「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「アンチクライスト」、「ニンフォマニアック」など挑発的な映画で有名な北欧の鬼才、ラース・フォン・トリアーの甥であるヨアキム・トリアーの新作「テルマ」。
第90回アカデミー賞、第75回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞ノルウェー代表作品となりその他たくさんの映画賞を受賞した今作品。
ある少女の日常の変化によりある”タブー”が目を醒ます、そんなイノセントホラー映画を今回ご紹介します。
Contents
テルマの作品情報
タイトル:テルマ
原題:Thelma
監督/脚本:ヨアキム・トリアー
公開日:2017年11月10日(アメリカ)2018年10月20日(日本)
出演者:エイリ・ハーボー/カヤ・ウィルキンス/へリンク・ラファエルソン/エレン・ドリト・ピーターセンなど
詳細:監督のヨアキム・トリアーは長編映画監督デビューから立ったの4作で、カンヌ映画祭など権威ある数々の国際映画祭の常連ともなっている今世界から注目を浴びている監督。
今作品はありがちなホラー映画を多数見たのちに思いついた作品だそうです。
テルマのキャスト
主人公をテルマを演じたエイリ・ハーボーはノルウェー生まれで子役から演じる注目若手女優の一人。
カヤ・ウィルキンスは今作品が長編映画デビュー作で普段はOkay Kayaという名でミュージシャンとしても活動しており、過去にはイギリスのトリップホップバンド、Massive Attackとも共演している。
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テルマのあらすじとネタバレ
ある一人の幼女とその父親が冬の北欧で狩りをするため雪の積もる森へと出掛けていた時に獲物と遭遇し、娘に「静かにして。」と言い銃を構える父だがなんとその父が銃を向けたのは獲物ではなく静かに遠くを見つめる娘だった。しかし結局その引き金を引くことはありませんでした。
時は過ぎ、その少女テルマはノルウェーの首都オスロの大学に通う大学生となっていました。他の学生同様、朝授業を受け、その夜遠方に住む車椅子で生活する母から電話が掛かってきます。
テルマはあまり話をしたくなかったのか夜まで授業があったと嘘を言いますが、母とその横で聞いていた父は「でも授業は朝にあったでしょう?」とオンラインでチェック出来るのよ。と嘘を見破ります。
テルマは落ち着いた様子で、「今週だけ授業の時間が変更になって、後ご飯作ってて電話に出られなかったの。」と言い両親を安心させ、母が「また明日電話するわ。」と言いその夜は終わりました。
テルマの異変
次の日、テルマは図書館にて自習をしていました。その横に一人の同じ大学生が座りました。
そんな中外にいた鳥の群れが騒ぎ出し、一羽の鳥が図書館の窓に追突した時、テルマの身に異変が起こります。
突然、手が震え出しそれを彼女は抑えようとしますがどんどん悪化しついには”てんかん”を引き起こし床に倒れてしまいました。救急にて病院に運ばれたテルマは医者から、ちゃんと食べれているか、何か最近変わったことはないか聞かれますが特に何もないというテルマ。
そして医者が以前掛かりつけだった医者が持つ記録を見ていいか聞きますが、テルマは心配性である親に知られたくないからと断ります。医者は親に知られることなく出来る、ただこの先また再発などしたら知らせる必要があるとだけ説明しました。
その夜自宅へと着いたテルマは寝床へと着きますが蛇が身体を這う夢を見て目が覚めます。
そして翌日また図書館で勉強しその後プールに泳ぎに行ったところ、昨日てんかんを図書館で起こした時横に座っていた学生、アンニャに声を掛けられます。
アンニャはもう体調は良いのかとテルマのことを心配していたことを告げます。そして同じ数学の授業を受けていたことが判りまた授業でね。と言いアンニャはその場を去りました。
その後携帯が鳴り見てみるとプールで会ったアンニャからSNSの友達申請が来てました。テルマはアンニャがどんな投稿をしているのか見てアンニャには彼氏がいることを知ります。
テルマの両親が彼女の荷物運びを手伝い、晩御飯を食べにレストランへ行きました。
家族ぐるみで仲良くしていた他の家族の話などで話は弾みましたが、テルマがある家族が地球上の生命は6000年前から始まったということを信じているのが少し可笑しいと言ったところ父が「もういい。」とテルマを止めました。そして「人を馬鹿にするのはやめなさい。知識だけで人を良くすることは出来ない。」と付け加えました。
テルマが言った地球上の生命の話はキリスト教で信じられている論で、テルマの両親は厳格なキリスト信者だったのです。
