米林宏昌監督が監督として手がけた初めての作品でスタジオジブリ制作作品です。自らの種族を「借りぐらし」と呼ぶ小人の少女・アリエッティと心臓を病んでいる人間の少年・翔との掟破りの交流を軸に”現代版ガリバー旅行記”とも言うべき世界観が描かれています。ここではそんな「借りぐらしのアリエッティ」のあらすじネタバレを紹介します。
Contents
「借りぐらしのアリエッティ」の作品情報
タイトル:借りぐらしのアリエッティ
監督:米林宏昌
脚本:宮崎駿/丹羽圭子
原作:「床下の小人立ち」
製作:鈴木敏夫
公開:2010年7月17日(日本) 2011年7月29日(イギリス) 2012年2月17日(アメリカ)
声の出演:志田未来/神木隆之介/大竹しのぶ/竹下景子/藤原竜也/三浦友和/樹木希林 など
作品情報の感想
「借りぐらしのアリエッティ」は元々、宮崎駿監督と高畑勲監督が約40年前に企画したもので、2008年夏、宮崎駿監督によって再び企画された作品です。米林宏昌監督を監督として起用する提案をしたのは鈴木敏夫氏で、米林宏昌監督はその期待に十分に応えたと言えます。この作品の舞台のモデルとなったのは青森県平川市の盛美園です。
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「借りぐらしのアリエッティ」のキャスト
登場人物の翔の声は神木隆之介さんが担当していますが、翔は元々神木隆之介さんに依頼することを予定していたことから、キャラクターデザインの段階から神木隆之介さんは翔のモデルとなっています。また、その他に志田未来さん、大竹しのぶさん、竹下景子さん、藤原竜也さん、三浦友和さんらそうそうたるメンバーが出演しています。そして、なんと言っても樹木希林さんがよい味を出していて秀逸です。
「借りぐらしのアリエッティ」のあらすじとネタバレ
生まれつき心臓が弱く、手術を一週間後に控えている少年・翔(声:神木隆之介)のナレーションで映画は幕を開ける。
翔は療養のために母の育った大叔母の牧 貞子(声:竹下景子)の屋敷にやってきた。屋敷にやってくるなり、翔は、屋敷の庭で何かを見つけて警戒している猫のニーヤを見つける。
アリエッティ
と、カラスが翔を掠めて飛んで、ニーヤに襲いかかるのである。ニーヤも負けじと反撃する。ニーヤが何を警戒していたのか気になった翔は、ニーヤが警戒していた紫蘇のそばまできて、そこに小人がいるのを見つけてしまうのだ。
翔は貞子が呼ぶので小人を深追いせずに貞子の元へと行ってしまう。一方、翔が見つけた小人の少女はニーヤに追いかけられるが、追いかけ慣れているのか、ニーヤから難なく逃れ床下に逃げ込むのであった。
小人の少女の名前はアリエッティ(声:志田未来)。アリエッティは母親のホミリー(声:大竹しのぶ)にまた外に行ってと、怒られるのである。
アリエッティが外に行っていたのは、母親の誕生日プレゼントにローリエと紫蘇の葉を贈るために、それを採りに行っていたのであった。
と、そこに父親のポッド(声:三浦友和)が帰ってきて、人間の子どもが増えた、と言うのであった。アリエッティはその子見た、と言い、そして、慌てて見られていない、とホミリーに言うのである。
アリエッティは今日はポッドと一緒に初めて「借り」に行く日だったが、ホミリーは屋敷に人間が増えたのでアリエッティが「借り」に行くのを反対するのであった。
ポッドは自分たちに何かあったなら、アリエッティは一人で生きなければならないことを慮って、ポッドはアリエッティに「借り」に行くことを許すのである。
一方、翔は屋敷の二階の部屋にいた。貞子が何かあったらハルさんに頼みなさい、と翔に言い、後は家政婦のハル(声:樹木希林)に任せて貞子は退室するのであった。
「借り」
「借り」とは人間の暮らしで使用しているものを「借りてくる」ことなのだ。小人にとって人間の屋敷はさながら懸崖のようであり、ポッドのロッククライミングなどの腕前はさすがで、アリエッティも感心しきりなのであった。
「借り」の最初の獲物は角砂糖。ポッドは手際よく角砂糖を確保すると、アリエッティは巧みな綱捌きで棚から降りてポッドが確保した角砂糖を受け取る。
次はティッシュの確保だ。と、ティッシュが置いてあるところへ向かう途中でアリエッティがまち針が落ちているのを見つける。
