映画『ガルヴェストン』あらすじ・ネタバレと感想!エルファニングが大人の女性を演じる!

『ガルヴェストン』は、暗殺者・ロイと娼婦・ロッキーの逃避行を描いたクライムスリラーです。ニューオリンズの大物マフィア・スタンの下で殺人や脅迫を請け負うロイは、ある日スタンに監禁されたロッキーを助けます。2人は、ロイの故郷ガルヴェストンを目指しますが、ロッキーの頼みで自宅へ寄った事を切っ掛けに大きく歯車が狂い始めます。

『ガルヴェストン』作品情報

タイトル:ガルヴェストン

原題:Galveston

監督:メラニー・ロラン

脚本:ジム・ハメット

原作:ニック・ピゾラット『逃亡のガルヴェストン』

製作:タイラー・デヴィッドソン

公開日:2018年10月19日(アメリカ)、2019年5月17日(日本)

出演者:ベン・フォスター、エル・ファニング、ロバート・アラマヨ、CK・マクファーランド、ボー・ブリッジス

『ガルヴェストン』概要

クエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』で復讐するユダヤ人・ショシャナを演じて脚光を浴びたフランス人俳優・監督のメラニー・ロランが本作のメガホンを取りました。物語の原作者ニック・ピゾラットが脚本を書きましたが、ロランの解釈で大きく変更されたため、作家は自分のペンネームを使用する経緯がありました。

キャスト

『ローン・サバイバー』のベン・フォスターが主人公ロイを演じ、『マレフィセント』のオーロラ姫で注目されたエル・ファニングがロッキー役に扮します。また、実力派俳優ボー・ブリッジスがマフィアのスタン役で登場し脇を固めます。

『ガルヴェストン』あらすじ・ネタバレ

殺し屋のロイは病院で肺癌と宣告を受ける。トラックに乗り込み苛ついたロイは、一瞬躊躇するが直ぐに煙草に火をつけた。だだっ広いドライクリーニングの工場を抜け、仲間がたむろする休憩所へやって来る。スタンの情婦・カルメンがロイを睨んでいた。

ボスのスタンが訪れロイに次の仕事を命じ、非協力的な相手を脅すだけで銃は使うなと注文を付けた。医者に胸の調子を診てもらったのかと尋ねるスタンに、ロイは大したことは無かったと答えた。

カルメンとロイを交互に視線を投げたスタンは、問題は無いかと訊く。横を向くカルメンをよそに、ロイは問題無しだとスタンを見つめ返した。森の外れに在る自宅へ戻ったロイは、ブーツにナイフを忍ばせ、逡巡した後に銃を腰に携帯した。

運命の出会い

夜になり、標的の弁護士宅に目出し帽を被ってパートナーと押し入ったロイは、待ち伏せに遭う。一緒に忍び込んだ相方は射殺されるがロイは反撃。警察のサイレンが聞こえる中、椅子に拘束されていた若い女性・ロッキーを助けてその場から逃走した。

自宅へ戻ったロイは荷物をまとめトラックのナンバープレートを交換しロッキーを連れて家を出る。カルメンと付き合っていたロイの存在をうるさく感じたスタンに命を狙われている事に気づいたロイは暫く身を潜めることにした。

テキサスのオレンジ郡に育ったロッキーは、電話帳の広告を見てまともなビジネスだと信じエスコートサービスで働き始め知らぬ間に娼婦になった経緯を悔しそうに打ち明けた。組織から逃げ出し安堵の表情を浮かべるロッキーは、ロイに着いて行くと言う。

実家へ送るので家族の下へ帰れとロイは諭すが、ロッキーは絶対に嫌だと拒んだ。自分に何してもお金は要らないとしな垂れかかるロッキーに、ロイは最低だと突き放した。安宿に部屋を取ったロイは、ロッキーをベッドに寝かせ自分は椅子で眠った。

