ホテル・ムンバイのあらすじ・ネタバレと感想!実際にインドで起きたテロの映画作品

『ホテル・ムンバイ』は、2008年に起きた実際の同時多発テロ事件を基に製作された作品です。当初4館のみの限定公開だった本作は、米国内で920以上に、そして25ヵ国で既に公開されています。ドキュメンタリータッチで描写され、圧倒的な説得力を持ってテロの恐怖を詳細に再現したオーストラリア、アメリカ、インドの合作映画です。監督を務めたのは、オーストラリア出身のアンソニー・マラス。

『ホテル・ムンバイ』作品情報

タイトル:ホテル・ムンバイ

原題:Hotel Mumbai

監督:アンソニー・マラス

脚本:ジョン・コリー

製作:ベイジル・イヴァニク、ジュリー・ライアン、マイク・カブラウイ、ゲイリー・ハミルトン

公開日:2019年3月14日(オーストラリア)、3月22日(アメリカ)、9月27日(日本)

出演者:デーヴ・パテール、アーミー・ハマー、ナザニン・ボニアディ、アヌパム・カー、ジェイソン・アイザック、ティルダ・コブハム・ハーヴェイ、アマンディープ・シン、スハイル・ネイヤー

『ホテル・ムンバイ』概要

監督は、2011年にキプロス紛争を描いた短編映画『The Palace』を製作し、数々の映画祭で短編部門の作品賞を受賞したアンソニー・マラス。本作はマラスにとって長編映画の監督デビューとなります。映画では異例のリハーサル期間を2週間設け、撮影はオーストラリアのアデレードとムンバイで行われました。キャストは全員撮影前に舞台となったタージマハル・ホテルを訪問。

キャスト

主演は『スラムドッグ$ミリオネア』のインド系イギリス人俳優デーヴ・パテールです。『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマーはデヴィッド役。その妻・ザーラにはテレビドラマ『ホームランド』で知られるナザニン・ボニアディ。ロシア人宿泊客・ワシリーを『ハリー・ポッター』シリーズのジェイソン・アイザックが扮します。タージマハル・ホテルの料理長を演じるのは、本作撮影後16の映画に出演しているインドでは有名なベテラン俳優ナザニン・ボニアディ。

『ホテル・ムンバイ』あらすじ・ネタバレ

同時多発テロ勃発

2008年11月26日、ムンバイ。指導者・ブルの説教を聞きながら、10人の青年がボートで沖から港に乗りつけ、それぞれの目的地へ向かう。道中、自分達から奪われた物を見つめ、周囲から関心を引かぬよう時間通り決行し、訓練を忘れるなとブルは指示した。

電車の駅を皮切りに30分間隔で次の場所へ移るよう説明が続く。その頃、アルジュンは、妊娠中の妻と幼い娘に声を掛け、職場のタージマハル・ホテルへ急ぐ。建築士のデヴィッドは、妻・ザーラ、乳母・サリーと乳児の息子を連れてホテルへ到着した。

コンシェルジェとホテルのスタッフは、VIPであるデヴィッドと家族を温かく歓迎する。南ムンバイ、CST駅。バックパックを背負った先程の青年が仲間と連絡を取りながらトイレで合流。個室に入り2人は自動小銃を組み立て、トイレから出た途端乱射を始めた。

アルジュンは、料理長の点呼に送れて到着。靴を失くしサンダルを履いて来た事を叱責された。出て行けと言われるが、もう直ぐ生まれる子供の為に仕事が必要だとアルジュンは懇願する。料理長は仕方なく、自分の靴を貸すと譲歩した。

一方、銃撃犯は追って来た警察車両に発砲し警官全員を射殺して車を奪う。ムンバイの12ヶ所でテロ攻撃が起き、ニュースで混乱する様子が報道された。タージマハル・ホテルでは、ロシアからもVIPのワシリーが訪れ、料理長がお客様は神様だと訓示。

狙われた伝統のホテル

町中のあちこちが襲撃され、逃げ延びた人達がホテルへ殺到する。支配人は全員を中へ招き入れた。その後ろから紛れて入って行くテロリスト達は、ロビーに居た人を射殺して指導者に報告。泣き叫ぶ様子を聴きたいので、回線を開けておけとブルは命じた。

