『アド・アストラ』あらすじ・ネタバレと感想!ブラッド・ピットの集大成!

『アド・アストラ』は、太陽系を舞台にしたSF・スリラー映画です。人類の危機に直面した地球。その鍵を握るのは、消息を絶った極秘任務に従事する科学者クリフォード・マクブライド。宇宙飛行士のロイは、父親・クリフォードを探す任務を命じられ海王星へ向かいます。主演はブラッド・ピットで自身所有のブラン・Bが製作。

『アド・アストラ』作品情報

タイトル:アド・アストラ

原題:Ad Astra

監督:ジェームズ・グレイ

脚本:ジェームズ・グレイ、イーサン・グロス

製作:ジェームズ・グレイ、ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ロドリゴ・テイシェイラ、アンソニー・カタガス

公開日:2019年9月20日(アメリカ)(日本)

出演者:ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド、ジョン・オーティス

『アド・アストラ』概要

監督と脚本の共同執筆を務めたのは『リトル・オデッサ』のジェームズ・グレイ。本作のプロデューサーも兼務するブラッド・ピットは、製作費を集めるのに大変苦労しており、ニュー・リージェンシーが関わらなければ映画化はできなかったと話しています。また、グレイはCGを多用しなかった為、10メートル空中にピットを吊り上げた状態で撮影。月面はカリフォルニア州のモハビ砂漠がロケ地。

キャスト

主人公ロイ・マクブライドを演じるのは、ブラッド・ピット。父親クリフォードは、9才の時からSFファンだと語るトミー・リー・ジョーンズが扮します。ロイの妻・イヴをリヴ・タイラー、そして火星の指揮官ヘレン・ラントス役は『ラビング 愛という名前の二人』のルース・ネッガ。

『アド・アストラ』あらすじネタバレ

近未来。宇宙飛行士のロイ・マクブリーは、船体活動を実施中に電力サージに見舞われる、宇宙から落下しパラシュートを開いて着地を成功させたロイは、何とか難を逃れた。義務化された心理鑑定もロイの平静を認識し問題無しとなった。

父親・クリフォード

ロイは、軍の上官から呼び出され極秘情報を聞かされる。リマ計画について知っている事を尋ねられたロイは、人類初の太陽圏外における探査活動だと答える。20年以上前に地球を出発し、リマ計画の指揮官に就いていたのはロイの父親・クリフォードだった。

その後調査開始から16年が過ぎた頃、宇宙船は消息を絶ち回収できた情報は皆無であり、新宇宙探査は中止されたとロイは補足する。上官は、クリフォードが探査を行っていた海王星でまだ生きていると告げた。

そして、反物質が何らかの反応を起こした結果電力サージを引き起こしていると言う。更に、リマ計画は反物質をエネルギーとして稼働していた為、クリフォードがサージを誘発しているのかもしれないと上官は続けた。

阻止できない連鎖反応が起きて制御不能な反物質が解き放たれれば、太陽系全体の安定を脅かす可能性があり、それは生命の絶滅を意味していた。人類にとっての未知の危機を防ぐ為、ロイは火星から個人的なメッセージを父親へ送信するよう指示された。

軍の上層部から父親の生存を明かされたロイは動揺する。英雄だと聞かされていた父親が人類絶滅の危機に関わっている可能性を信じられないでいた。ロイは、離れて行った妻・イヴに宇宙へ行く事を伝えようとするが、途中で音声メッセージを消去した。

極秘ミッション

最終目的地の海王星に向けた発射台は火星に存在。その火星へ向かうには月へ行く必要があった。ロイは、ベテラン宇宙飛行士・プルイットと一緒に月に到着。観光客で混雑していた。ロイは、父親と親交のあったプルイットに何を最後に話したのか尋ねた。

プルイットは、「裏切り者扱いされた」と答える。火星行きの発射台に向かう道中、ロイを乗せた車両が治安の悪い月面を走行していると、資源を狙う略奪者が奇襲して来た。ロイは応戦するも、車は深いクレーターに突き落とされプルイットが怪我を負う。

任務の続行が困難となったプルイットは、そのまま月に滞在し手術を受けることになる。ロイはプルイットから機密情報を託され、他の船員と共に火星へ飛び立つ。プルイットが渡した情報はクリフォードに関するブリーフィングだった。

