『ねじれた家』は、1949年に発表されたアガサ・クリスティの同名小説を映画化したミステリー作品です。一代で財を築いた大富豪が死亡し、死因を疑う孫娘の依頼で私立探偵が調査に乗り出します。殺人が特定された後、依頼人の孫娘を含む家族9人全員が動機を持つ容疑者だと判明。そして、事件の全貌が明らかになる時、震撼の結末を迎えます。
Contents
『アガサ・クリスティ ねじれた家』作品情報
タイトル:アガサ・クリスティ ねじれた家
原題:Crooked House
監督:ジル・パケ=ブランネール
脚本:ジル・パケ=ブランネール、ジュリアン・フェロウズ、ティム・ローズ・プライス
原作:『ねじれた家』アガサ・クリスティ
製作:ジェームズ・スプリング、サリー・ウッド、ジョー・エイブラムス
公開日:2017年11月21日(イギリス)、2019年4月19日(日本)
出演者:グレン・クローズ、マックス・アイアンズ、ステファニー・マティーニ、ジュリアン・サンズ、ジリアン・アンダーソン、クリスティーナ・ヘンドリックス、オナー・ニーフシー、テレンス・スタンプ
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『アガサ・クリスティ ねじれた家』概要
『サラの鍵』を監督し、東京国際映画祭で最優秀監督賞と観客賞を受賞したジル・パケ=ブランネールが本作の監督で、『ダウントン・アビー』を書いたジュリアン・フェロウズと脚本の共同執筆も務めています。『ねじれた家』の原作者アガサ・クリスティは、導き出した結末に大変満足し、全作品中個人的にお気に入りの作品だと生前語っています。
キャスト
2019年度『天才作家の妻』でゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞したグレン・クローズがイディス役で、2度目の共演となるマックス・アイアンズが私立探偵チャールズを演じます。『X-ファイル』スカリー役でお馴染みのジリアン・アンダーソンや名優テレンス・スタンプも出演します。
『アガサ・クリスティ ねじれた家』あらすじ・ネタバレ
大富豪の実業家アリスタイド・レオニデスが死亡した。私立探偵チャールズ・ヘイワードの事務所に以前付き合っていたソフィア・レオニデス訪れる。祖父の死因は心臓発作だが実は殺されたと思うとソフィアは言い、チャールズに調査を依頼する。
突然自分から去って行ったソフィアにまだ未練があるチャールズは冷たくあしらうが、犯人はまだ家の中に居るかもしれないと言うソフィアの言葉が頭に残る。秘書から有名人死亡事件を扱えば評判が上がると言われ、チャールズは事前調査に乗り出す。
警視庁の主任警部・タヴァナーと面会したチャールズは、緑内障用の目薬に使われる成分が遺体から検出された事を知る。直接血管内に入れば心臓発作を引き起こす成分だった。
タヴァナーは、アリスタイドが糖尿病だったため、インスリンと取り違えた可能性を示唆する。殺人だと報道されれば大富豪家族を巡りメディアが騒ぎ立てるので、慎重に行動するようチャールズに助言し、警察が関与開始するまで2日の猶予を与えた。
ねじれた家族
レオニデスの屋敷に到着すると銃声が聞こえて来る。様子を見に行ったチャールズに、アリスタイドの義姉イディスがショットガンを持って近づいて来た。モグラに手を焼いていると話すイディスは、毒よりショットガンの方を好むと微笑む。
ソフィアの12才の妹・ジョセフィーンを探していた乳母に小言を言われたジョセフィーンが口達者に反抗する場面をイディスとチャールズが眺めていると、ソフィアが出迎えに出て来た。カイロに居た時出会ったとソフィアはイディスにチャールズを紹介。
イディスは自分の妹であるアリスタイドの妻が亡くなる前に看病に訪れ、他界後はその息子2人に責任を感じ育てるために移り住んだが、義弟とは喧嘩ばかりしていたとソフィアはチャールズを家に案内しながら話した。
アリスタイドの寝室へ来ると、ソフィアは祖父の遺体を発見した朝の事を説明する。仲が良かったソフィアに朝食を持ってこさせたアリスタイドはベッドで冷たくなっていた。
奥の部屋では、アリスタイドの若い妻・ブレンダがポップミュージックを掛けているのが聞こえる。そこへノートを抱えたジョセフィーンが来て、祖父が亡くなった今自分がこの家で一番頭が良いと自慢する。