レストランへ夕食に来ていたデヴィッドとザーラは、アルジュンの指示でテーブルの下へ隠れる。息子の面倒を見ているはずのサリーに電話するが、彼女はシャワーを浴びている途中で応答しない。隠れていたホテルの受付は緊急通報を入れた。

テロリストは上階へ行き、ルームサービスだと言って室内へ入り、宿泊客を射殺して行く。サリーはやっと電話に出るが、廊下から銃声が聞こえて来る。赤ん坊を抱いてクローゼットに隠れ、むずかる子供の口を押えて何とかやり過ごした。

サリーから連絡を受けたデヴィッドは、ザーラにレストランに留まるよう説得してから部屋へ向かう。見張りや巡回するテロリストの目を掻い潜り部屋へ辿り着いたデヴィッドは、息子を抱きしめ、サリーに礼を言った。

想定外の事態

メディアは、爆弾やグレネードを使い同時多発的に街を破壊するテロリスト達に対応する訓練を地元警察が受けていない為なす術が無く、8百マイル離れたニューデリーから特殊部隊を派遣するしかないと伝えた。

タージマハル・ホテルには5百人が閉じ込められていると聞き、アルジュンの妻は顔色を失った。その頃、料理長はスタッフを集め、家族のいる者は裏口から逃げるよう声を掛ける。しかし、宿泊客は神様だと言って殆どの者は一緒に残ると口を揃えた。

レストランの対応に当たっていたアルジュンは料理長から連絡を受け、ホテル内で一番セキュリティの施された上階に在るメンバー専用ラウンジへ宿泊客を避難させる事になる。音を立てないよう非常階段から客を誘導して来たアルジュンを料理長が出迎えた。

一方、残して来たザーラを心配したデヴィッドは、サリーにレストランへ戻ろうと言う。しかし、怯えるサリーは動けば赤ん坊の泣き声で見つかり、皆殺されると反論。残ると主張する彼女を1人置いて行けないデヴィッドは、警察の到着まで待機する事にした。

地元警察はホテル内へ密かに侵入。しかし、それを予期していたテロリスト達はグレネードと銃で襲撃した。最初の攻撃から5時間経過。料理長は、特殊部隊がまだニューデリーから出発しておらず、突入した警察とは連絡が途切れていると知った。

ザーラは母親に電話する。アラブ語を耳にした初老の女性が、ザーラもテロリストだと難癖をつけた。それを見ていたワシリーが仲裁に入る。アルジュンは、初老の女性に自分の家族の写真を見せた後、頭に巻いているターバンが嫌なら外すと言った。

女性は首を振り、怖いのだと声を震わす。アルジュンは、皆で団結すれば乗り越えられると女性を勇気づけた。テロリストに脅された受付女性は、助けが向かっていると宿泊客に電話。扉の外で待ち構えていたテロリストは、扉を開けた宿泊客を射殺した。

その銃声を聞いた受付女性は、頭に銃を突きつけられ次の部屋へ同じ連絡をするよう脅迫されるが、断固拒んだ。テロリストは彼女の頭を撃ち抜く。事件発生から7時間経過。隠れていたホテルのスタッフが大怪我をした女性を連れてラウンジへ来た。

ゲストの命を優先

アルジュンは、彼女を病院へ連れて行くと志願。ラウンジを出たアルジュンは、女性を抱えながら非常階段を下り、ターバンで出血の激しい箇所を巻いてやる。そこへ生き残った警察官2人と遭遇。女性は側の扉から勝手にフロアへ出て行き射殺された。

デヴィッドは息子とサリーを連れて部屋を出るが、テロリストに発見されてしまう。デヴィッドは息子を抱いたサリーを小さな部屋に押し込んで扉を閉める。生きたままアメリカ人を捕まえるよう命じられていたテロリストは、デヴィッドを拘束した。

アルジュンは警察と一緒に行動し、モニターのある警備員室へ案内した。ラウンジの扉を見つけたテロリストは応援に来た警察を装う。ラウンジの外に設置された監視カメラからその様子を見たアルジュンは、急いで料理長に電話を掛けた。

外に居るのはテロリストだと知った料理長は、扉を開ける寸前で中止する。気づかれた事を知ったテロリスト達は、外から銃撃を開始。そして、アルジュンから50人以上が中に隠れていると聞いた警察官2人は、それぞれ6発の弾しか残っていない事に青ざめた。