ポッドがお前の最初の獲物だ、とアリエッティに言ってアリエッティはまち針を剣のように服に刺して持ち歩くのだ。
そして、人間が人形のために作ったドールハウスに行き着くのである。その素晴らしい出来映えのドールハウスに見とれるアリエッティ。
しかし、ポッドはドールハウスから「借り」をすると人間に気付かれてしまうからと言ってアリエッティに手を出さないように注意する。
翔に見つかる
いよいよティッシュを取り出そうと、ポッドとアリエッティは力を合わせてティッシュを一枚引き抜こうとしたときにアリエッティは翔と目が合ってしまうのであった。
アリエッティはしずしずとティッシュに身を隠し、ポッドと共にその場から離れ、バッグを背負って帰路につこうとしたときに、バッグから角砂糖が落ちてしまうのであった。
すると、ベッドに横になっている翔が昼間君を見たよ、と言ってアリエッティに話しかけるのだ。
手ぶらで帰ってきたポッドとアリエッティ。しかし、翌日、床下の通風孔に角砂糖と翔の言付けが書かれた紙が置かれてあったのである。それを聞いたホミリーは人間が捕まえる気よ、と言って、引っ越さなければならないと動揺を隠せないのだ。
アリエッティは角砂糖を携えて翔の部屋へと向かい、その蟻に囓られた角砂糖を翔がベッドで横になっている部屋へと投げ込んだのだ。
それに気付いた翔は、君が来るのを待っていたんだ、と言い、アリエッティに姿を見せてよと頼むのだが、アリエッティはそれを拒み、翔にもう関わらないで、と言うと、突然、カラスがアリエッティ目掛けて飛んできて翔の部屋の網戸に突っ込んだのであった。
翔は必死になってアリエッティを助けようとカラスを追い払いながら、アリエッティを優しく左手でつかみ包み込んだのだ。
そこへハルがやってきて、スリッパでカラスの頭をひっぱたき、カラスを網戸から引き剥がして追っ払うのであった。
アリエッティは隙を突いてその場から逃れ、家に帰ろうとした途中に父親のポッドに出会い、家族を危険に晒しているんだぞ、とポッドはアリエッティをいさめるのだ。
家に帰ったポッドは引っ越しを考えなければならないかもしれない、とホミリーに言う。そして、屋敷に宅配便の配達員が尋ねてくる。その応対に出たハルは、配達員に缶コーヒーを渡しながら、この辺にねずみ取り業者はないかと配達員に尋ねたのだ。
配達員は携帯電話で調べて、ハルにねずみ取り業者の連絡先を教えるのであった。
ドールハウス
その夜、貞子は翔とハルとで食事を取りながら、昼間にカラスが出たことが話題になったのである。話題は翔の部屋にあるドールハウスに移り、それを見に貞子と翔とハルはドールハウスを見に行くのである。
このドールハウスは翔の曾祖父がわざわざイギリスで作らせたもので、それはドールハウスと言いながら、小人のために作られたものだ、と貞子が言うのであった。
ドールハウスは本物の家具職人に作らせたもので、なんと言ってもキッチンが見事な出来映えなのである。
翌日、床下の通風孔には翔の言付けが書かれた紙と花が一輪置かれて、翔は庭で横になっている。それを不審の目でハルが見ているのだ。
すると、夕立がきて、ポッドが足を痛めて蓑をまとって赤い弓矢を持ったスピラー(声:藤原竜也)に助けられて帰ってきたのである。スピラーを見てアリエッティは「(借りぐらしは)私たちだけじゃない」と喜ぶのであった。
アリエッティはポッドの足の具合を診に行った時に、私たち引っ越すの、と聞き、ポッドが人間に見られたから引っ越すと言っている時、突然、居間の屋根が取り外され、あのドールハウスのキッチンが置かれ、屋根が閉じられたのだ。
やっとのことで居間への扉を開けて居間に入ったポッドとアリエッティはその惨状に愕然とし、ホミリーを気遣うのであった。
引っ越しを決意
こうなった以上、アリエッティたちは引っ越し作業を急ぐのである。その合間を縫ってアリエッティは庭で横になってニーヤを腹の上に置いて撫でながら本を読んでいる翔のところに行ったのである。
そして、翔に対して怒りを隠さずにお別れを言うのだ。しかし、翔はやっときてくれたね、台所気に入ってくれた、とアリエッティに言い、ずっとアリエッティがくるのを待っていたのだ。
