映画『バイス』あらすじとネタバレ!無料動画を視聴する方法も紹介

公開直後のアメリカで物議を醸した映画『バイス』。2000年に発足したブッシュ政権下、陰の大統領と呼ばれたチェイニー副大統領が前例に無い強大な権力を握り、行使していく様を暴露するコメディ作品です。主役のクリスチャン・ベールは、チェイニーに成り代わった演技と絶賛され、ゴールデン・グローブ主演男優賞を獲得し、アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされています。

今回はバイスのネタバレと動画の無料視聴方法をご紹介します。

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『バイス』作品情報

タイトル:バイス

原題:Vice

監督:アダム・マッケイ

脚本:アダム・マッケイ

製作:アダム・マッケイ、ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クレイマー、ウィル・フェレル、ケヴィン・メシック

公開日:2018年12月25日(アメリカ)、2019年4月5日(日本)

出演者:クリスチャン・ベール、サム・ロックウェル、スティーヴ・カレル、エイミー・アダムス、タイラー・ペリー、ジャスティン・カーク、エディ・マーサン

『バイス』概要

本作の監督と脚本を兼務した『マネー・ショート』のアダム・マッケイは、全て事実と断言します。風邪を引いた時に読んだディック・チェイニーの伝記がきっかけでリサーチを開始。ジャーナリストを雇い、当時の状況を知る人達からもオフレコでインタビューしました。集めた情報は膨大で、劇中には実際に当人達が使った言葉も多く使われています。

キャスト

どんな人物でも演じられるクリスチャン・ベールがディック・チェイニーに扮します。『スリー・ビルボード』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したサム・ロックウェルがジョージ・ブッシュ、『ビューディフル・ボーイ』のスティーヴ・カレルはドナルド・ラムズフェルド、そしてチェイニーの妻・リンをエイミー・アダムスが演じる等、豪華キャストが勢揃いしています。

『バイス』あらすじ・ネタバレ

2001年9月11日、午前9時38分、大統領危機管理センター。シークレット・サービスに護衛されディック・チェイニーが入室。直ちにFAA(連邦航空局)に飛行中の航空機数を確認し、電話回線が常時繋がっている状態を確保するよう指示を出す。

コリン・パウエル国務長官、コンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官、ルイス・リビー(スクーター・リビー)副大統領首席補佐官、そして妻のリン・チェイニーも危機管理センターに居た。

ライスがPOTUS(米国大統領の略)からチェイニーへ連絡が入っていると取り次ぐ。チェイニーは、エアフォース・ワンで引き続き空中待機する方が良いとブッシュ大統領に助言。電話を切ると国防省長官(ペンタゴン)のラムズフェルドから電話が入った。

民間飛行機に対する交戦規則はどうするのかとラムズフェルドが尋ねる。大統領の指示を仰ぐために連絡を取ろうと受話器を掴んだライスをチェイニーが制止。チェイニーは、脅威と見なした航空機の撃墜権限を与えたると告げる。

ラムズフェルドは間髪入れずに、大統領権限なのか?と訊きかえす。チェイニーは、その通りだと答えた。皆の顔に一瞬動揺が走る。

この日、誰もが混乱し、怯え、不安を抱えていたが、チェイニーだけは違った。彼はチャンスと捉えたのだ。チェイニーが権力の座に就いて何百万人の人生が永遠に変わってしまったが、彼はまるで亡霊の様に陰で事を実行した

平凡だった男と野望を抱く妻

多くの人は、チェイニーの人物像や何処から来たのかさえ知らなかった。後に妻となるリンの助けでイエール大学の奨学金を得たが、酒と喧嘩が絶えず退学。ワイオミングへ戻り、電気工として就職した。

23才の時チェイニーは2度目の飲酒運転で逮捕される。保釈後、妻のリンは怒り心頭。アル中の父親で苦労した母を見ながら育ったリンは、今後変われないのなら別れると最後通牒を突きつけた。チェイニーは何度も謝り、二度と失望させないと妻に誓う。