銅像で扉を破ろうとするテロリストの様子を見た警察は、兎も角ラウンジへ急行する。一方、料理長は宿泊客をラウンジの奥へ移動させた。警察は外のテロリストを射殺しようとするが、他のメンバーが駆けつけ銃撃戦に発展。

退避する警察の後をテロリストが追って行く。拘束されたデヴィッドは他の人質と一室に閉じ込められ、ラウンジの外で警察に足を撃たれた1人が見張役になる。テロリストは家族に電話し、お金が直に支払われるので受け取って欲しいと泣きながら父親と話す。

事件発生から9時間経過。ザーラはデヴィッド宛に遺書を書く。その様子をワシリーが心配そうに見つめた。夫と息子の状態が分からず耐えられなくなったザーラと他の数人は、救助は来ないと料理長に訴え、ラウンジを出て行く。

狂人・ブル

ここに居ても死ぬだけだとワシリーも一行に交ざる。しかし、ザーラは勝手に動き出し、止めようとしたワシリーも一緒にテロリストに拘束された。金持ちの白人を捕まえたと過激派はブルに報告。後で外に見えるよう窓辺に全員並ばせて射殺しろとブルは命じた。

連れてこられた部屋で、ザーラはデヴィッドと再会する。腹這いにさせられ後ろ手に縛られた2人はお互い知らない振りをした。同じ頃、電車の駅を襲撃したテロリストの内1人がインド政府に掴まった。

ブラザー・ブルと呼ばれる指導者から、自分達の貧困は異教徒のせいであり、ジハードを実行しろと命じられた事を証言した。事件から12時間経過。大きな損傷を受けたタージマハル・ホテルの様子を海外特派員が現地から報道。

ホテル内のテロリストが火を放ち、あちこちの窓から黒煙が上がっている。サリーは泣き顔で必死に赤ん坊をあやす。ブルはワシリーの名前を知りたがる。ワシリーは、営業できたピーターと名乗り、英語が分からないテロリストはワシリーの頬を平手打ち。

ブルは身元を示す物を探すよう指示。ワシリーのシャツを破ると体中に傷や刺青があった。ワシリーのパスポートの情報から、ロシアの特殊部隊員だった事を突き止めたブルは、アフガニスタンでロシアがやった事の仕返しに、ここで死ぬ運命だとワシリーに言った。

インドの特殊部隊がムンバイに到着した事をCNNが報じ、それをニュースで見たブルは、人質に価値は無くなったので次の行動へ移れと言い、ワシントンに人質の叫び声を聞かせてやれと鼓舞した。見張りの男だけを残し、テロリストは部屋を出て行く。

決死の避難

ホテル内に爆弾を設置し、次々に爆破。アルジュンは警備室を飛び出した。モニターを見てテロリストの動線と反対方向へ、逃げ出した宿泊客を誘導。その際、赤ん坊の泣き声を聞きつけたホテルスタッフがサリーの隠れていた小部屋の扉を開け一緒に連れて行く。

デヴィッドは見張りに聞こえないよう、息子と一緒に居るサリーの居場所をザーラに囁く。こっそり縛られた紐を解いたデヴィッドは、立ち上がろうとして撃たれた。

料理長は、煙が充満する前に全員の退避を決める。しかし、1人の宿泊客が助けを呼ぼうと勝手にメディアに連絡。その様子が生放送され、ブルは、ラウンジにまだ大勢の宿泊客が残っていると知り、皆殺しにしろと声を荒げた。

そして、更にブルは見張りに連絡し、人質を殺してからラウンジの客を仕留めろと指示。ワシリーは、1人1人頭を撃って行く見張りの男が近づいた時、怪我をしている足に噛みつく。しかし、最後の抵抗を見せたワシリーも射殺された。

デヴィッドは頭に銃が突きつけられると、ザーラを見つめて愛していると言葉を遺した。目の前で夫が殺害されるのを見たザーラは、イスラム教の祈りを上げ始める。混乱する見張りの男に、ブルは、使命に集中し、イスラム教徒も殺せと言った。

自分の目を見つめて礼拝をささげるザーラを殺せず、男は部屋を出て行く。デヴィッドの遺体に顔を埋めてザーラは泣いた。その頃、避難を開始した宿泊客はラウンジを出るが、追いついたテロリスト達が後方から発砲。

