『ベン・イズ・バック』あらすじ・ネタバレと感想!ジュリア・ロバーツ主演の最新作品!

『ベン・イズ・バック』は、『アバウト・ア・ボーイ』でアカデミー賞脚色賞にノミネートされた脚本家、そして小説『ギルバート・グレープ』を書いた著者でもあるピーター・ヘッジスが監督し脚本を書いた映画です。主人公ホリーの息子・ベンを演じているルーカス・ヘッジスは、『ある少年の告白』で2019年度アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた俳優で、ヘッジス監督の実子でもあります。

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『ベン・イズ・バック』作品情報

タイトル:ベン・イズ・バック

原題:Ben Is Back

監督:ピーター・ヘッジス

脚本:ピーター・ヘッジス

製作:ピーター・ヘッジス、ニーナ・ジェイコブソン、テディ・シュワルツマン、ブラッド・シンプソン

公開日:2018年12月7日(アメリカ)、2019年5月24日(日本)

出演者:ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジス、キャスリン・ニュートン、コートニー・B・ヴァンス、レイチェル・ベイ・ジョーンズ、マイケル・エスパー

『ベン・イズ・バック』概要

監督と脚本を兼務したピーター・ヘッジスは、費用が掛かり社会のシステムが整っていない麻薬中毒患者の現状に注目。誰もが諦めてしまいがちな状況で、唯一闘うのはやはり母親だと確信し家族ドラマを執筆しました。千3百万ドルとハリウッド映画にしては少ない予算で製作されましたが、批評家からジュリア・ロバーツ及びルーカス・ヘッジスの演技は高評価を得ています。

ベン・イズ・バックのキャスト

主演はジュリア・ロバーツ、タイトルのベンにはルーカス・ヘッジス、そしてテレビ映画『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』でエミー賞主演男優賞を受賞したコートニー・B・ヴァンスや『パラノーマル・アクティビティ4』で注目を集めたキャスリン・ニュートンも出演します。

『ベン・イズ・バック』あらすじ・ネタバレ

久し振りの我が家へ

クリスマス・イヴ。ベンが自宅に戻ると家には誰も居らず、愛犬・ポンスがベンに気づき家の中で尻尾を振り吠えた。教会で行われるクリスマスのイベントを控え最終リハーサルを終えた子供達3人を連れてホリーが帰宅。

ベンの姿を見たホリーは驚いて車を飛び出し、満面の笑顔でベンに駆け寄り抱きしめる。ベンの妹アイヴィーは溜息をついて義父・ニールへ連絡した。ホリーとニールの幼い子供2人はベンに抱きついて喜ぶ。

ベンは更生施設の生活を話し、支援者から祝日を家族と過ごす許可を得たと伝える。ホリーは嬉しそうに耳を傾けた。ベンが食べ物をポンスに分けてやると、アイヴィーは、犬の歯に悪いと文句を言いながら、ニールに帰宅を催促するメッセージを送信した。

ベンが庭で幼い妹達と相手にしている間、ホリーは薬や宝石類を袋に入れて隠す。アイヴィーから連絡を受けて帰宅したニールは、医療関係者やベン自身も誘惑の多い家に戻らない事に同意したはずだと困った表情を浮かべた。

ベンが前回のクリスマスで自分がトラブルを起こした事に触れると、その前もね、とアイヴィーが口を挟む。多くの間違いを犯したが、施設のプログラムに参加して大きな進歩を遂げられた結果、支援者から帰宅の許可を得た事をベンは訴えた。

ホリーは誇らしげな表情で頷くが、アイヴィーはホリーが薬や宝石を隠した事をその場でばらす。ホリーは、誘惑となる物にベンを触れさせたくなかったと答える。歓迎されず自分を信じて貰えないと感じたベンは、施設へ戻ると言い家を出た。

腹を立てたホリーをニールはなだめようとする。ベンにクリスマスプレゼントは何が欲しいかと尋ねられたホリーは、ベンだと答えた自分のせいだと、ニールやアイヴィーの冷たい態度に対し怒りを露わにした。

車に乗り込んだホリーとベンの前にニールが家から出てくる。ニールと話したホリーは車に戻り、麻薬検査をする事、そしてホリーが常に監視する事を条件に1日家で過ごす事を許すと真剣に見つめた。ベンはその条件を飲む。

ベンは扉を開けたまま母親の前で用を足す。ポンスとじゃれ合うベンに、ホリーは検査が陰性だった事を伝え、ニールにも報告した。暖炉にくべる薪をベンと一緒に取に行ったアイヴィーの様子を眺めるホリーの顔に笑みが浮かんだ。