逃避行

翌日中古車に乗り換えた2人は、町からなるべく離れようと先を進む。貸しているお金を返してもらうのでオレンジ郡へ向かって欲しいとロッキーに頼まれ、ロイは掘っ立て小屋の前で車を停めた。着替えとお金を取って来ると言ってロッキーが家に入って行く。

突然銃声がした後、服を詰めたビニール袋を掴んだロッキーが幼女・ティファニーを抱えて車に乗り込んだ。義父を脅すために壁に向けて撃ったと話すロッキーは、妹も連れて行くと主張。気の進まないロイだったが、仕方なく2人を伴いテキサスのガルヴェストンを目指す。

海沿いの簡易宿泊所に2部屋チェックインの手続きをするロイに、オーナーのナンシーはロッキーとティファニーを見て自分の子供かと尋ねる。姪だと答えたロイに対し、ナンシーは、自分が宿泊所に常駐し多くの地元警察官は知り合いだと牽制した。

独りで行きたければそうしてくれと懸命に強がるロッキーに、ロイは良く寝てまた考えようと返答した。夜中に誰かが扉を叩き、ロイは拳銃を握りカーテン越しから外を覗く。

ティファニーを抱くロッキーは怯えた表情で悪夢にうなされ一緒に寝かせてくれと頼む。ロイは仕方なく招き入れた。翌日、ロッキーから妹のティファニーは海を見た事が無いと聞いたロイは、近くの浜辺へ連れて行く。

ロッキーは一時もティファニーを抱いて放さず、波にたわむれ一緒にはしゃぐ。ロイは砂浜に座り、黙って2人の様子を見つめる。ロッキーはロイの隣に腰を下ろし、ありがとうと笑顔を向けた。ロイになついたティファニーが無邪気にイタズラ。

夜、宿泊していた客・トレイからロイはビールを誘われる。トレイとの世間話で、ロッキーは姪で一緒に休暇中だとロイは言った。トレイは自分が腕の立つ泥棒だと自慢げに話し、ロイに仕事を持ち掛ける。報酬は1万ドルだと聞くが、ロイはやんわり断った。

収入の目途が無く体調の不安に襲われたロイは、酒を飲んだ後肺癌を告知したスタンの息が掛かる医者に連絡を入れ余命を尋ねる。生研しなければ分からないと話す医者に八つ当たりし、住所を読み上げギャンブルに興じている事を家族にばらすと脅した。

翌日、宿泊所に設置されたプールで泳ぐロッキーにトレイが話しかけているのをロイが警戒する表情で見つめた。出身地を尋ねられたロッキーは、テキサスのオレンジ郡だと答えた。

ロッキー

ダイナーでコーヒーを飲みながら新聞に目を通したロイは、オレンジ郡で男性が射殺されたと伝える記事を目にする。3才と19才の娘ティファニーとラケルが行方不明だと報じていた。

スタンに追われているロイはこれ以上ロッキーと一緒に居るのは危険だと感じ、その新聞をゴミ箱に捨て2人を置いたまま車で出て行く。その姿をトレイがじっと見つめていた。元彼女・ロレインに電話をしたロイは、そのまま家を訪れた。

楽しい時だけを覚えていたロイとは違い、11年振りに再会したロレインは結婚しており、酒ばかり飲んでいたロイと将来を考えてはいなかったと冷たい。命が長くないとロイが明かしても、ロレインは受け入れなかった。

置き去りにしたロッキーが気掛かりで宿泊所へ戻ったロイは、ナンシーからロッキーが男を部屋へ連れ込みティファニーを隣の客に子守をさせていると聞かされる。

腹を立てたナンシーは、酷い格好で酒の臭いが常にするロイを通常なら追い出して保安官に通報しているところだが、福祉施設送りになるティファニーを不憫に思い出来ないでいたと苦々しく言い捨てた。

ロッキーの実家の方がよっぽど醜悪で、自分は助けただけだとロイは自己弁護する。ナンシーは、2人を置いて行くなら保安官へ連絡しろと言った。黙って事務所を出るロイをトレイがニヤついて見つめていた。ロイは、ロッキーを見かけなかったか訊く。