アリエッティはお別れにきたの、あなたのせいで家は滅茶苦茶よ、でもいいの、と言うのだ。翔がアリエッティに姿を見ていい、と言ってアリエッティを見た翔は綺麗だね、と言い、アリエッティに見とれるのだ。
しかし、アリエッティは引っ越すの、と言い、借りぐらしは人間に見つかっちゃいけないの、と言葉を続けるのである。
翔は「借りぐらし?」と言い、アリエッティが借りぐらしの生き方を説明するのであった。それに対して翔は借りぐらしは滅び行く種族と言い、アリエッティの怒りを買うのであった。
翔はたくさんの美しい種族たちは地球の環境に対応できずに滅んでいった、と言い、借りぐらしも滅びるのが運命なんだ、と語るのであった。
それに対してアリエッティはそんなことはない、なんとしても生き抜くんだ、と翔に対して反論し、生きることの大切さを説くのだ。
それを聞いた翔はアリエッティの言うとおりと、前言を翻し、死ぬのは僕の方、と心臓を病んでいることをアリエッティに打ち明けるのであった。
と、その時、アリエッティにはホミリーの叫び声が聞こえたのだ。この時、ホミリーの身にはとんでもないことが起こっていたのである。
ハルに見つかる
床に釘抜きが落ちていたのを見つけたハルが押し入れにしまおうと押し入れの戸を開けると、押し入れの荷物が転がり落ちてきたのだ。
ハルは床に取っ手があるのを発見。その取っ手を掴んで床を開ける。そこにあるアリエッティ一家の屋根をハルがどけてみるとホミリーが恐怖で震えていたのであった。
ハルはホミリーを捕まえると台所の戸棚にある空の瓶にホミリーを閉じ込めて、ホミリーを入れた瓶を戸棚に隠し置くのであった。
家に戻ったアリエッティはホミリーがいないので心配になる。天井を見ると歪んでいたのだ。人間に捕まったと思ったアリエッティは迷わず翔の部屋へと向かう。
翔の部屋へと登ったアリエッティは翔を呼び、翔は窓を開けると、アリエッティが立っていたのである。
翔の顔を見た途端、アリエッティは「お母さんがいないの」と泣き出すのだ。翔は一緒に探そうと、アリエッティを肩に乗せてホミリーを探しに行くのであった。
しかし、ハルが翔が部屋に入った時に、翔に気取られないように翔の部屋に外から鍵をかけていたのだ。
翔は、隣の部屋から出ようと、隣の部屋の窓のところに着くと、窓を開けようとするが開かない。
アリエッティが翔の肩から降りて窓の板で塞いであるところにある隙間から部屋に中に入り、カーテンを巧みに登って、翔を感嘆させ、窓の鍵を開けるのであった。
翔はねずみ取り業者に電話をしていて屋敷への道順の説明に戸惑っているハルに気付かれないように、まず、押し入れの床下にあるアリエッティの家へと向かう。
翔はドールハウスのキッチンを取り出して、庭の植木の中に隠すのであった。そして、翔は勝手口へと駆け出すのだ。
翔は抽出や食器棚の扉を開けてホミリーを探し、アリエッティを食器棚に降ろすのであった。と、その時、ハルが台所にやってくる。
翔はアリエッティを隠しながら、指でアリエッティに台所の奥を指さし、そっちを探すようにと合図を送るのであった。
アリエッティは瓶棚でホミリーを見つけ、ホミリーを瓶から助け出すのだ。と、その時に呼び鈴が鳴り、ねずみ取りの業者がやってきたのである。
アリエッティとホミリーは抱き合って喜び、それを翔が見ていたのであった。そこへ外出していた貞子が帰ってくる。
ハルが泥棒小人を見たと貞子にまくし立てるのだ。そして、貞子をホミリーを捕まえた押し入れへと貞子を連れて行くが、そこにはドールハウスのキッチンはなく、既にもぬけの殻。
一方で翔はドールハウスのキッチンを元の場所へと置くとベッドで横になり、本を読んでいるところにハルと貞子がやってくる。
ハルはキッチンがないものとドールハウスを開けるとないはずのキッチンがあったのだ。ハルはキーっと翔を睨んでしかめっ面をするのであった。
小人は存在する
そして、ハルはホミリーを入れた瓶を取りに台所へと向かう。と、貞子がハーブの良い香りがするのに気が付くのだ。ドールハウスからポットを取り出してその中を見るとローリエの葉の切れ端があり、本当に小人がいる、と喜ぶのであった。
貞子は翔にあなたも小人を見たのね、と言い、翔はうなずく。そして、翔は泥棒小人ではなく借りぐらしだ、と言う。一方、ハルは瓶がもぬけの殻になっているのを見て愕然とするのだ。
