『サスペリア』は1977年に公開され全世界で大ヒットしたホラー映画のリメイクです。今でも根強いファンがいる事で知られています。ドイツのバレエ団で主役を務めるパトリシアが失踪。同時期にアメリカから訪れた新団員スージーと共にバレエ団に隠された秘密が次第に明らかになります。映画通を唸らせたクラシックホラーのリメイクがいよいよ日本で劇場公開。
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『サスペリア』作品情報
タイトル:サスペリア
原題:Suspiria
監督:ルカ・グァダニーノ
脚本:デヴィッド・カイガニック
原作:ダリオ・アルジェント、ダリオ・ニコロディ
製作:ルカ・グァダニーノ、デヴィッド・カイガニック、マルコ・モラビート、ブラッドリー・J・フィッシャー、シルヴィア・ベンチェリーニ・フェンディ、フランチェスコ・メルツィ・デリル、ウィリアム・シェラック、ガブリエレ・モレッティ
公開日:2018年10月26日(アメリカ)、2019年1月25日(日本)
出演者:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、クロエ・グレース・モレッツ、エレナ・フォキナ、ジェシカ・ハーパー
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『サスペリア』概要
本作の監督を務めたルカ・グァダニーノは、14才の時にオリジナルの『サスペリア』を観て、いつか自分でリメイクを作りたいと思い立ちます。2007年、映画化権を得ましたが、『ハロウィン2018』の監督デヴィッド・ゴードン・グリーンがリメイクに興味を示した事から一度は退きます。その後、再度グァダニーノに話が戻り準備をしていた所へ、急きょ『君の名前で僕を読んで』を監督する事に。25年間暖め、遂に本作を完成。
サスペリアのキャスト
主人公を演じるのは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のダコタ・ジョンソン。そして、『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞しているイギリス人俳優ティルダ・スウィントンが3役をこなし、圧巻の演技力を見せます。オリジナル『サスペリア』の主役スージーを演じたジェシカ・パーカーもカメオ出演。
『サスペリア』あらすじ・ネタバレ
1977年、ドイツ、ベルリン。怯えた様子のパトリシアが精神科医ジョセフを訪ねる。情緒不安定で憔悴したパトリシア。学校が魔女に支配されており、ブランク夫人が頭の中に居ると奇妙な事を口走った後、自分の荷物を置いたまま出て行ってしまう。
連続失踪事件
スージーは、アメリカのオハイオ州からベルリンに在るバレエ団へ到着。緊張の中オーディションを受ける。テストの後、合格を伝えられたスージーは、無料で寮へ入居できる事を知り、金銭的に余裕が無かったため安堵した。
早朝のレッスン開始前、芸術監督のブランク夫人が入室し、生徒全員にキスをして挨拶。そして、皆の前で新しく入学したアメリカ出身のスージーを紹介した。オーディションを見て優秀なダンサーだとスージーを褒める。
ブランク夫人は、パトリシアに代わり、オルガが役を務め、サラがオルガの役を演じるとアナウンス。演目・ヴォルクのリハーサルが始まるが、オルガは苛ついて大声を出す。ブランク夫人は、パトリシアはもう居ないと慰めるがオルガはレッスン室を出て行く。
講師の1人が、その様子を見て大笑いした。ブランク夫人は、他に役を務めたい人は居ないか訊くが、誰もやりたがらない。スージーは、何度もドキュメンタリーを観て振り付けを熟知していると手を挙げた。
スージーに近づいたブランク夫人は、準備運動はしたのかと尋ね、スージーの手と足を掴む。頷くスージーの手の平と足の横が光を帯びる。同じ頃、荷物をまとめて学校を去るオルガは、階段を足早に下りていた。
誰かの声に導かれ、別のレッスン室に入ったオルガは閉じ込められてしまう。音楽が掛かり、スージーが躍り出すと、その動きにリンクしオルガの体は勝手に同じ動きをしてあちこちの骨が折れはじめた。顔の骨が変形し、オルガは泣き叫ぶ。