ロイが捨てた新聞を見て、ロッキーとティファニーが失踪した娘と同じ名前だと気が付いたトレイは、盗みの仕事を手伝えとロイを脅した。自分が警察に掴まれば、司法取引で殺人犯としてロッキーの事を明かすとトレイは狡猾な表情を浮かべた。

ロイは頷き日が暮れるまで待ってから取り掛かろうと言った。町を車で探し回るがロッキーは見つからなかった。夜になり、ロイはトレイと待ち合わせの場所で落ち合い車に乗せる。指示された人気の無い路地で車を停めたロイはトレイと歩き出す。

隙を見て背後からトレイの首を掴み、骨を折って殺害した。灯の無いあぜ道でトレイの遺体を捨て、ロイは宿泊所へ引き返す。夜遅く客の相手をしたロッキーが戻って来る。体を売るロッキーに、ロイは、福祉事務所に電話すると怒りを露わにした。

泣いてロイを罵るロッキーに対し、義父を殺した事をロイは詰問した。ロイも人殺しだとロッキーは言い返す。ティファニーが妹ではないと薄々気づいていたロイがその事を確かめると、義父に強姦され生まれた娘だが心から愛しているとロッキーは嗚咽した。

若い親子のために

翌日、公衆電話からスタンへ連絡したロイは、押入った弁護士の家から持ち出した貨物の積荷目録が自分の手元にあると伝える。7万5千ドルの送金を要求し、飲まなければFBIに垂れ込むとスタンを恐喝した。

ロイは、ロッキーに食事に出かけようと誘う。嬉しそうに微笑むロッキー。夕暮れ時、赤いドレスを着たロッキーを岬へ連れて行ったロイは、お金の目途が有り援助するので高校の卒業証明書を取れと勧める。子守を雇い必要なら学校へ行けとロイは言った。

自分やティファニーの為に何かをやり遂げろと背中を押され、ロッキーは納得して頷く。海辺のオープンバーで曲に合わせリズムを取るロッキーは、ロイの腕を引っ張る。照れ臭そうな表情を浮かべるロイだったが、ロッキーの手を取り踊り出す。

奪われた恋

楽しい時間を過ごした2人は宿泊所へ向けて帰路に着く。しかし、スタンの手下が待ち伏せしており、ロッキーは連れ去られてしまう。散々ロイを拷問したスタンは、ロイが脅した医者から所在を突き止めたと言い、ロッキーが随分抵抗したと嘲笑った。

スタンと手下が目を放した隙を見計らい、カルメンが忍び込んでロイを解放し逃がす。ロイは足を引きずりながらロッキーを探す。ビルの一室に、全裸でうつ伏せになり息絶えたロッキーを見つける。顔や体は傷だらけだった。

咽び泣きながら古いカーテンを破ってロッキーに被せ、ロイは必死に出口を求めて歩き出す。スタンのアジトであるクリーニング工場の従業員に混じってスタン達がたむろしている目を盗み、鋏を掴み見つからないよう抜けて行く。

やっと外へ出たロイは見張りを刺殺し車を奪って逃走するが、衝突事故を起こし病院へ運ばれる。検査をした病院は、ロイの体調悪化は真菌による感染症が原因で、肺癌は誤診だった事を突き止めた。

安堵したロイだったが、殺人で警察に逮捕され、スタンのお抱え弁護士が面会に来た。司法取引を拒否してスタンの名前を明かさず大人しく服役すれば、ティファニーの安全を約束すると弁護士が交換条件を出した。

人生を捧げて守ったもの

20年後、出所したロイはガルヴェストンに住んでいた。嵐が迫ったある日、若い女性がロイを訪ねて来る。それは成長したティファニーだった。ナンシーからロイの名前を聞いたティファニーは、探偵を雇い刑務所の記録を追跡してロイを探し出していた。