クリスマスプレゼントのラッピングを手伝いながら、ベンは自分も妹達にあげるプレゼントを買いたいと言いだす。ホリーは、既に用意したプレゼントをベンが買った事にすれば良いと提案するが、嘘をつかない事を大切にしたいとベンは主張した。

消えない欲求

その気持ちを察したホリーは、ベンを連れてモールへやって来る。プレゼントを買い、休憩に飲み物を買いに行ったホリーは、ベンの主治医だった男性に出くわす。しかし、その元医者は認知症でベンを覚えていなかった。

ベンは14才の時に怪我をし、処方されたオピオイド系鎮痛剤で中毒になった。ホリーがその際質問したにも拘らず、中毒作用は無いと医者は答え、服用量を増やしていたのだった。ホリーは、元主治医が酷い死に方をするのを望むと面と向かって吐き捨てた。

ホリーが中座していた間、ベンは地元の仲間だったスペンサーを見かけ、思わず頭を抱えた。更生施設の支援者に電話したベンは、戻って来たホリーに、不安定な気持ちに陥っているため、側で開催されている自助グループの集まりに行くと言いだす。

1人で大丈夫だと言うベンの後を着いて、ホリーもビルの中へ入った。麻薬を断ってから77日経つベンは、この夏自室で注射器が腕に刺さったまま発見され、ポンスのお蔭で意識を失わずに済み、過剰摂取で死にかけた経緯を話した。

そして、ホリーのお蔭で今自分はここに居り、自分自身や他の人にした事を涙ぐんで悔やんでいる事を話した。まだ生きているのは、このクリスマス休暇できちんと自分を証明するためなのか、或いは帰省したのは大きな過ちかもしれないと結んだ。

散会した後、参加者同士で励まし合う中、ベンに1人の女性が近づく。初めての集まりでまだ慣れてないと言う女性に、ベンは自身の経験から助言した。自分を覚えていないのかと尋ねる彼女は、ベンが以前自分の密売人だった事を明かす。

謝罪するベンに、女性は、クリスマスの翌日更生施設へ入居するので、その前にもう一度だけハイになりたいとベンも誘う。部屋の隅に立って待つホリーをベンは一瞥した。モールに戻り、着替えを持参しなかったベンのためにホリーは服をみつくろう。

試着室でセーターを試そうとするベンだが、扉を閉めないホリーにため息をつく。着ていたジャケットだけではなく、ホリーはポケットの中身も出させた。店員の目が気になるベンは恥ずかしいと言うが、ホリーはこれは愛情だと返す。

ベンは靴を調べてないと嫌味を言って扉を閉める。ホリーは血相を変え、扉を叩く。中から冗談だとベンは返答するが、ホリーは店員に大声で扉の鍵を持って来るよう頼んだ。上目使いに扉を開けたベンは、包に入った麻薬をホリーに手渡す。

動転する母親に、ベンは会合で話し掛けて来た女性が使おうとした麻薬を自分が止めて取り上げたと説明する。店員が来て2人に店から直ぐ出て行くよう迷惑そうな表情。騒ぎを聞いて物珍しそうに親子を見る他の客に対し、ホリーが罵った。

ベンは、もしかしたら彼女自身が密売人かもしれないと言い、中毒者は嘘ばかりつくので信用できないとホリーに話す。怒り心頭のホリーは、家族が眠る墓地にベンを連れて来る。麻薬で死んだ後何処に埋めて欲しいのか選べとベンに迫った。

帰宅した2人は、家族と共に教会へ行く準備をする。ニールにベンの様子を訊かれたホリーは、何も言わなかった。教会には多くの人が集まっており、その中にマギーの母親・ベスを見かけたホリーは、近づいてお悔やみを言った。

回ってきたつけ

クリスマスのイベントが始まり、アイヴィーが歌いホリーの幼い末娘2人が羊と天使のコスチュームで他の子供達と一緒に舞台に上がった。ベンは、感極まり涙を流す。全員で帰宅すると強盗が入り家は荒らされていた。

ニールは1階を調べ、ベンは2階へ駆け上がり侵入者がまだ居ないか見て回る。アイヴィーは、また起きるなんて、と苛立ちを露わにした。金目の物は一切盗まれていないが、ポンスが居なくなっていた。ニールは、ベンのせいだと責めた。

