学のカウンセラーを装い、イーモンズ家へ連絡を入れ、ジャレッドがゲイだとナンシーに話す。マーシャルに問い詰められたジャレッドは仕方なく、ヘンリーの秘密を話した。

マーシャルは、ジャレッドにヘンリーの名前と教会名を尋ね、ヘンリーの過ちを報告すると言う。そして、神は男と女が交わり生命が誕生する素晴らしい責任を与えたと笑顔で話すマーシャルを制止したジャレッドは、ヘンリーの言った事は嘘だと父を見つめた。

両親の為に変わる決断

しかし、ジャレッドは逡巡した後、両親に自分がゲイである事を打ち明ける。ショックを受ける父と涙を拭う母を前に、男性が気になる理由は分からない、申し訳ないとジャレッドは沈痛な表情を浮かべた。

夜半になり、マーシャルは懇意にしている牧師2人を家に招く。そして、マーシャルは、2人に先程の話をして助けを求めたとジャレッド話し、変わりたいかと尋ねた。ナンシーが怯えるような目つきでジャレッドを見る。

その目を見たジャレッドは、唇を噛み変わりたいと答えた。ナンシーが安堵の笑顔を息子に向ける。キリストに願おうと言って、マーシャルの友人の牧師による音頭で全員が手を取り合い、道に迷うジャレッドが再び立ち直るようにと頭を垂れて祈った。

マーシャルは医学的に異常があるのではと疑い、ジャレッドを知り合いの医者に診せる。マルドゥーン医師は、自分は信仰心に厚い人間だが、医者でもあるため、そのバランスを取るのは簡単では無いと話す。

皆が薬でジャレッドを治したいと望んでもそれは不可能だとマルドゥーン医師は言い、血液検査をしても、全く正常でとても健康な10代の少年だと結果が出る事は分かっているとジャレッドへ同情の目を向けた。

そして、出過ぎた事だが、ジャレッドの両親が間違っていると言った後、ナンシーから転向療法をジャレッドに受けさせることを聞いていたマルドゥーンは、この先何があっても自分の選択なのだとジャレッドを優しく諭した。

狡猾な金儲けと未成年虐待

早朝、ジャレッドはサイクスに呼び出される。勝手にジャレッドのノートを破り、書いてあった恋愛物語について、相手は男を想像して創作したのかと訊かれた。ジャレッドは、大学の課題であり単に物語だと答える。

サイクスは、大学はジャレッドに向かず、自分の見立てではラブ・イン・アクションで1年過ごす方が身になるので、両親に勧めると言い始める。何がジャレッドにとってベストか自分が選ぼうと話すサイクスに、ジャレッドの顔は引きつった。

その日のプログラムで、施設に1年居るゲリーは書いたスピーチを発表。過去、罪深い人たちによって騙されたが、今は自身の罪を認めており、以前の自分を嫌悪し神に許しを請う、そして特にサイクスには感謝すると話す。

苛立ち苦悩するジャレッドは、夜ジョギングへ出かける。通りがかったバス停に上半身裸体の男性モデルのポスターを見かけて泥を投げつけた。その頃、ナンシーはホテルで助けて欲しいと神に祈り十字架を握りしめていた。

ジョギングから戻ったジャレッドに、ナンシーはプログラムの内容を尋ねる。与えられた教本はスペルミスだらけで、本当は参加する事も辛く、自分が変われるかどうか分からないと初めてジャレッドは本音を話した。

サイクスは、皆の前でキャメロンに自分の父親に対する怒りを告白させる。人前で自分が同性愛者である問題を馬鹿にした父親について話始めるキャメロンに、サイクスは問題ではなく罪と言いなおせと声を上げる。

嫌がるキャメロンを見兼ねたジャレッドは、自分が代わると申し出るが、サイクスは強制的にキャメロンに続けさせた。親に生まれてこなければ良かったと言われた事がとても傷ついたとキャメロンが呟く。

サイクスは、同性愛者のキャメロンは神に愛されないので、自分自身生まれてこない方が良かったと思う筈だと顔を近づける。変わりたいだろう?と責められ、辛そうに手で顔を覆うキャメロンをサイクスは休憩時間を取らせない罰を与えた。

トイレに行ったジャレッドに対し、1人で用を足しに来た事を咎めたスタッフは、ジャレッドをオカマ野郎と侮辱。温厚なジャレッドだったが腹を立て1人悔しがる。外で同じように親の迎えを待つゲリーから流れに合せて振りをするようアドバイスを受けた。