リマ計画の実施中に船員からSOSシグナルが送信されており、クリフォードが外部との全通信を切断したと報告していた。クリフォードは木星に行った最初の人間であり、土星への飛行経験も有していた科学者。ロイが誇りに思っていた父親だった。

ロイを乗せた宇宙船は救難通信を受診。発信元である宇宙船へ立ち寄る。応答が途絶えた船内にロイ達が中へ入ると、実験対象だったヒヒに襲われた。船長が亡くなり、宇宙へ遺体を送り出す。心理鑑定を受けたロイは、長く抑えていた怒りを認めた。

突然消えた父親を許せない思いや苛ついて周りを労われない自分を認め、クリフォードの様な男になりたくないと鑑定中にこぼす。常に冷静さを要求される宇宙飛行士ロイにとって初めての告白だった。分析の結果、任務の続行許可が下りた。

火星へ向かっていた途中、強い電力サージが襲い船体は機能不全に陥る。ロイが手動で宇宙性を動かし、無事に火星へ着陸を成功させる。基地に到着したロイは、クリフォードに向けて呼び掛ける試みを開始。幼い頃の思い出に触れ、もう一度会いたいと言った。

すると、通信室が慌ただしくなり、結果を知らされないまま、ロイは任務終了を告げられ地球への帰還を命じられる。そして、また心理鑑定を受けるよう指示されたロイは、動揺を隠せず任務続行不許可という分析結果を受けた。

真実

地球へ緊急通信を行おうとしても、ロイのアクセスコードは無効化されている。火星基地の責任者ヘレンがロイを訪問。彼女は、リマ計画に参加した両親を失っていた。その日何が起きたのか教えると言って、ヘレンはロイに軍の極秘記録を見せた。

そこには、緊急通信の後にクリフォードが送信して来た最後の通信が映像ファイルで残されていた。遠い海王星で長く家族と離れる環境にストレスを溜めた船員は勝手に地球へ戻ろうと反乱を起こし、クリフォードと乱闘に発展。

宇宙船を支配されそうになった艦長のクリフォードは、戦闘の末に彼等の生命維持装置を停止したのだった。更に、ヘレンは、電力サージを阻止する為にリマ計画を続行している宇宙船を核で破壊する事が軍の真の目的だと明かす。

海王星へ

彼女の助けを得たロイは、海王星行きの宇宙船に潜り込む。ロイの侵入を知った飛行士達は強制排除を試みるが、戦闘の末飛行士が撃った銃弾が船内に穴をあけてしまう。ヘルメットを被っていたロイだけが真空から身を守り、船員は皆窒息死した。

海王星へ向かう孤独な時間が延々と続く。ロイは疎遠になっている妻を思い出し、自分のいたらなさを知り後悔に襲われる。そして、遂に青く光る海王星が眼前に見えてきた。小型船に乗り込んだロイは父親に相対する事を恐れていた自分に気づいた。

宇宙船からは応答が無く、ロイはハッチを開けて中へ入る。所々に浮遊する死体を通り過ぎオフィスに行き着く。クリフォードが今も地球外生命体の存在を信じて仕事に打ち込む様子がありありと分かった。

更に奥へ進んだロイが持参した核爆弾をセットしようとした時、懐かしい父親の声が自分の名前を呼んだ。クリフォードも同様に電力サージを止めようとしていたと言う。ロイが地球へ戻ろうと声を掛けると、父親はここが自分の家だと抵抗を示す。

リマ計画が自分の全てであり、その運命を選択する為に息子を捨てたと話すクリフォードに、ロイは、それでも父親を愛していると言った。地球へ帰る時が来たと諭し、父親に宇宙服を着せたロイは、核爆弾の起動スイッチを入れた。

永遠の別離

宇宙船外へ2人が出た所で、クリフォードは、腰部分に装備された窒素ガスを噴射して逃げようとする。しかし、固定している命綱でロイも引っ張られてしまう。「行かせてくれ」そう言うクリフォードをロイが綱を手繰り寄せた。