ベンはポンスを探しに家を飛び出す。警察に通報しようとするニールを留めたホリーは、直ぐにベンの後を車で追う。どんなに努力しても悪い結果を招き、家族を危険な目に遭わせたと自暴自棄になるベンをなだめ、ホリーは自分もポンスを探すとベンを説得。

ベンは、思いつく相手が多すぎると言うが、ホリーは1人ずつ当たろうと励ます。クリスマス用にイルミネーションされた一軒家前で、ベンは自分が対処すると主張。車の中で待機するホリーが見ている中、ベンが玄関を叩く。

中年男性が扉を開け、ベンを見て良い頃合いだと引っ張りこもうとする。車に戻って来たベンは、ポンスを居なかったと告げる。ホリーが誰だと質問するが、一緒に探すなら詮索しない約束だとベンは切り返した。

先を走る車の中で、懲りないホリーは見覚えがあると言いだす。ベンは、高校の歴史教師だと明かした。母親が癌で鎮痛剤を沢山持っており、性行為の代償に薬を貰っていたとベンは続ける。驚いて動揺したホリーは、車の扉を開けて嘔吐した。

ベンはマギーの父親が住むマンションへホリーを案内。自分を一番憎んでいる人間だと言い、ベンは車を降りる。窓から覗くベンを見たその父親は、車に乗り込んだベンの助手席の窓を割って怒鳴り散らした。

急いで車を発進しホリーは一体何があったのか尋ねる。ベンは、もしホリーがマギーの父親なら自分を殺したいと思う筈だと言い、マギーを麻薬中毒にしたのは自分だと打ち明けた。心配したニールが電話を掛けて着た後、ベンは嫌な奴だと呟く。

ホリーは、幾つも更生施設へ入所したベンの費用を払えなくなり、再婚した後ニールが家を抵当に入れて現在の施設へ支払っている事に触れ、ベンに感謝しろと鋭い視線を向けた。そこへモールで見かけたスペンサーが現れる。

ベンに気がついて逃げるスペンサーをベンが後を追いかけ掴みかかった。ベンが返って来た事を地元の人間に言いふらしたのはスペンサーだった。次々に名前を挙げ、ポンスを奪ったのはクレイトンだとスペンサーから聞き出す。

後を追って来たホリーは、見た目が一変したスペンサーに驚愕した。ホリーに挨拶したスペンサーは、ベンを殴り逃走。ベンは、ホリーに最悪の相手がペンスを誘拐したと話す。ATMから一日の限度額を引き出したホリーはベンに手渡した。

足らないと言うベンに、ホリーは身につけていたペンダントを渡す。ベンが謝ると、好きな宝石ではなかったとホリーは薄く微笑んだ。2人は町外れの掘っ立て小屋へ来る。ベンは付き合いの長いクレイトンに借金をしていた。

今回肩を付けなければ次はもっと酷い目に遭うと話し、お金を持って1人車を降りる。家に入ったベンが程無くして出て来きると、クレイトンは出世して地元の密売人でなくなったとホリーに報告した。

給油した後、ベンは今から行く所は安全ではないので、ホリーに先に帰るよう頼む。絶対に一緒に行くと聞かないホリーに、自分は価値の無い人間だとベンが真剣な表情で母親を見つめる。家に帰ろうとしないホリーにベンは苛つく。

本当はクリスマスに帰省する事を支援者に反対された事、自助グループで出会った女性からでは無く麻薬は自宅の屋根裏に隠してあった事、そしてマギーを死なせたのは自分だと吐露するベンをホリーは抱きしめた。

過去の清算

2人はガソリンスタンドで菓子類を購入するために入店する。ホリーに最高の母親だとベンは言い残し、ホリーの隙を見て車を運転し1人で去ってしまう。途方に暮れたホリーは、ベスの家を尋ねる。部屋中にマギーの写真が飾ってあった。

ベスは、ホリーに麻薬の過剰摂取時に使用する医療器具を渡す。動揺するホリーに対し、ベスは、誰も中毒患者を救うことは出来ないが、やらなければ後悔すると話し、自分の車の鍵も一緒に渡す。息子を見つけなさいと背中を押され、ホリーは車に乗り込んだ。

質屋の事務所に居たクレイトンを訪ねたベンは、お金とホリーのネックレスを手渡す。残りの借金もきちんと返済したいと申し出たベンに、クレイトンはネックレスを返す。奥の部屋から犬の鳴き声が聞こえて来る。ベンはポンスを返して欲しいと頼んだ。