‐静かな男には用心しろ。周りが話している時に観察しているのだ。周囲が行動している時、その男は計画を練っている。そして、皆が休んでいる時、奴は攻撃を仕掛ける…作者不明‐

1968年、ワシントンD.Cへ来たチェイニーは、議会のインターンプログラムへ参加する。壇上で挨拶に立ったのは、下院議員だったラムズフェルド。歯に衣着せぬ物言いをするラムズフェルドに付いて学ぼうとチェイニーは決めた。

ラムズフェルドに学ぶ

ニクソン政権時代。様々な役職を歴任していたラムズフェルドは、新米のチェイニーに3つを求めた。余計な事は言わない、言われた通りに動く、そして常に忠誠を尽くす事。

チェイニーは成績優秀でもなくスポーツの才能が有った訳でもないが、権力に対しては貪欲だった。窓は無いが自分だけの小さなオフィスを与えられたチェイニーはリンに電話する。大統領に会って握手したと伝えると、リンは高笑いし有頂天。

ある日、ニクソンはキッシンジャーと大統領執務室ではなく、狭い会議室で密談をしていた。ラムズフェルドは、2人がカンボジアを近いうちに爆撃するとチェイニーに話す。何千人が命を失い良くも悪くも世の中を変えてしまう力がホワイトハウスに宿ると話す。

ウォーターゲート事件が起きニクソンが辞任。副大統領のフォードが大統領に就任した。ラムズフェルドとチェイニーは、キッシンジャーの妨害を始める。ラムズフェルドは史上最年少の国防長官、チェイニーは史上最年少の大統領補佐官に任命された。

しかし、次の大統領選で民主党のカーターが勝利し、原油に頼らないエネルギー政策を謳い、ソーラーパネルを導入。チェイニー達は職を失った。下院議員選に立候補したチェイニーは、選挙期間中に心臓発作で入院する。

2週間安静を言い渡されたチェイニーに代わり、選挙民に支持を訴えて回ったのが妻のリンであった。不当な待遇を受けて来た少数派に教育や雇用の機会を優先的に与える政策・アファーマティブ・アクションを批判。この後、チェイニーは10年議席を守った。

レーガン政権が誕生し、共和党が権力を取り戻す。ソーラーパネルは即刻取り払われた。この頃、チェイニーの次女・メアリーは自分がゲイであると両親に告白。野心家のリンは世間体を気にするが、チェイニーは全面的に娘を支持した。

ブッシュ(ジョージ・ブッシュの父親)大統領時代、チェイニーは国防長官に就任。数年後の大統領選挙を念頭に入れるが、メアリーがやり玉にあげられると懸念したチェイニーは、嘘をつこうとリンは言うものの、出馬を諦めて娘を守った。

この後、チェイニーは政界から民間企業へ移り、エネルギー産業の多国籍企業・ハリバートン社でCEOとなる。家族はヴァージニア州に豪邸を構え裕福な暮らしを送った。そこへ、ある日曜日の朝、自宅に電話が入る。

権力の完全掌握

大統領選に立候補したジョージ・ブッシュの選挙対策室からで、チェイニーに副大統領候補として参戦して欲しいと言う要請だった。リンは、副大統領は座って大統領が死ぬのを待つだけの仕事だと揶揄し、シンボルでしかない副大統領職に文句をつける。

チェイニーは、父親のブッシュ政権で仕えた恩があり、話だけでも聞くとリンをなだめた。チェイニーは、自分の法律顧問で行政権一元化論者(大統領が決めた事自体が法律だという絶対権利論)のデヴィッド・アディントンへ連絡を入れる。