チャールズは、ノートに何を書くのか尋ねた。ジョセフィーンは、知っている事は全部記し、探偵物語をよく読むと話す。マグダがチャールズを待っていると告げるジョセフィーンは、老けて感じるので母親から名前で呼ぶよう言われていると言った。
舞台女優のマグダは昼間からお酒を飲んでいる。マグダを知らないチャールズは、映画を好んで観ると取り繕う。夫・フィリップが自分を主役に映画の脚本を書いたと続けるマグダは、義父の死が宣伝になるとグラスのお酒を飲み干す。
フィリップは図書室だと聞いて訪ねるとソフィアも一緒に居た。フィリップは、ロンドン警視庁の副長官であるチャールズの父と会った事があると切り出す。しかし、傲慢なフィリップは自分は歴史学者で生活の為に仕事等しないと吐き捨てる。
遺言は既に開封されたのかとチャールズが訊くと、フィリップは、皆中身は既に知っており、家族全員何不自由ない生活が約束されているので、そこを探っても無駄だと話す。父親を亡くしたのにまるで平気ですねとチャールズは言い残して席を立った。
次に、アリスタイドの次男ロジャーと主任化学研究員をしている妻・クレメンシーに話を聞いた。クレメンシーは、毒の事なら専門だと自己紹介する。ロジャーは、アリスタイドの後妻・ブレンダが86才になる夫の自然死を待てずに殺したと主張した。
チャールズは、名誉棄損になるので言葉には気をつけた方が良いとやんわり忠告する。アリスタイドが所有する企業で、主力会社の業務最高責任者であるチャールズは、金目当てで嫁いで来たブレンダの首を絞めて殺したいくらいだと声を荒げた。
チャールズは、最後に未亡人を訪ねた。ブレンダは死んだ夫より50才近く年下で37才のアメリカ人。自分はアリスタイドを愛していたと勝手に話し始め、皆生まれつきお金持ちなため、他に厳しい視線を向けると言う。
2人の馴れ初めを尋ねたチャールズに、ブレンダは、自分がラスベガスでダンサーをしていた時に出会い、妊娠し自暴自棄になっていた自分に声を掛けて来たと答えた。夫の家族は皆お金目当てで側に居たと硬い表情をする。
孫の家庭教師・ブラウンは、アリスタイドが生前書いていた回顧録を手伝っていたと話したブレンダは、夫が亡くなる前夜は頼まれて自分がインスリンの注射をしたと明かす。瓶と注射器に残った自分の指紋で犯人だと思われるとブレンダは涙を浮かべた。
ブラウンに会ったチャールズは、アリスタイドと回顧録の作業をしていて一緒だったと裏を取り、ロジャーとマグダが会いに来た事を知る。ロジャーは仕事の用事、そしてマグダは自分が出演する映画の製作費を出すよう頼みに来たと言う。
アリスタイドは、売れない女優のマグダと誰も読まない著述家のフィリップのためにお金は出さないとブラウンは話し、そう言えば最後にソフィアが会いに来て、2人だけで話していたと補足した。更に、回顧録が金庫から消えたとブラウンは言った。
庭で亀を散歩させていたジョセフィーンは、ブレンダはブラウンと浮気しており、手紙を交換していた事をチャールズに打ち明ける。手紙を隠している場所も知っており、扉に立ち聞きして情報を得ているとジョセフィーンは胸を張った。
唐突に祖父が嫌いだったとジョセフィーンは呟く。姉のソフィアは綺麗だと褒め、自分には向かないと無理矢理好きだったバレエを辞めさせられた事に少女は腹を立てていた。
秋の剪定に忙しいと言っていたイディスが歩いて来た所を呼び止めたチャールズは、ぶしつけな質問ですがと断ってから、この家の人間はどうかしていると言った。イディスは、自分の人生を捧げるほど愛する人に、同じ位憎しみを持つ結果だと微笑んだ。
遺産相続人
アリスタイドの弁護士に面会したチャールズは、遺言に署名が無かった事を聞かされる。そして、無遺言で死亡した事により未亡人のブレンダが相続の第1受益者となる事が分かった。
会社に居るロジャーを訪問したチャールズは、事業が行き詰った事でアリスタイドと揉めた事について尋ねる。ロジャーは、失望させた自分をいつも許してくれた父親が今回も尻拭いに手渡した2百万ポンドの小切手を取り出し目の前で破った。
屋敷に来たチャールズをジョセフィーンが出迎える。そこへホットチョコレートを作ったと乳母がジョセフィーンを呼びに来た。ホットチョコレートが嫌いなのを知っていていつも作るのは、自分が飲みたいからだとジョセフィーンは意地悪い。