そしてその理論に少し反論したテルマが父は気に食わなかったのです。それにより雰囲気もギクシャクになり食事は終わり帰宅しました。
その夜、テルマは父に晩御飯での出来事を謝罪し、たまに自分が人を見下しているときがあるという悩みを父に打ち明けます。それを聞いた父はテルマも一度友達を作り、その輪に入って見たら見方も変わるんじゃないかとアドバイスしました。
テルマの両親はその後彼らの住む街へと戻りました。テルマはアンニャが今あるバーにいることをSNS通じて知り、彼女は偶然を装うようにしてそのバーへと行きました。
テルマを見かけたアンニャは一緒に来ていた友達と一緒に飲むよう誘い飲み物を頼みましたが、厳格なキリスト教信者の元育ったテルマはお酒は飲まずコーラを飲んでいたのを見て、アンニャの友人のクリストファーが茶化しました。
その後、テルマはアンニャとクラブで踊っていましたがアンニャと逸れてしまいます。そのまま自宅へと帰り寝床につきますが今日のことを考え寝れずにいました。
そうすると何かを感じた彼女が窓から外を見るとそこにアンニャが立っていたのです。
ビックリしまたてんかんを起こしてしまったテルマをアンニャは運びそのままテルマの自宅で一緒に寝たのでした。
次の日の朝、テルマは彼女の自宅も知らないはずのアンニャがどのようにしてここまで来たのか聞きましたが、アンニャは前日飲みすぎてあまり記憶がないのよ。と返答しました。
そして二人の仲はどんどん深まり、次第にテルマとアンニャ互いに意識し始めるのでした。
禁断の関係
アンニャとアンニャの母からの誘いでモダンバレーを見に来ていたテルマ。アンニャが彼氏と別れたことを知り、劇が始まった直後、アンニャがテルマに触れて来たのです。
それに動揺しつつも流されてしまいそうなテルマは再び発作を起こし、天井に釣り上げられていた照明が揺れはじた頃アンニャの手をほどき外へと出て行ってしまいました。
コートを着て帰路に就こうとしていたところにアンニャが現れ、テルマにキスをしたのです。
テルマはそれを最初は受け入れていましたが、罪悪感を感じた彼女はその場を去ってしまいます。自宅で懺悔を行なった後、父に電話したテルマはお酒を飲んでしまったことを言いますが、アンニャとあったことは言えませんでした。
後日、友人が開いたパーティで再会した二人。
その時に一緒にいたクリストファーにハイになる薬を吸おうという誘いに流されたテルマは、意識朦朧とする中、アンニャといけない行為をしているところを想像し、そこに現れた蛇がテルマの体内へと入っていっている中、呼び起こされ実は普通のタバコであったことを告げられます。
それに罪悪感を感じたテルマは嘔吐してしまい家を帰ってしまいました。
そしてテルマは以前言われていた病院での検査を行う際、実は6歳の時に発作が起きていたこと、それに伴い子どもには強すぎる薬が処方されていたことを知ります。
テルマの幼少期
時は戻り、テルマの幼女期のことです。
テルマには弟がいてその時まだ赤ちゃんだった弟マティアスは泣いていました。
そんなマティアスに付きっきりだった母にテルマは構ってもらえず、泣き止めと念じていたところなんとベビーベットに寝ていたマティアスが消え、大人でも持ち上げることが困難なソファの下に埋れていたのでした。
断端と現れる”タブー”
その記憶が消えていたテルマですが、何か精神的異常はないか検査を受けていた時に医師がアンニャのことを聞いたところまたてんかんを起こし、一人自宅にて洗濯物を取りにいっていたアンニャは姿を消してしまったのです。
それを感じたテルマはアンニャに電話しますが繋がりませんでした。
医師からの特にてんかんではないという結果を聞いたテルマは謎に思いますが、別の真実を知ります。父には既に亡くなったと聞いていた祖母が実は生きており精神病院に入院していることが判ります。
後日、祖母の入院している病院へ行き、祖母と対面しますが彼女はものの抜け殻状態。そこへ看護師が現れ彼女も実はテルマと同じような症状を持っていたことを知ります。
彼女の場合は自分の夫が居なくなり、それを祖母は自分が消してしまったと信じている。と看護師は言いました。
アンニャが居なくなり焦燥するテルマ。彼女の自宅を訪ねた時に窓ガラスにアンニャの髪が貫通しているのを見つけます。それを見て自分が消してしまったと確信するテルマ。
テルマの真実
気が動転し両親に助けを求める電話をし、大学を中退し故郷へと再び戻りました。
両親が出してくれた飲み物に睡眠薬が入っており、こうなることは分かっていた。辛い思いをすることになるけど必ず助けるよ。という父の言葉を耳にしながら眠りについてしまいます。
また時は戻り、テルマの子供の時の話。テルマの弟、マティアスはお風呂に入っていました。母が何かものを取ろうと目を離した隙にマティアスが再び姿を消してしまいます。父は寝ていたテルマを起こし、「どこにやったんだ!どこにいるんだ!」と聞きますが、ただ寝ていたテルマには分かりません。