プログラムが効果を発揮している様に見せれば、悪い噂がある長期滞在施設入居を免れるとゲリーが言う。ホテルに戻ったジャレッドは、マーシャルに電話してプログラム参加を辞めたいと頼む。しかし、父親は聖書のマタイを引用して強くあれと言うだけだった。

悪魔祓い

翌日、ジャレッドが施設へ訪れるとプログラムが行われる部屋にはキャンドルが灯り、全員ネクタイを貸し出されて着用するよう言われた。スタッフがキャメロンを棺の置かれた壇上まで連れて来る。用意された椅子には、キャメロンの家族が座っていた。

聖書を持った牧師が、前夜キャメロンは自分の意思で悪魔と関わったと言いだす。キャメロンの父親は嫌悪の表情。牧師は棺を指差し、こうなりたいのか?とキャメロンを問い詰める。涙目のキャメロンを2人のスタッフが両脇を抱えて床に抑え付けた。

牧師は聖書を掲げて誰が悪魔を祓うか?と全員に尋ねた。キャメロンの父親は自分がやると言って近づき、息子を聖書で叩き悪魔祓いを始める。牧師は幼いキャメロンの妹も無理に兄を聖書で叩かせた後、キャメロンを氷風呂に入れた。

次の日、サイクスに気分はどうだと訊かれたキャメロンは、良好だと答え、神の存在を感じるかと言う質問にも明るい表情で肯定する。ジャレッドが自分の経験を話す番になり、大学で心魅かれた男友達に触れ、同性に関心がある事を神に謝罪した。

サイクスは、神に嘘はつくなとジャレッドを制止。ジャレッドが何も起きなかったと言うが、サイクスはヘンリーについて話せと言った。マーシャルから聞いたと更に問い詰めるサイクスに対し、それは自分の罪では無いとジャレッドは言い放つ。

ジャレッドはキャメロン同様に椅子へ座らされ、そこに居ない父親にヘンリーの行動がどう影響し憎んでいるのか話せと命じる。ジャレッドは、自分の中に憎しみは無く、サイクスに腹を立てていると言い、何を言われようと自分は父親を憎んでいないと声を荒げた。

いや、お前は父親を憎んでいると続けるサイクスに、ジャレッドはサイクスの頭がイカレテいると怒鳴り部屋を出て行った。受付まで走り、自分の所持品からスマホを掴んだジャレッドは、トイレの個室へ入りナンシーに泣きながら連絡を入れる。

サイクスは明らかに慌てた表情でジャレッドをなだめ様と試みた。以前トイレでジャレッドを侮辱した男や他のスタッフが周りを囲み、神へ祈りが捧げられる。大人しくしていたジャレッドだが、ナンシーが駆けつけると立ち上がった。

扉を開けようとしないサイクスに対し、ナンシーは開けろと怒り出す。サイクスは、ジャレッドは少し感情が高ぶっただけだと言うが、ジャレッドはそれは嘘だと母親に訴える。ナンシーは目を吊り上げ、扉を開けなければ警察へ通報すると怒鳴った。

キャメロンがジャレッドの腕を掴んでいたスタッフを突き飛ばし、行かせてやれと言ってジャレッドを扉まで連れて行く。サイクスがやっと諦めて扉を開けると、ナンシーは息子の肩を抱いて歩き出す。

ジャレッドの成長のために必要だと話しながらサイクスが後を追いかける。子供をそうやって駄目にするんだと捨て台詞を浴びせるサイクスに対し、ナンシーはどんな資格があるのか言えとにじり寄った。

医師や精神分析の資格があるのかと詰問されたサイクスは黙り込む。無いと思ったと鼻で笑い、恥を知れと怒鳴った後、自分も恥ずかしいと独り言ちナンシーはジャレッドを車に乗せて走り去った。

マーシャルへ連絡を入れたナンシーは、施設へ戻せとマーシャルが言った事をジャレッドに話す。首をうな垂れる息子に、戻る必要はなく、母親は子供に何かあれば察するもので、辛い思いをするジャレッドを見て見ぬ振りをした自分の非を涙ながらに認めた。

ジャレッドとナンシーが家に戻ったある日、警察がイーモンズ家を訪れる。ナンシーは、キャメロンが自殺し、ジャレッドに話を聞きたいと警察が来たと告げた。

転向療法の実態を暴露

4年後、ニューヨークに住むジャレッド。自分が経験した施設の転向療法について書いた記事がタイム誌に評価され、掲載されることになる。ナンシーは、辛い内容だったが良くかけていたとコメント。マーシャルは目を通していなかった。

母親の様子がおかしいと感じたジャレッドは帰省する。マーシャルがとり行う日曜のミサへあまり行かなくなったナンシーは、神を愛している事に変わりはないが、息子が大事だと言い、マーシャルはまだ受け入れられないのだと示唆する。