チェイニーは、行政府と立法府は副大統領に対する監督を受けないと助言をもらう。チェイニーは一度断ったが、ブッシュから副大統領になって欲しいと再び強く説得を受けた。

自分は国防長官や大統領の首席補佐官を歴任しており、副大統領のようなシンボリックな職には魅力が無いと遠まわしに前置く。副大統領の職務内容は大統領が決定出来る事から、平凡で日常的な仕事を任せて貰えれば…とチェイニーは言葉を選ぶ。

ブッシュは、バーベキューチキンをかじりながら乗り出して話を聞く。チェイニーは、官僚機構の監督、軍隊の管理、エネルギー分野、そして外交に関わる仕事を引き受けたいと話す。ブッシュはクチャクチャ噛みながら「良いね」と言った。

次女メアリーの事に触れたチェイニーは、ブッシュが保守的な南部で同性カップルの結婚に反対しなければならないだろうが、自分は立場を決して変えないと話す。ブッシュは、選挙戦で保守層を取り込むために反対するが、チェイニーの立場を理解した。

全ての結婚は大切だと言ったブッシュは、チェイニーに副大統領候補として選挙へ出馬してくれるかと最終確認をする。自分の要求を全て飲んだブッシュに対し、チェイニーは引き受けるのだった。ブッシュは、「やったぜ」と大喜び。

チェイニーは、医療記録や納税記録など一切開示しなかった。2000年11月7日の投票日。副大統領首席補佐官のリビーは、劇戦となったフロリダ州が票数の再集計を行うと報告。チェイニーは、既に勝利したという方向で権力移行を自ら指揮すると言った。

同年12月12日、行政権一元化論者の合衆国最高裁判所の陪席判事アントニン・スカリアは、フロリダ州に対し再集計を停止させた。ブッシュとチェイニーは、実に僅か537票差で民主党のゴアを破りホワイトハウスへ乗り込んだのだった。

影の副大統領誕生

チェイニーは、早速官僚人事に取り掛かる。集まった側近の前でリビーが新政権の形勢を紹介。チェイニーの右腕である副大統領首席補佐官のリビーが国家安全保障担当補佐官と大統領特別顧問を兼務。

ブッシュ大統領が選んだ側近のアルバート・ゴンザレス、カール・ローブ、カレン・ヒューズは取るに足りない面子であり、殆ど障害無く執務室へアクセス可能。大統領が受信する全てのメールは自動的にBCCで受け取れるよう手配済み。

大統領のスケジュールとその変更は、直ちに通達を受けるようになっているとリビーは説明した。チェイニーは、諜報機関からの日々の定例報告も大統領より先に受ける事になっていると伝える。ラムズフェルドは、ブッシュがこれら全て許可したのかと訊く。

チェイニーは言葉を濁す。副大統領の法律顧問・アディントンは、記録自動保存システムを無効化したので痕跡は残らないと補足した。リビーは、閣僚を紹介。ラムズフェルドが国防長官、ポール・ウォルフォウィッツが国防副長官。

チェイニーは、ペンタゴンがイラク進攻に関し、どんな計画を持っているのか探るよう指示する。ウォルフォウィッツはすかさず、既に進行中だと答えた。ジョン・アシュクロフトが司法長官。リビーは唯一油断ならないのは国務省だと言う。

長官はコリン・パウエルで、外交に信念を持っている。国務次官補のジョン・ボルトンは何をしでかすか分からない人物だが忠誠心は厚い。チェイニーは深く頷いて同意し、自分の長女であり弁護士のリズを国務省へ送りこめと指示した。

リビーは、息のかかった800人のロビイストや業界インサイダーを適宜職に配置済みと補足。ラムズフェルドがブッシュの親しい知人達の名前を挙げると、チェイニーが今期は仕事のオファーをしなかったと答える。ラムズフェルドは、前より冷酷だなとからかう。

チェイニーは、古い知り合いであるレスリングのコーチを下院へ送り、チェイニーの事務所を用意させた。歳入を扱う下院、つまりお金の側に身を置きたかったのだ。

上院議員会館にも2つの事務所、ペンタゴン、そして防音装置が施されたCIAの会議室…チェイニーは至る所で目を光らせた。後に共和党内で税金削減を論議する集会が毎週水曜日に開催。グーグルのマーケティング部門からフランク・ランツが協力した。