首を振って去って行く乳母が見えなくなると、ジョセフィーンはまた殺人が起きると声を潜めた。必ず殺人は2度起こり、秘密を知っている人間が消されるものだとジョセフィーンは訳知り顔だった。
庭でたき火をしているソフィアを見て近づいたチャールズは、ブラウンが消えたと言っていた回顧録だと気が付く。事件の証拠だと声を上げたチャールズに、戦争を利用して商売を広げた内容で、メディアにあら探しされたくないとソフィアは答えた。
夕食に招待されたチャールズは、レオニデス家全員が介して食事をする間、イディスを除き、お互い疑心暗鬼で罵り合い、遺産を相続するブレンダを軽蔑するやり取りを聞いていた。誰もがブレンダとブラウンの浮気を知っていた。
犯人逮捕
翌日、新聞の一面に大富豪アリスタイド・レオニデス殺害とヘッドラインに掲載された。タヴァナーの下にアリスタイドの古い知人が死んだら弁護士に渡すように生前頼まれたと言って封筒を持って現れる。
中身はアリスタイドが正式に作成した遺言書。少額を妻に残し、後の遺産は全てソフィアが相続すると言う内容だった。屋敷に行ったチャールズは、イディスがジョセフィーンの部屋でノートを手にしているのを見る。
警察が捜査に乗り出す。塔の階段を上っていたジョセフィーンを思い出したチャールズは、タヴァナーと一緒に屋敷の塔へ上がりバルコニーへ来る。そこには箱が置いてあり、中にはブレンダとブラウンが交換した手紙が入っていた。
「もうすぐ2人きりになれる。夫は優しくしてくれたけど、消えて欲しい」。タヴァナーはブレンダの部屋へ行き、見つけた手紙を渡し、ロンドン警視庁まで同行を求めた。手紙に目を通したブレンダは、自分が書いたものではないと涙ぐむ。
警官に脇を抱えられたブレンダを地獄へ行けとロジャーが嘲笑う。自分に言い寄ったくせにとブレンダはロジャーに唾を吐く。警察車両にはブラウンも乗せられていた。レオニデス家相手に最初から自分達には勝ち目は無かったとブラウンは溜息をついた。
イディスはお金で雇える最高の弁護士をブレンダに付けるようチャールズに頼んだ。チャールズの労をねぎらうタヴァナーに、状況証拠に過ぎないとチャールズは訴える。殺人事件の多くはそうで、陪審員の心証で結果は大きく左右されるとタヴァナーは答えた。
新聞の一面にブレンダとブラウンの写真が掲載され、殺人犯の文字が躍った。ジョセフィーンは、自分の部屋にしまっておいたノートが見つからないと大騒ぎ。一方、腫瘍内科医を訪れたイディスは、検査の結果あと数ヶ月の命だと告知された。
ソフィアは、ジョセフィーンに乳母が用意したホットチョコレートを持ってきた。ジョセフィーンは、乳母は自分が飲みたいから作ると言う。ソフィアは知っていると頷き、何故いつもジョセフィーンが怒っているのか尋ねる。退屈だからだと妹は答えた。
第2の殺人
事件は解決したかに見えた翌日、乳母が殺害されて発見される。乳母の作ったホットチョコレートをジョセフィーンに持って行ったのは自分だとソフィアはタヴァナーに話した。屋敷に急行したチャールズは、ジョセフィーンに会いに行く。
何でも知っていると言ったジョセフィーンに、誰がアリスタイドと乳母に毒を盛ったのか知っているのかと尋ねる。ジョセフィーンは頷いた。ブレンダとブラウンが犯人だと思う警察は馬鹿なので何も話したくないとジョセフィーンは口を尖らせた。
これは探偵ごっこではなく、秘密を1人で抱えていれば危険な目に遭うとチャールズは説得するが、そこへイディスがタヴァナーと検死官が大きな進展が有りチャールズを探していると割って入る。
自分がジョセフィーンを見ているから大丈夫だとイディスに言われ、チャールズはタヴァナーの所へ急いだ。イディスはジョセフィーンにクリームソーダを飲みに行こうと笑顔を向け、ジョセフィーンは大喜び。
真犯人
検死官は分析結果が出るまで確証は無いが、死後の様子から青酸カリだろうとタヴァナーとチャールズに話した。通常人は家に青酸カリなど保管しないとタヴァナー。乳母を見つめながら、チャールズは、モグラと呟いた。
もぐらを殺すのに青酸カリが使用されると言い残したチャールズは、イディスがショットガンを置いている小屋へやって来る。棚を開けると青酸カリの瓶が置いてあった。そして、生石灰に埋めたジョセフィーンのノートを見つけた。
そこへ何をしているのかと言いながらソフィアがやって来る。イディスがジョセフィーンのノートを燃やそうとしていた事と青酸カリの瓶を見つけた事をソフィアに言うと、2人が車で家を出たとソフィアが顔色を変えた。