真剣な目で息子を見つめたクリフォードは全てを忘れろ、と自由にしてほしいと頼む。ロイは、どうしても行きたければ自分でフックを外せと言った。クリフォードはロイと自分を繋ぐフックを外し「息子よ、愛している」そう言い残した。

真っ暗な宇宙へ流れて行く父親を見つめながら、ロイは泣きじゃくる。ロイは、宇宙船の上部で動くプロペラの回転力を弾みにしながら外した1枚のプロペラで船を離れた。羽を防御に使い、海王星を回る大量の小岩を避けながら何とか自分の宇宙船に戻った。

地球までの距離27.14億マイル(43.42億キロ)。帰還する為の燃料は無い。ロイは、核爆弾の衝撃を主要な推進力も利用すると記録に残し、自分が生きて戻れない事を想定し、リマからデータを収集した事も補足した。

エンジンを点火したロイの乗る宇宙船は、後方で凄まじい音を立てて爆発した核の衝撃波で一気に押されて行く。地球に帰還し、ハッチを開ける兵隊の手を掴んだロイは、萎えた足を引きずられる様に歩いた。

心に平穏を取り戻したロイをイヴが訪れる。ロイは、周囲を労わり愛して生きようという境地へ辿り着いた事を心理鑑定の席で語った。

『アド・アストラ』を観た感想

アド・アストラ(Ad Astra)はラテン語で星へと言う意味ですが、父親・クリフォードを求めて、気の遠くなる距離を航行し太陽系の端に在る星・海王星へ辿り着いた主人公が自分自身を発見する旅を描いています。

自分を捨てた父親は、地球外生命体の探索というリマ計画に飲み込まれ、宇宙にしか存在価値を見出せず、地球に帰るぐらいなら暗黒の闇で死にたいと望みます。小さい頃から父親の姿を追い求めて宇宙飛行士になった息子は、その父親と永遠の別れる事になります。

消息を絶ったクリフォードに会った事で踏ん切りがついたロイは初めて心に平和を取り戻すと言う結末を迎えるエンディングは、文学的な趣さえ感じる哲学性のある内容でした。静かな中に秘めた情熱や葛藤を、ロイを演じたブラッド・ピットが好演。

大きな事故に巻き込まれても、妻が出て行っても冷静沈着さを要求される宇宙飛行士。父親クリフォードが生きていると告げられた時、ピットは抑制された驚きを見事に描写しています。本作の演技は、キャリア最高と批評家は絶賛。

また、『アド・アストラ』の監督・脚本を兼務したジェームズ・グレイは、これまで宇宙人襲来や地球に訪れた宇宙人との交流を題材にした映画は多いものの、「もし他に誰も居なかったら」と言う疑問がふと過ったと話します。

解明されていない謎の多い宇宙に対する人間の興味が尽きない中、グレイも地球の外に憧れを抱く1人です。半世紀以上も前に出版された宇宙に関する書物からNASAが計画している2024年の月面飛行まで、グレイは映画製作とは関係なくリサーチをしています。

本作の製作に当たり、専門用語を使って難しく宇宙を説明するのではなく、グレイは人間に焦点を絞ってストーリーを展開させます。地球から43億キロ以上離れた太陽系の端まで行ってこそ到達した宇宙飛行士の心情がリアルに描写されています。

宇宙は果てしない無の連続と評されますが、その何も無い雰囲気を見事に映像化した作品で、背景音楽の重厚さと共に観る者を一気に未知の空間へ引き込んで行きます。

『2001年宇宙の旅』や『惑星ソラリス』を彷彿とさせる大仕掛けのSF映画『アド・アストラ』ですが、ストーリーはロイ・マクブライドの心の旅であり、批評家は『地獄の黙示録』を挙げて本作を評価しています。

グレイは、「意識、無意識、そして潜在意識を避けて人の魂を語る事は出来ず、その幾重にもなる層を剥がすようにしても人間のコアには行きつけない」と話し、本作を通し掘り下げて探求したかった事だと製作の意図を説明しています。

男性のロマンを合理的観念と繊細な感情を織り交ぜて描かれた『アド・アストラ』は、人間が持つ重層的な意識は宇宙の複雑さと匹敵すると言うメッセージが込められた作品です。

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