地球温暖化から気候変動へと公式用語は変更。民主党が取り組んでいた地球温暖化関連の法案は潰され、超富裕層だけが税金削減の恩恵を享受。チェイニーは、イラクの油田獲得に興味を持つ石油企業募った。そして、9/11が起きる。

シークレット・サービスに連れられたチェイニーが地下の核シェルターへ到着。法律顧問のアディントンと2人だけで密談をする。後に、ブッシュ大統領を含めた閣僚会議でCIAからウサマ・ビンラディン率いるアルカイダの関与が示された。

何年もアルカイダの動向を追っていた他のメンバーも、間違いないと言う。ラムズフェルドがイラクは絶好の標的だと割り込むと、イラクは9/11とは全く関係が無いと反発が起きた。ラムズフェルドは、そんな事は分かるものかと言い返す。

どうして良いのか分からないブッシュは、不安そうに話を聞く。国務長官のパウエルが、アフガニスタンこそアルカイダの本部であり、そこへ集中すべきだと進言。CIAは、タリバンの権力機構を粉砕できる能力を備えていると補足した。

決断を迫る皆の視線がブッシュへ集まる。周囲を見回し、困った表情でチェイニーへ視線を投げるブッシュは、CIAのテネット長官の案で行こうと小さく呟いた。安堵する表情を浮かべたパウエルは同盟国に連絡を入れると言い席を立つ。

諜報機関との会議で、まだ多くの情報は未確認だと報告されるが、チェイニーは全てを話せと指示。数週間でアフガニスタンが陥落した後、行政執行権の拡大を目指し、議会や国際協定より国を守る義務を持つ最高司令官の権限が優位となる根拠を模索する。

テロリストに対する法的保護は必要無しという独自の法解釈を展開するアシュクロフト司法長官の側近、ジョン・ユーがチェイニーの仲間に加わった。米国市民全員の電話やメールは全て監視、国際法であるジュネーブ協定は無視された。

強化された尋問と言う名で激しい拷問が認可。更に憲法を無理矢理に拡大解釈させて行く。国外のグアンタナモで敵性戦闘員と見なされた人を拘束する収容キャンプを導入。大統領がやる事は全て法律であると言う考えがベースであった。

自由と正義の大嘘

だが、1つ問題が浮上。テロとの戦争を国民に唱えるものの、敵対するアルカイダが国では無かった事である。ともかく何処か国を叩いた方がシンプルで国民は分かりやすいと言う事になった。チェイニーは「イラクを倒す機会が来たようだな」と側近に告げた。

ラムズフェルドは、「やっとか!」と声を上げ、ウォルフォウィッツは満足そうに含み笑い、アディントンは高笑いした。チェイニーから報告を受けたブッシュは、父親のブッシュがイラクを長い間やっつけたがっていたと言い、素晴らしいアイデアだと言った。

チェイニーは、公の場でサダム・フセインが大量破壊兵器を保持していると発表。保守系メディアFOXの人気アンカーは、呼応してフセインを倒せと番組で放送。アメリカと二人三脚だったイギリスのトニー・ブレア首相も正義の為に立ち上がろうと国会で演説。

しかし、フセインとアルカイダを結びつける証拠を明確に示せなかったため、イラク侵攻に対する国民の支持率は伸び悩み、フランス、ドイツ、そしてイスラエルは連合軍に参加しないと通達して来た。

イスラエルに至っては、フセインを差し迫った脅威だとさえ見なしていなかった。大統領の上級顧問カール・ローブは、国内外から信頼されているコリン・パウエルが国連と国民に向けてイラク侵攻に対する説明をしてはどうかと提案する。