マーシャルが帰宅後、ナンシーは自分の為に呼んでくれとジャレッドが書いた記事を手渡す。転向療法の倫理とモラルについて、と題されていた。翌日、マーシャルは、イスラエルの杉の木で作られたボールペンをジャレッドにクリスマスプレゼントだと言って渡す。

ジャレッドが草稿はパソコンでなくペンで執筆するとナンシーから聞いたためだった。日曜に教会で説教する内容を書く時に助けて貰ったと感慨深くペンを見つめジャレッドに託す。ペンを受け取ったジャレッドは、もう一緒に時間を過ごす必要は無いと切り出した。

一度もジャレッドと向き合わず気にもかけた事が無いマーシャルは、常に自分の気持ちばかりを重要視してきたと言った。マーシャルは、息子を失いたくないし良い人生を送って欲しいが、孫の顔を見られない現実を受け入れるのは難しいと話す。

ジャレッドは、自分がゲイであり、マーシャルの息子である2つの事は変えられないと苦痛の表情を浮かべる。更に、神は変わろうとした自分を知っているが、自分を変えようがなく、本当に息子を失いたくないなら変わるのはマーシャルの方だと涙を浮かべた。

マーシャルは分かったと言い、やってみるよと絞り出す。ジャレッドは、クリスマスに自分の自宅へナンシーを招待した事を話し、マーシャルも歓迎だと言い立ち去った。

‐ゲラルド・コンリーは現在夫と一緒にニューヨークに在住‐

‐執筆と支援活動を通し、ゲラルドはLGBTQ社会のために闘い続けている-

‐ヴィクター・サイクス本人は2008年にラブ・イン・アクション去った。現在、テキサスで夫と生活

‐本作の制作完了時、アメリカでは36州が未成年者に対する転向療法の実施を許可している‐

‐今日迄に、転向療法により少なくとも70万人のアメリカ人LGBTQが影響を受けた‐

『あす少年の告白』を観た感想

技術の発展、医学の進歩と日々社会を賑わす一方で、人間が精神的に未熟なままでは本末転倒だと感じずにはいられません。「人は法の前に平等」であり、劇中舞台となるキリスト系機関も法の外では無い訳です。

本作は15年前にゲラルド・コンリーが経験した内容ですが、現在も未成年者を対象にした転向療法と言う名の虐待は行われています。劇場公開された事で、アメリカでは大きな物議を醸しており、厳しい目が向き始めました。

明らかに未成年者の基本的人権を無視しているラブ・イン・アクション。世界100ヵ国にビジネス展開している実在の機関です。名前とは裏腹にキリストの名を掲げ子供達を虐待し、中には耐えられずに自ら命を絶ってしまう少年少女がいます。

その上両親に課される費用は3千5百ドル。親の無知と教養の無さ、そしてそこに付け込んで営利を貪る機関が子供を犠牲にしている事に対し法整備も無い行政の怠慢も浮き彫りになっています。

人の性的嗜好は、先天的であろうと後天的なかろうと、本人の選択であり、例え親であっても干渉する権利は無く、ましてや他人が治してやろうと考えること自体傲慢以外の何ものでもありません。それよりも、レイプや児童の性的虐待こそ深刻な問題です。

同性愛を悪魔に憑りつかれているとして悪魔祓いする牧師の行為は常軌を逸しており、教会が許可した聖職者のみが行える規則に対しても大きく違反しています。嫌悪感を抱かざるを得ないこのラブ・イン・アクションという機関の一日も早い閉鎖を願います。

原作者の母マーサ・コンリーは、ゲラルドと一緒に『コールド マウンテン』を一緒に観賞した際のエピソードをトロント国際映画祭で本作が上映された際に話しています。

主演のジュード・ロウが素敵でキスしたいと言ったところ、自分も、と答えた息子の気持ちが、なるほど同じ感情なのだ、と初めて腑に落ちたそうです。理解できなくても分かろうとする母親と理解したくない父親では結果に大きな差がました。

また、本作を観た男性2人が製作したジョエル・エジャートンを訪問し感謝を述べました。転向療法を行う施設で虐待を受けた経験者で、トラウマを抱え生活をしている人達です。自分を卑下し恥ずかしい人間だと信じ込まされ、今も尚苛まれると話します。

普段自分が出演している作品に関する批評を読まないと言うニコール・キッドマンですが、今回目に留まった記事があったとインタビューで明かしました。「この映画が誰かの命を救うかもしれない」この一節を読み、今回の出演に誇りを感じたそうです。

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