テキサスのオースティンに住み、グラフィックデザイナーとして広告の仕事に就いていると話すティファニーは、婚約者が居る美しく聡明な女性だった。その婚約者に勧められてロイを探したティファニーは、“姉”・ロッキーの事を知りたいと目に涙を浮かべた。

一緒に皆で海へ言った事を覚えていたティファニーは、ロッキーが姿を消したため、捨てられたと思っていた。ロイは、全てを打ち明ける事を条件に、嵐の上陸前に町を出るようティファニーに言い聞かせた。

頷いたティファニーを見たロイは、ロッキーが姉では無く母親だった事を明かす。娘を救うために勇気ある行動を取り、決して見捨てなかったとロイは語った。

ロイは嵐が上陸した町を歩く。海辺に立つ赤いドレスを着たロッキーの姿がまぶたの裏に浮かんだ。激しい雨に打たれる中を、振り返って笑顔を見せたロッキーを思い出しながらロイは更に歩く。

『ガルヴェストン』を観た感想

悲劇的なフィルム・ノワール作品である『ガルヴェストン』は、現代から20年前の過去へ遡り、いわゆるお涙頂戴の作品とは一線を画し孤独な2人の関係を淡々と物語ります。無理に性描写を加えていない所も非常に好感が持てる構成。

プラトニックな関係だからこそ生まれるお互いの純粋な思いがスクリーンからじわじわと伝わり、忘れたいだけの過去しか持ち合わせていない2人が次第に築く絆に微笑ましさを感じます。

自分を殺そうとしたスタンに対し、復讐ではなくロッキーの将来のために恐喝を試みるロイの行動は、破滅的で更に状況を悪化させる懸けであっても、無私無欲。一度も真っ当な路を歩いた事の無かった殺し屋が表す精一杯の愛情でした。

本作の演技がキャリア最高と絶賛されたロイ役のベン・フォスターは、清純と評判を聞いていたロッキー役・エル・ファニングのファンでした。一度一緒に仕事をしたいと望んでおり、『ガルヴェストン』でその願いを果たしています。

監督を務めたメラニー・ロランは、フォスター、ファニングと共に毎日現場で話し合い、小さな場面を足して行ったと話します。自身が俳優でもあるロランは、登場人物を演じる俳優達を信じ、大切だと感じた要素はオープンに取り入れました。

ロランの作品『呼吸‐友情と破壊』を観て魅了されていたフォスターは、本作に出演後、ロランの監督手法が詩的で印象絵画的だと賞賛。実際、ハリウッド監督ならカーチェイスやロイとロッキーの性描写を盛り込んで台無しになっていたかもしれません。

空気を描写する事に長けているのがフランス人監督であり、ロランも社会の底辺でもがく2人を最小限の台詞で色彩鮮やかに描いています。ティファニーを守るためだけに20年服役したロイは、ロッキーの思い出だけで生きて来た事が分かるエンディングでした。

『ガルヴェストン』は、脇を固めた俳優陣の演技が光っています。宿泊所のオーナーに扮したCK・マクファーランドは、日本生まれの米俳優ケイリー=ヒロユキ・タガワも出演する『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』等キャリアの長い俳優です。

そして、トレイ役で見事なアメリカ英語を話すロバート・アラマヨは、『ゲーム・オブ・スローンズ』のネッド・スタークを演じ注目を集めたイギリス人俳優です。

また、本作に関し報道された脚本家との確執ですが、『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』の脚本も執筆したニック・ピゾラットがシーズン1の撮影現場に臨んだ際も、監督のキャリー・フクナガと衝突した事を本作の製作者タイラー・デヴィッドソンが明かしています。

ロランが監督の契約を締結した時、どんな映画にしたいのか明確なビジョンが有り、製作側は皆彼女のアイデアを支持。ロランの名前が脚本の共同執筆者としてクレジットされるべきだったとデヴィッドソンは話しており、実際本作は批評家から好評を得ています。

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