イラク戦争に反対のパウエルが反発すると、隣に座っていたラムズフェルドは臆病者だと揶揄した。チェイニーから大統領の権限を持つのは貴方だけだと焚き付けられたブッシュは、パウエルにスピーチするよう大統領として命じた。

テネットCIA長官は、イラク侵攻へ向け小さなテロリストに関する情報を利用してはどうかと提言。麻薬の売人に過ぎなかったアブ・ムサブ・ザルカウィは、ヨルダンの刑務所に服役していた際急進的になる。

アフガニスタンでビンラディンに会ったザルカウィは、シーア派のイスラム教徒の全滅を誓う。しかし、ビンラディンの母親がシーア派であったため、会合は良好には行かなかった。一方、パウエルの所に反証済みの情報が含まれたスピーチ内容が届く。

アメリカがアフガニスタンへ侵攻して激しい爆撃を行ったため、ザルカウィはイラクへ逃れ店を開店。チェイニーが持っていた情報は唯一これだけであった。しかし、国連安全保障理事会で、パウエルはアメリカ政府のイラクに対する報告を発表。

イラクは大量破壊兵器を保有し、数々のテロ行為に関与。率いているのはザルカウィだと断言。イラク侵攻前の世論調査では、アメリカ国民の70パーセントが9/11にフセインが関わっていると信じた。後にパウエルは、人生で一番辛い時間だったと振り返る。

イラク戦争が始まり、首都のバクダッドは陥落。国民は「アメリカ万歳」と連呼。ブッシュ大統領は勝利宣言をした。軍の制服組は、ハリバートン社が受注した契約金が多額だと懸念を示す。ラムズフェルドとチェイニーは、全く問題は無いと退けた。

狩猟へ出かけたチェイニーは、同行していた弁護士ハリー・ウィッティントンの顔を誤って撃ってしまう。現在まで謝罪しないチェイニーだが、怪我を負った側のウィッティントンは会見を開き何故かチェイニーに謝罪。

イラクがニジェールからウランを入手しようとした疑惑は捏造だったと言う調査結果を主張した外交官に腹を立てたチェイニーは、その外交官の妻がCIAの諜報工作員であると知り、身元を漏洩した。そして、アメリカのお蔭で一気に有名になったザルカウィ

イラクで反米テロが活発化する情報がホワイトハウスに届き、ラムズフェルドはブッシュより前に情報を横取りしてチェイニーに報告。ザルカウィはそれまでに無い新しい事を始めた。それが、イスラム国、ISISである。

結局、イラクからは大量破壊兵器や核開発計画など発見されず、フセインやその息子達がコカインと80年代のアメリカ映画好きと言う事が分かっただけだった。その後、チェイニーは、イラクにおけるハリバートン絡みの汚職で起訴される。

国民から嫌われた副大統領

野球チーム・ワシントン・ナショナルの始球式に登場したチェイニーに対し、観衆はブーイングを浴びせた。イラク戦争の正当性は揺らぎ、チェイニーに辞任を求める声が高まる。ペンタゴンに居づらくなったラムズフェルドは、チェイニーに電話をした。

イラクに爆弾を落として政治的大義名分を作り出せないかと提案。しかし、チェイニーは、ブッシュがラムズフェルドを解任すると報告した。ラムズフェルドは、自分達が起訴されるだろうかと懸念していた。

民主党のオバマが新しく大統領に就任し政権交代する。数年後、チェイニーは、再び心臓病と闘う。臓器提供者が無く、死を覚悟したチェイニーを家族全員が見舞う。チェイニーは、満ち足りた人生を送り何ら悔いは無いと家族に言葉を掛けた。

メアリーを犠牲にする選択

そこへ、適合した心臓の提供者が現れチェイニーは一命を取り留めた。そして、長女・リズがワイオミングの上院議員議席を目指して立候補。妹のメアリーが女性と結婚していたため、リズは劣勢に立たされた。このままでは勝てないと泣くリズ。