その夜、アリエッティ一家は引っ越しをしていて森の中を歩いていたのである。覆いがあるところで一休みするアリエッティ一家。
アリエッティは外に出てくると言って、石の上に座っていると目を光らせた何ものかが木陰からやってくるのに気付き、まち針を手にアリエッティは身構えるが、それがニーヤだと分かると、ほっとし、ニーヤに寄ってゆくのであった。
ニーヤはその場から立ち去る。そして、ニーヤはちょうど目が覚めて外に出てきた翔のところにやってきて、翔を誘うのだ。
翔はまたも心臓のことも忘れて走り出すのであった。アリエッティ一家は森を抜けスピラーがやかんの船で待っている小川に到着したのである。
なおも駆ける翔。小川の辺にやってきた翔はアリエッティを呼ぶのであった。やかんの船が出発しようとする時、翔の呼び声を聞いたアリエッティは翔のもとへと。
別れ
竹柵のところにいた翔。アリエッティは翔の目の前に立つ。アリエッティは翔に助けてくれてありがとう、と言い、涙を流すのであった。
翔はアリエッティに生きる力をもらったとお礼を言い、角砂糖を渡し、アリエッティは髪ばさみを外し、翔にそれを渡して立ち去るのであった。そして、翔はアリエッティは僕の心臓の一部だ、と言うのであった。やがて、朝日が昇る。
やかんの船は出発した。スピラーが漕ぎ手だ。途中、スピラーはやかんの外に出てきたアリエッティに野イチゴを渡し、それをほおばるのであった。
と、そこに魚がやかんの下を泳ぐのを見ては前方をしかと見るのだ。そして、やかんの船は立ち去ってゆき、映画は終わる。
「借りぐらしのアリエッティ」の感想とまとめ
「借りぐらしのアリエッティ」はなんとも不思議な感覚にさせる映画です。まるでそれは現代版の「ガリバー旅行記」とも言えるもので、その緻密な描写によってとてもリアリティがあるのです。
自らを借りぐらしと名乗る小人の少女のアリエッティは、活発な少女で冒険心があり、また、なんにでも興味津々ななんとも可愛らしいのです。
小人の大きさを表すのに水滴の大きさが絶妙に用いられています。例えばアリエッティの家の水道から出る水は、必ず玉となり、ポトリと落ちるのです。
それは、難しい言葉で言えば、水の表面張力である小ささでは水は必ず球体となり、スムーズには流れないものなのです。
そんな細部にまでこだわったこの作品は、しかし、アリエッティと翔の交流が主題となっています。
その交流を生き生きと描き出すために、米林宏昌監督はその他の描写をとことん考え抜いて細部に非常なこだわりを持って細密に描いたのだと思います。
米林宏昌監督が描き出した世界観が細部に非常にこだわっているので、この作品は妙にリアリティがあり、観ていて不思議な感覚になるのです。
アリエッティの視界と翔の視界はおのずと違いますが、それが見事に描き分けられています。だから、不思議な感覚に捕らわれるのです。
ある時は、翔はまるで巨人の如く描かれ、観る者を小人の世界にいざなうのです。それはまるで自分が小人になったかのような感覚なのです。
この見事な描き分けによって、この作品の世界は脈動を始めるのです。この描き分けが徹底しているからこその味わいなのです。
そして、なんと言ってもこの作品で印象に残るのは、翔がアリエッティに対して滅びを語っているところです。
心臓を病んでいる翔はこれまで何度となく死に囚われたことでしょう。その翔が美しい種族の絶滅を語るくだりは、強烈な印象を残し、脳裏に焼き付くのです。
翔が刹那的になるのは必然のことです。その心情をアリエッティに吐露する箇所こそ、この作品が本当に訴えたかったことなのではないでしょうか。
しかし、その翔の言葉に対してアリエッティは必死に生きることを説き、翔の滅ぶのは「運命」と言うことに対してアリエッティは何世代にもわたって借りぐらしは生き抜いてきて、これからもそうやって生き抜いてゆく、ときっぱりと翔に言うのです。
そして、ラストを飾るアリエッティと翔が互いを思いやってお別れをした後に、朝日が昇るシーンは、未来には希望に満ちていることを象徴していると思わせるのです。
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