スージーのダンスが終わると、オルガの体も動きが収まる。しかし、四肢が異様に折れ曲がり顔は原形を失っていた。僅かに息のあるオルガの周りに鋭いフックを持った講師達が現れる。オルガの手足を突き刺して持ち上げると、講師達はオルガを何処かへ運んでいく。
その後、夕食を楽しむ講師達は、魔女の集会を率いる新しいリーダーについて話し合う。年老い外見も酷く損なわれているマルコス夫人が、これまで魔女達を率いていた。対するのはブランク夫人だが望みは叶わず、マルコスのために新たな体を探す事になる。
精神科医ジョセフの調査
ジョセフはノートをめくって読み返す。そこには、「暗黒の母、涙の母、嘆息の母」と記述がある。警察官が失踪したパトリシアについて学校に訊き込みにやって来た。一方、気さくなサラと意気投合したスージーは、学校内の事務所へ一緒にやって来る。
週末は誰も来ない事から、サラはパトリシアの家族の電話番号を見つけ、連絡を取ろうと考えたのだった。サラが調べている間、微かな笑い声を聞いたスージーは、奥の部屋へ入る。警察官の下半身を露出させ、講師達が笑いながら囲んでいた。
何故か抵抗する事も無く、真正面を向いたまま警察官は佇んでいた。事務所へ戻ったスージーに、生徒のファイルには、パトリシアとオルガは含まれていないとサラが言う。2人は、忍び足で事務所を出た。
ヴォルクの公演に向けてレッスンが進む中、正式に主役となったスージー。しかし、ジャンプが上手く行かず、キャロラインがその箇所のお手本を見せる。ブランク夫人はキャロラインをじっと見つめた後、スージーに視線を向けた。
レッスン後、突然キャロラインが泡を吹いて床に倒れる。スージーは、ブランク夫人と居残りでジャンプの練習をすることになった。何とかこなせるようになったスージーを見て、ブランク夫人は満足の笑みを浮かべた。
警察に頼ってもお手上げだと見切ったジョセフは、バレエ団を訪れる。出口から出て来たダンサー達にパトリシアを探していると話す。名乗り出たサラは、ジョセフとカフェで話をすることに。パトリシアの日記だと渡されたノートには「魔女」と書かれていた。
ジョセフは、バレエ団の建物に秘密の場所があるのではないかと探りを入れる。気味が悪くなったサラは、パトリシアに対する心配を感謝するものの、二度と学校へは来ないでくれとジョセフに言って席を立った。
夜、寮の自室でうたた寝していたサラは、壁の向こうから物音や人の話し声を聞いて目を覚ます。建物の中を探索していくうちに、1つの扉を開けると女性達の異様な掛け声や叫び声を聞く。怯えたサラは慌ててその場を逃げ出した。
翌日ジョセフを訪れたサラは、パトリシアが古代に語り継がれた3人の最強の魔女、暗黒、涙、そして嘆息の母について話をしていた事を知る。詳しい事は分からないが、サラは危険な人間達と生活しているとジョセフは警告した。
「ヴォルク」
公演の当日。集まる観客に混じり、ジョセフも姿を見せる。衣装に着替えた後、改めて探索に行ったサラは、秘密の部屋へ入りパトリシアを発見。体は見る影も無く様変わりしていた。
他に両足首の無い女性等複数の人がその部屋に監禁されていた。サラは恐怖で部屋を飛び出すが、元来た通路へ戻れず迷ってしまう。突如抜けた床に足を踏み外したサラの膝下から折れた骨が突き出る。叫ぶサラは身動きが取れない。
公演開始直前、生徒達は円陣を組んで気合を入れる。観客に演目「ヴォルク」が紹介され、暗転の後生徒達が踊り出す。サラの側へ講師達がやって来る。1人がサラの膝下を撫でると一瞬で骨折が完治。その講師はサラの顔も撫でた。
講師達と別々に戻って来たサラは、何事も無かったかのように踊りの輪に参加。しかし、佳境に入りスージーがジャンプを始めた所で、サラは叫び声を上げて床に倒れる。膝下が骨折しており、講師達はサラを連れて行く。ジョセフが心配そうに見送った
家に戻ったジョセフの前に、長く生き別れた妻が現れる。感極まったジョセフは、妻を抱いて夜の街を歩いた。ふと気が付くとバレエ団の前に来ており、妻の姿は消えていた。そこへ、講師達が飛び出して来て無理やりジョセフを中へ連れ込んでしまう。
サスペリア現る
部屋に居たスージーは、不思議な光に導かれる様に建物内の秘密の部屋へやって来る。大勢の女性が儀式の踊りを繰り広げていた。呆然と立ち尽くすサラや全裸にされたジョセフも居る。そして、体が腐敗し始めている老女マルコスがスージーへ視線を向けた。