ホリーは、スペンサーを探し出す。禁断症状で苦しむスペンサーに、ホリーはベンから取り上げた麻薬を見せた。引き換えにクレイトンの事務所を教えたスペンサーにホリーは薬を渡し、以前自分と友人だったスペンサーの母親に連絡を入れるように話す。

ベンは、クレイトンにもう一度麻薬を運ぶよう言われ、お腹の周りにテープで巻いた大金を指定された場所へ届ける。一方、ホリーは質屋近くの中毒者たちがたむろする場所を歩き、ベンを探していた。

取引で受け取った麻薬を事務所に届けたベンに、クレイトンは包を1つ差し出す。ベンは犬を返してくれと言いながら、麻薬の入った包をじっと見入る。夜が明け、ニールに電話したホリーは、ベンを見つけられないと泣き崩れた。

ポンスを膝に抱いたベンは、廃墟になっている、町外れの納屋まで運転して来る。ホリーのネックレスをルームミラーに掛け、ポンスを見つけたら電話して欲しいとホリーの携帯番号もメモに書き、外から見えるよう車のダッシュボードに置いた。

生きて欲しい

ニールに電話し帰宅すると伝えたホリーは、諦めきれず引き返して警察署へ来る。息子を探してくれと泣きながら訴え、逮捕しても良いから探してくれと泣き叫ぶ。そこへ車の中で鳴くポンスとベンが書いたメモを見た通行人から連絡が入る。

急いで駆け付けたホリーは、待っていてくれた通行人の男性に会釈する。自分の車の扉を開けると、ポンスが勢いよく納屋へ向かって走って行く。鳴きながらホリーを2階へ誘導するポンス。古びた椅子の上に意識の無いベンが横たわっていた。

唇の色は紫色で、ホリーの呼びかけにも応じない。ホリーは、ベスに言われた通り溶液をシリンダーに差し込みベンの鼻の中に注入し、人工呼吸を開始する。ポンスが側で鳴き続けていた。ベンの口から呼吸が漏れ、意識を取り戻す。

『ベン・イズ・バック』を観た感想

2018年8月、アメリカ疾病予防管理センターは、7万2千人のアメリカ人が2017年度に麻薬の物剰摂取で死亡した事を発表。殺人事件が非常に多いアメリカですが、事件の犠牲になって死亡した人数を超えて死因の最上位になり、国内で大きな議論になっています。

本作でも扱われた合成オピオイド薬、フェンタニルは癌治療の鎮痛剤として使われて来ましたが、強い中毒症状を引き起こします。病気治療で処方された患者が服用し結果的にオピオイド中毒になる事が分かっていますが、現在でも利用されています。

蔓延する麻薬問題に加え国内の薬物治療でも中毒患者が急増し、麻薬に関する映画に昨今関心が集まります。『君の名前で僕を呼んで』に出演し人気俳優の仲間入りをしたティモシー・シャラメ主演の『ビューティフル・ボーイ』も同問題を扱っています。

本作の監督を務めたピーター・ヘッジスは脚本も執筆しており、友人や親戚に麻薬の過剰摂取で亡くなった人が居る事から映画を製作しようと決めました。複数年リサーチに時間をかけ、医者の処方でオピオイド中毒に陥る現状に警鐘を鳴らしています。

息子のルーカスは当初出演に意欲的ではありませんでしたが、ジュリア・ロバーツの説得でベンを演じる事を決めました。現場では、ロバーツとルーカスの息が合い2人に自由な演技をさせた事で、大変満足のいく映像を撮れたと監督は語ります。

ロバーツの提案で撮影はニューヨーク州となり、監督はクリスマスの季節が寒くなる事にこだわり同州北部をロケ地に決定。家族で集う特別な休暇だからこそホリーはベンを滞在させるが、他の日であれば施設に戻すからだと舞台設定の説明をしています。

本作は24時間で完結しますが、大きな出来事が起きた時その1日は一生忘れない強い記憶を残す事から、短い時間設定でベンとホリーが歩んできたそれまでの日々も反映し家族の物語を作ったとヘッジスはインタビューで答えています。

また、エンディングについて、ベンは死んだ方が彼のためだと言う声があがったそうです。麻薬中毒を克服する事は非常に困難で、薬物を断ってから数年後でも揺り戻しが起きる事が知られており、本人だけでは無く周りの家族にも苦境を強いるためです。

ヘッジスは、最後呼吸をしているという終わりにしたのは、それが希望だからだと説明。母親のホリーがあと1日息子を生かす事に成功したという意味を持つが、ベンがこの先生き続けられるのかは誰にも分からないとヘッジスは話します。

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