家中を探していましたがテルマが真冬の凍った湖に指を指し、それにハッとして父は急いで凍結した湖の上を走り探しましたが、もう既に時は遅く、マティアスは湖の中にいて凍死していました。
それがショックで飛び降り自殺を試みた母は脚を不自由にし車椅子で生活することとなったのでした。
テルマの両親たちはなんとか治してあげようと神にお祈りをさせたりしましたがもうどうにも出来ない。私が出来ることは全部やりきったわ。という母に医者である父は何か薬の入った注射器を用意してました。
翌日ボートで湖へと出掛けたテルマの父。そんな中寝ているテルマにまた発作が起こります。
すると父の体が急に火が付き身体中火だるまになってしまいます。それに焦った彼は湖に落ちまたボートへと戻ろうとしますが地上に出た途端また着火しついに溺死してしまいます。
目を覚ましたテルマは急いで湖に向かい助けようと潜りましたが、なぜかその先には学校のプールでそしてアンニャが居ました。そして目を覚ましたテルマは湖の畔にいてそしてまた嘔吐してしまいますが吐き出したものは黒い鳥でした。
家に戻り父がいなくなったことを知ったテルマの母に近寄り、脚にそっと手をやったテルマは家を去ろうとします。「待って!出て行かないで!」と追いかけた母は気付いたら自分の脚で立てるようになっていたのです。
そしてそのまま大学へと戻ったテルマは再びアンニャと再会しまた新たな人生を送っていたのでした。
テルマの感想
初めに言いますが、安心できる場面がほぼない映画です。
というのも初めのシーンから実の父に他を見ている時に銃を向けられているのですから、これはどういう映画なの?と不安感に駆られます。でも逆にそれがよく出来てる作風だなとも思います。
そのシーンがあったからこそ、これから何が起こるのか知りたいので注意深く見るようになるのでたまに映画にあるもう最後が見えているから途中で飽きるということはありませんでした。
また登場人物も父は自分の愛娘を殺そうとした割りには良識ある人ですし、心配性で何も口を出すことのない母ですが実は一番冷静に見ていたり、誰も責めることができないのです。
テルマに至っては、自分でもコントロール出来ない謎の症状を抱える可哀想な女の子だと思って見ていましたが、実は自分の思い通りにならなかったら消してしまうことの出来るんじゃ。そうするともしアンニャと離れることなどになったらまたアンニャはどこかいなくなってしまうのでは。という考え方もできます。
また今回映画の中に度々登場する宗教に関してのことについてですが、蛇はキリスト教では邪悪なものと見られていたという記述があります。
アダムとイヴという日本でも有名な人類の親とされる2人がある日、禁じられていた果実、りんごを食べるように蛇が2人に囁きそれを食べてしまったアダムとイヴは追放されてしまうという逸話があります。
その蛇をこの作品のまたテルマがキリスト教で禁じられた同性愛などの時に登場させています。
ラース・フォン・トリアー監督の作品でも度々宗教の話に触れており、またそれの大半がネガティヴな方向性なのでもしかすると彼らの背景にはそういった宗教に対する想いがあるのかもしれません。
この映画を見た感想で、展開があまりなくそれが残念だったという意見がいくつかありました。確かにこの映画は展開で言うとだいぶスローペースな作品です。
ただヨアキム・トリアー監督が自らこの映画に答えを持たせないようにした。と言っていた通り、見た後いろんな解釈ができる作品です。
映画を見た後、あそこのこの部分がすごかったよね!ああいう展開になると思わなかった!など、友人と映画の作風について語り合うのが好きな方には向いていないかもしれません。
ただ、この映画は見終わった後、これはこういう意味だったのではないか、私が先ほど述べたような本当にテルマは可哀想な子だったのか?など内容については話が尽きないほどできる映画です。
実際にこれを見終わった後、他の人はどういう感想なのか気になりネットで探したりしました。
ホラー、ドラマ映画とジャンルではされていますが見た目が恐ろしい怪物などが出てくるのではなく、洗練された美しい北欧の風景にほぼBGMがなくクラシック音楽などによって醸し出される不気味さ、不安感などは他の監督の作品では中々見ることはできないものです。
普段ハリウッド映画などを見ている方で、少し違ったものを見て見たいと探している方に是非ともオススメしたい作品です。特に映像が綺麗でもあるので静寂な映画館でトリアー監督の世界をぜひ堪能して頂きたいです。
個人の意見では内容的にも映像的にも大満足の一作でした。
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