チェイニーは苦渋の決断をし、リズが公に同性同士の結婚を不賛成とする事を了承した。しかし、巻き返し出来なかったリズは出馬を取り止めた。2016年、下院議員選挙で当選する。

ABCの番組に出演したチェイニーは、3分の2のアメリカ国民がイラク戦争は戦う価値が無いと回答した結果をインタビューで尋ねられた。チェイニーは、「だから?」と訊きかえす。それに対し、国民がどう思っているのか気にならないのかと質問された。

チェイニーはカメラに向いて話し始める。「世の中は、現実と対処しなければならない。怪物の様な人間は存在する。3千人のアメリカ人がその怪物によって焼死した。国民の家族を守った事を謝るつもりは無い」

「私はやるべき事をやり、国民とその愛する人達が夜安眠出来た事に謝罪するつもりは無い。国民に仕えた事は光栄だった。私を選んだのは貴方達だ。そして、私は頼まれた事を実行した」

‐イラク戦争で4550人のアメリカ兵が死亡し、3万2千325人が死傷。この戦争の結果、死亡したイラク市民は60万人。ISISによる犠牲者は、イラク及びシリアで15万人。国際テロで2千人が殺害された‐

『バイス』を観た感想

冒頭から一気に引き込まれるテンポの良さと俳優陣の痛快なパフォーマンス。コメディで進行するため、次第に明かされる常軌を逸した事実も重たい余韻が残らずに観賞できます。監督と脚本を兼務したアダム・マッケイの卓越した演出力と言えます。

スクリーンに映るディック・チェイニーは、本人そのもので、演じるクリスチャン・ベールの影も形もありません。パイを食べて18キロ増やしたと本人は話しますが、体重だけではない完全な変身であり、観客を驚かせます。

本作で3度目の共演となるリン・チェイニー役のエイミー・アダムスは、役に成りきるベールは怖いくらいだと話しています。また、ラムズフェルドに扮したスティーヴ・カレルやブッシュを演じたサム・ロックウェルも特徴を押さえた見事な演技です。

本人そっくりの俳優達が2000年以降のホワイトハウスの裏側を事実と史実を織り交ぜて明かす数々に驚愕。本作で描写される9/11と就任当時のチェイニーの行動は事実だとアメリカのメディアUSA Todayが2018年12月付で掲載しています。

大統領の権限を奪うどころか、政府の乗っ取りと言っても過言ではなく、国連で嘘八百を並べ正義を振りかざしてイラクを侵略。他国の主権を犯す理由は、国の為でも理想のためでもなく、単に自分達の私腹を肥やす権力を握るためでした。

劇中にある通りISISを生んだのがアメリカ政府なのであれば、自業自得としか他に言葉が見つかりません。ブッシュ政権の黒幕と言われていたチェイニーの所業は想像以上に酷く、現在も続く中東の混乱を引き起こした人物だと言う事がよく分かる内容でした。

実際、ディック・チェイニーを演じたベールがゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞した際のスピーチで、役作りには悪魔からインスピレーションを得たとコメントして話題になっています。

また、ディック・チェイニーを駆り立てた原動力がリン・チェイニーであり、自分の野心を満足させるためなら次女の尊厳まで踏みにじる彼女の冷徹さは、似た者夫婦と呼ばれる所以だと納得。因みに2人のチェイニー姉妹は現在も仲が悪いままです。

監督と脚本を兼務したアダム・マッケイに雇われたジャーナリストがチェイニーの地元、ワイオミング州を取材。リンと結婚した男は、例えディックでなくても大統領か副大統領になっていただろうと多くの人が証言したと語っています。

しかし、こういう映画を製作できるのもアメリカ。主演以外の主要人物、監督、そしてプロデューサーも全員アメリカ人であり、自分の国を堂々と批判できる自由と土壌が存在するのもまた事実で、他国にはなかなか真似できない事は特筆すべきポイントです。

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