パニックになり走り出す人達が次々に銃弾に倒れて行く。同じ頃、ホテルの周りを特殊部隊が包囲し、突入が始まる。アルジュンを先頭に、サリーと赤ん坊はホテルの外へ辿り着く。一番最後に着いていた料理長も逃げ延び、アルジュンを抱きしめ勇気を称えた。

消火も開始され、はしご車で上階に居たザーラも救出される。ホテル内のテロリスト達を兵士達が射殺して行く。ブルは、撤退するなと執拗に檄を飛ばし、回線を開けたまま世界に怒りの声を聞かせてやれと命じた。残り2人のメンバーは神の名を叫び乱射した。

部隊は爆弾を放り投げて点火。爆破音と共にテロリストは殲滅した。ザーラを見つけたサリーは子供を渡す。何度もサリーにお礼を言い、ザーラは息子を胸に抱きしめた。帰宅したアルジュンを見た妻が駆け寄る。アルジュンは、妻と娘を腕に引き寄せた。

‐テロリストグループ10人の内9人が死亡‐

‐首謀者であるブルは拘束されていない‐

‐タージマハル・ホテルで犠牲になった半数は、宿泊客を守る為に残ったホテルのスタッフである‐

‐料理長は3週間でレストランを再開し、ホテルも21か月後に開業‐

‐世界中から事件の生存者がセレモニーに駆けつけた‐

‐現在もホテルに従事する彼等は、ホテル・ムンバイの戦火を闘った兵士である‐

『ホテル・ムンバイ』を観た感想

2008年にインドのムンバイで起きた同時多発テロ事件を描いた『ホテル・ムンバイ』。主にメディアの報道でしか詳細を知り得ない一般人にとっては驚愕の内容です。上映時間が2時間20分と感じないのは、本作の構成がドキュメンタリータッチである為です。

ストーリーは複数の視点で展開し、宿泊客、ホテルのスタッフ、そしてテロリストの側でも描いており、過去のハリウッド映画には殆ど無かった手法です。監督を務めたアンソニー・マラスは、事件を扱ったドキュメンタリー『Surviving Mumbai』の制作に参加。

更に掘り下げて表に出ていない事実を知りたいと言う思いから、マラスは膨大なリサーチを行い本作の映画化を決めた経緯があります。知り得た事実を積み上げたマラスは、ストイックなまでにリアリティを追求しています。

撮影前に2週間のリハーサル期間を設けたマラスは、キャストが演じる際に銃撃音や爆破音を流して緊張感を創出。更に、テロリスト役のインド人俳優陣には他の演者達と撮影終了まで話をしないよう指示を出しています。

事件の生存者達が経験した事を出来る限り再現し、少しでも巻き込まれた人達の思いを代弁して欲しいと言うマラスの思いが強く表れています。脚本を担当した『ウォーキングwithダイナソー』のジョン・コリーも独自に事件を調査。

実際に過激派の指導者・ブルとテロリスト達が衛星電話で会話した記録を入手し脚本に活用しています。劇中にある通り、凶行に及んだのは10代の子供ばかりでした。貧困にあえぐ家族に目をつけた過激派は、両親の手術費用や先々の生活費を約束。

言葉巧みにリクルートした少年達を完全な洗脳と嘘で管理し、聖戦の名の下に見ず知らずの人達を殺害するためにインドへ潜入させます。しかし、数年掛けてテロを計画した首謀者は、離れた距離から自分は安全にテレビで観戦していたのです。

料理長を演じたインド人俳優アヌパム・カーは、事件発生時ムンバイに在住しており3日間続いた惨状を目にしています。本作に出演した事で当時をもう一度再体験し、精神的に疲弊したとインタビューで語っています。

また、主演のデーヴ・パテールは、舞台となったタージマハル・ホテルは電気が通る数少ない建物で、インド人にとってプライドの象徴だったと説明。そこで働くスタッフは誇りを持って仕事をし、夜は周囲のスラム街へ帰宅していたそうです。

生存者の壮絶な実体験を基に製作された『ホテル・ムンバイ』は、過激な思想を10人の少年に植え付け洗脳したイスラム過激派の残忍さとテロリストの標的になったホテルで無私無欲に宿泊客を守ったスタッフの勇姿を圧倒的な映像で物語る作品です。

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