チャールズとソフィアが2人の後を追うため急いで自分の車の扉を開けると、イディスの置き手紙があった。チャールズが運転し、ソフィアが読み上げる。アリスタイドを殺したのは自分だと犯行を認める内容だった。
チャールズは、イディスが犯人ではないと思うと言い、見つけたジョセフィーンのノートを読むようソフィアに頼んだ。ページを捲りながら、ソフィアはあっと声を上げて動揺する。
「この家は本当に退屈。何か起きた方がいい。だから今日お祖父さんを殺した。楽しかった。勿論ちゃんとした理由があったし。自分にバレエを辞めさせる事を後悔すると警告はしておいた。意地悪で悪い人間。周りを不幸にするだけ。大嫌い」
目をむくチャールズに、ソフィアは、ブレンダについての記述も見つけたと言った。「ブレンダって10才の子が書くような字だから真似できるようになった。乳母がうるさく質問してくる。大嫌い。本当に馬鹿なくせに。馬鹿な人間て大嫌い。次は乳母の番」
イディスが気づいてジョセフィーンのノートを読み確証を得た。ブレンダとブラウンに無実の罪を着せるわけには行かず、しかしジョセフィーンが一生怪物だと言われながら施設に拘束させる事も出来なかった筈だとチャールズは分析する。
猛スピードで走るチャールズは、先に行くイディスの車を発見した。バックミラーを見て気づいたイディスは道路を外れ、ジョセフィーンに近道だと言いながら採石場へ向かう。怖がるジョセフィーンの肩を抱いたイディスは、涙を浮かべ崖を飛んだ。
車を停車して急いで降りたチャールズとソフィアは崖に走り寄ると、落ちた車が叩きつけられ爆発炎上する。泣き叫ぶソフィアをチャールズは強く抱きしめた。
『アガサ・クリスティ ねじれた家』を観た感想
大富豪が殺害され、巨額の遺産を巡り動機と術を持っていた家族全員が容疑者というシナリオは、これまでも繰り返し使われ既視感があります。しかし、『ねじれた家』がそれらの作品と決定的に違うのは、動機がお金とは全く関係ない事です。
フランス人監督のジル・パケ=ブランネールの卓越した演出で、物語を通して誰が犯人なのか観客は推理し続けることになり、その正体が明かされるその瞬間にサプライズが用意されているユニークで見事なエンディングです。
また、ミステリーにとかく多い長い説明が本作には無く、物語にリズムを与えています。実力を備えた俳優陣は行間に書かれている事を表現できるプロフェッショナル。細かい解説が必要無い事を脚本家のジュリアン・フェロウズが熟知している表れです。
個人個人の心情が豊かに描かれているため、死が近いと悟り人生を捧げた家族を守ろうと罪を被るイディスの共感し得る行動と理解し難いジョセフィーンの悪意に満ちた動機が重なり合い、観賞後に独特の余韻を残す結末は特筆すべき点です。
残念ながら少年少女による殺人事件はこれまでに起きています。原作者アガサ・クリスティが『ねじれた家』を発表した1949年以前もイギリスで少年が殺人を犯した事件が発生しています。稀である事は確かですが、多くはアメリカという事実は興味深い所です。
イディスを演じたグレン・クローズは、イディスがレオニデス家に長年留まった理由に共感して出演を決めたと語っています。責任感などまるで無い自分本位な家族の中で、唯一イディスだけが本当の意味で周りを気に掛けます。
幼いジョセフィーンの凶行を知り、血の繋がらない間柄であってもブレンダとブラウンに無実の罪を着せないという高潔さと殺人を犯した少女が辿る路を憂い自分が罪を負う決意は、他のレオニデスにはおよそ出来ないことで、クローズは慈善行為と表現。
パケ=ブランネールとジュリアン・フェロウズの緻密な脚本に息を吹き込んだ実力派俳優陣のアンサンブルが、愛憎深い人間関係をまるで舞台を観ているかの如く繰り広げます。登場人物が残していく手掛かりは想像を掻き立て、作品に引き込まれます。
2017年『オリエント急行殺人事件』のリメイク公開後に続編製作も発表され、アガサ・クリスティの作品に対する根強い支持が伺われます。今後もミステリーの女王が紡いだ物語は映画化され続けると思いますが、本作の様に新しいアイデアを期待したいです。
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