佇むサラのお腹から、内臓が取り出される。スージーは、ブランク夫人に、自分は覚悟が出来た、皆十分に待ち、このために自分は来たと言う。しかし、ブランク夫人はスージーを止め、何か様子が変だと儀式自体を中止しようとする。
怒った老女は立ち上がり、振り上げた腕を勢いよく下ろした。するとブランク夫人の首が割れて血が吹き出す。老女は実の母親を放棄して自分を受け入れろとスージーに近づく。そこへ地下から全身黒く長い指を持つ死の化身が現れる。
老女は、お前は何者だとスージーを問い詰めた。私が3人の母の魔女・嘆息の母(サスペリア)だとスージーは答える。死の化身がキスをすると、老女は絶命。マルコスに忠実だった講師達を死の化身が次々と命を奪って行く。
サスペリアは、中央に佇んでいたパトリシアとサラに望みを尋ねる。2人は両方とも死を望んだ。サスペリアが顔に触れると、2人共床に崩れ落ちた。他の女性達は、尚も踊り続けていた。
翌朝、講師に付き添われたジョセフは、バレエ団から解放される。うなされて目が覚めた生徒達は、ワインを飲み過ぎたと話しながら朝のレッスンへ臨む。ブランク夫人は意識を取り戻すが首は割れたままで動けない。
ジョセフの下にサスペリアが訪れる。自分の娘達がした事を悔やんでいるが、介入して止める立場に無かったと話す。ジョセフは真実を知るに値すると言い、ジョセフが長く帰りを待つ妻について語り始めた。
南へ逃げようと試みたものの国境警備隊に拘束され、収容所へ送致。20日間生き延びたが、1943年11月に4万人の収容者と共に凍死させられた。彼女が最後に思った事は、ジョセフが誕生日に連れて行ったショパンとブラームスのコンサート。
寒かったが死ぬのを恐れてはおらず、ジョセフの事だけを考えていた。耳を傾けながら涙するジョセフ。話し終えたサスペリアはジョセフの頬に優しく手を触れ、パトリシア、サラ、そしてスージーの記憶を消した。
『サスペリア』を観た感想
基本はオリジナルに忠実でありながら、全く異なるアプローチで制作された『サスペリア』。ルカ・グァダニーノの非常にクリエイティブで興味深い解釈でとても楽しめました。赤と黒でインパクトを持たせ、時代はセピアで統一。雰囲気作りも緻密です。
70年代の冷戦時代、まだ西と東に分かれていたドイツの政治状況を織り交ぜながら、混沌として時代背景を利用し更に舞台となるバレエ団の不気味さに深みを与えています。宗教色を出さず、神と悪魔になりがちなハリウッド映画との差別化にも成功。
斬新な設定に古代史から存在しり魔女の伝説を上手く物語に組み込んだ脚本家デヴィッド・カイガニックにも脱帽します。グァダニーノは『胸騒ぎのシチリア』以来、カイガニックとは親しい間柄で、キャラクターを創り上げる才能を絶賛。
グァダニーノは、同作でダコタ・ジョンソンとティルダ・スウィントンを起用しており、俳優として大きな信頼を置いています。目を見張るのは、スウィントンが演じるジョセフです。初老男性の姿勢から歩き方、そして手の動きまで卓越した技術です。
また、オリジナル『サスペリア』と違うのは、主人公のスージーが本作では3大魔女の1人サスペリアである事で、魔力を乱用し無垢な人間を貶めた魔女達を成敗するために現れます。オリジナルでは、バレエ団の権力を握るサスペリアを倒すのがスージーです。
また、本作のサスペリアは悪ではなく、巻き込まれたジョセフの深い悲しみを理解し妻の死について真実を伝える暖かみを持つ魔女であり、責任を感じないようにパトリシアとサラに関する記憶は消して姿を消す見事なエンディングです。
特筆すべきは、再度観るには抵抗があるオルガの痛々しいダンス。3日かけて撮影され、本作で最もホラーらしい場面です。ロシア人ダンサーのエレナ・フォキナが演じており、本作が俳優デビュー。CGもワイヤーを使わず彼女の演技だけで描かれました。
全員魔女のバレエ団で、長年最強の魔女だと偽っていたリーダーが年を取り、新たに乗っ取る体を手に入れるため、主役に選んだ若い女性を生贄にする儀式が「ヴォルク」。複雑なシンボルや魔術の説明も無いので物語がシンプルに展開し理解しやすいです。
『サスペリア』だけが自分の作るホラー映画ではないと断言するグァダニーノ。大のホラー映画ファンで、ホラー映画の監督になりたかったとインタビューで明かしており、今後も怖い映画を作りたいと意欲を示しています。
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